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ロシアン・ルーレット?!~意外に大きいカンピロバクター菌のリスク~

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 "リスクの伝道師"山崎です。毎月食の安全・安心に係るリスクコミュニケーション(リスコミ)のあり方を議論しておりますが、ここのところ食品添加物等のリスクが十分安全なレベルにもかかわらず消費者の不安を煽るような記事が目についたため、これらを集中的に採り上げておりました。今月は逆に「消費者市民が本当に回避すべき食の安全に関わるリスクは何か」について解説したいと思います。実際のところ食中毒の健康被害が相当数発生している「食の安全」の問題は「食品の微生物汚染」であり、SFSS主催のフォーラムで本件を採り上げたばかりですので、こちらをご参照ください:

◎食の安全と安心フォーラム15
『食の微生物汚染:リスク低減のポイントを議論する』(2018.7/25)開催速報

 http://www.nposfss.com/cat9/forum15_sokuho.html

 本フォーラムの冒頭にて、東京大学食の安全研究センター長・教授の関崎勉先生より「食品由来感染症:近年の状況」と題して、近年発生している食中毒の患者数が多い原因病原体としてノロウイルス(年間1万人前後)とそれに次いでカンピロバクター菌(年間2千~3千人)があるとの厚生労働省食中毒統計のデータをご紹介いただいた。

 食中毒の原因病原体としては腸管出血性大腸菌(O157など)やサルモネラなどのほうがマスコミ報道で目立つのは、死亡事例が発生することにより重篤度・インパクトが大きいからだが、健康被害の頻度からいうとノロウイルスとカンピロバクターの食中毒リスクはかなり大きいと言えるだろう(とくにカンピロバクターは死亡例の報告がないため、名前すら聞いたことがないという方もいるかもしれない)。

 ほかにも食中毒の原因として毎年報告されているのは、フグやキノコ・山菜・観葉植物などの自然毒のほか、ほとんどが病原微生物(細菌・ウイルス・寄生虫など)であって、食品添加物・残留農薬・遺伝子組換え食品・放射能汚染といった消費者が忌み嫌う「食品ハザード四天王」は影も形もないことがわかる。すなわち、われわれ消費者市民が真剣に回避すべき「食の安全」に係るリスクは確定的実害の起こる食中毒微生物が最優先であり、食品添加物・残留農薬・遺伝子組換え食品・放射能汚染・原料原産地情報などはあくまで「食の安心」の課題であるとの理解が重要だ。

 この食中毒の原因微生物として、今回とくにカンピロバクターを採り上げたのは単に患者数が多いからという理由だけではない。上述の関崎勉先生のご講演の中で、ノロウイルス・腸管出血性大腸菌・サルモネラなどによる食中毒事例において、その原因食品が不明に終わることが多いものの、判明した原因食材が想定外のもの(二次汚染)が多数含まれるのに対して、カンピロバクターでは原因食材が想定内、すなわちほぼ鶏肉に絞られるということは注目に値する。

 言い換えると、ノロウイルス・O157・サルモネラなどはこれらを回避するための食材(容疑者)が絞りにくいのに対して、カンピロバクターは容疑者がほぼ鶏肉とターゲットが明確であるため食中毒予防策がとりやすいということだ。

 またカンピロバクターの原因食品は、鶏肉の加熱調理品というより明確に鶏肉の生食(もしくは不十分な加熱調理品)に絞られることがわかる。すなわち、鶏刺、鶏レバー刺身、鶏ささみユッケ、鶏ささみタタキ、鶏むね肉カルパッチョ、生つくね、焼き鳥などなど、鶏肉の生食もしくは不十分な加熱調理品を回避すれば、年間数千人もの患者が発生しているカンピロバクター食中毒を予防することは可能ということだ。

 しかも、こういった鶏肉の生食メニューを客に提供して食中毒を起こしてしまう外食店の最大の落とし穴は、新鮮な鶏肉を使用して適切な温度管理・食品衛生管理がされていれば、カンピロバクターの汚染は防ぐことができるはずという過信にあるのだ。カンピロバクターは新鮮な鶏肉ほど菌数が多いと言われており、冷蔵もしくは冷凍保存されている限りその菌数が落ちていくため、食中毒リスクは下がっていくとのこと:すなわち、「鶏肉の生食は新鮮なものほど危険!」ということなのだ。

 少し古い情報だが、鶏肉生食の危険性がわかりやすく説明したサイトを以下で参照されたい:

・堺市 「注意!鶏肉の生食による食中毒が増えています!」更新日:2015年9月15日
 http://www.city.sakai.lg.jp/kenko/shokuhineisei/shokuchudokuyobo/torinikunona
 mashokunichuui.html

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