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菅野美穂の写真集を見て中谷彰宏氏が感じた「近い距離感」

【作家の中谷彰宏氏(撮影/田村浩章)】

 1990年代に日本の芸能界を席巻したのが女優のヘアヌードブーム。中でも大きな話題になったのが、今も女優として第一線で活躍する菅野美穂が1997年に発表した『NUDITY』だ。作家の中谷彰宏氏も同作に衝撃を受けた1人だ。中谷氏が語る。

 * * *
 私はヘアヌードのヘアは「黒い余白」だと思っています。キャバクラもパンツ丸見えになると意外に流行らないですね。それよりはスカートのすき間をハンカチで隠され、見えるか見えないかのお店の方が、お客も来るし、喜びがあります。ヘアヌードにあるのはロマンチックなものなんです。裸というと、「モロ見せ」なイメージもありますが、ヌードは高尚な精神性を感じさせます。見えないものを見るのです。

 ヘアヌードは、ヘアの部分だけが大事じゃありません。ヘアが写っていない写真も重要で、ヘアはメインディッシュのふりをした黒い余白の美なのです。

 実際に今、菅野美穂の『NUDITY』を見ても、ヘアなのか影なのかと迷わせる撮り方がいい。リアルに見せたかったら、ギュスターヴ・クールベの絵画『世界の起源』のように股間アップ、性器アップを見ればいいんです。ただ、それでは日本人は満足しません。

 僕自身も、1990年代はヘアヌード写真集をたくさん買いましたよ。それまでもヌードになる芸能人はたくさんいました。しかし、ヘアヌードは売れていない人やピークを過ぎた人というイメージをひっくり返したのです。

 90年代、社会現象になった「ヘアヌード」は、人気が上り坂の女性有名人が脱いでいたから衝撃が大きかった。僕は心では「脱いじゃダメ」って思いながら、発売を知らせる新聞広告を見て予約していました。そして、写真集を開くと「そこまでえげつなくなかったよね」とガッカリするとともに、ホッとしていたんです。

 この写真集はそれまでのアートに重きを置いたヘアヌード写真集と違い、カメラマンと菅野美穂の距離感の近さを嫉妬させるほど生々しく感じさせます。ヘアヌードのこうした写真集は、これが最初かもしれません。

◆日本社会を大人にした

「ヘアヌード」という言葉は、今は死語になりつつあります。なぜ90年代は流行語であったかというと、ヘアヌードは、戦後日本の裸の歴史において、一時代を画するものだったからです。

 西洋絵画における印象派が、当時の絵画のルールを変えたように、ヘアヌードは日本が「アートとはなんだろう?」と考えるきっかけになりました。

 僕ら世代のヌードの歴史を振り返ると、エロ写真からはじまり1970年代のビニ本を経て、『週刊プレイボーイ』のアイドルのグラビア、消しが入った外国の『月刊プレイボーイ』、篠山紀信さんの『激写』をくぐり抜けてきました。今のようになんでもある時代と違って、階段を一歩ずつ登るごとく体験しました。長い歩みの末にヘアヌードにたどり着いたわけです。

 ヘアヌードブームは、日本社会を大人にしたとも思います。童貞の男にとっては、初体験はとても大事です。でも、初体験は、通り過ぎるとほのかな甘い思い出でしかありません。『NUDITY』の菅野美穂さんは、ヘアヌードを知らなかった日本の男に筆下ろしをしてくれた聖なる一人だと思います。そんな思い出とともに『NUDITY』を今も本棚に置いている仲間がいるかと思うと心強いです。

【プロフィール】なかたに・あきひろ/1959年、大阪府生まれ。作家。早稲田大学卒業後、博報堂に入社しCMプランナーとして勤務。独立後は『面接の達人』(ダイヤモンド社)が大ヒット。著書は1000冊以上。中谷塾主宰。

取材・文■松本祐貴

※週刊ポスト2018年8月17・24日号

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