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9.11テロ後のインテリジェンス

Survivalの最新号でナイジェル・インクスター氏が9・11以降の英米のインテリジェンスについて寄稿されています。氏は2006年まで6の副長官を務められた東アジア情勢のスペシャリストで、私の知る限りプロ中のプロの一人です。個人的にもお話しさせていただいたことがありますが、日本にも造詣が深く、我が国のインテリジェンスについて幾つかアドヴァイスをくださったことがあります。

その氏が9・11後の対テロ情報活動について自身の経験を交えながら寄稿された文章はとても興味深いものです。まず5にせよ6にせよ、イギリスの情報機関は9・11テロを「組織犯罪」と捉えており、これを「捜査」することは法執行機関の領域であると考えているようです。これは長年北アイルランドにおける5の対IRA活動が非合法的なものとなってしまい、それに対するIRAのテロが激化していってしまったという苦い経験から、アルカイダに対してはそのような泥沼化を避けたのだと言えます。

しかしテロの被害者であるアメリカの情報機関は9・11をアルカイダによる宣戦布告と捉えており、また実際にアフガンで戦っていますから、テロとの戦いは文字通り「戦争」なのであって、そのためには手段を選ばなくなってきているとのことです。本稿の中でインクスター氏は「アメリカがルールを変えてしまった」と指摘しています。例えばかつてアメリカは大統領令によって暗殺を禁じていたのですが、ビンラディン氏殺害にみられるような工作を実行したり、悪名高い囚人特例引渡を堂々とやっています。これはテロ組織に関連すると見られる人物は迅速に拘束し、彼らを中東諸国に送り込んで、拷問など非合法な尋問によって情報を得るやり方です。その中には全くテロ組織とは関係のない一民間人、しかも飛行機の乗り換えのためたまたまアメリカに立ち寄った外国人までもが、ムスリムという理由だけで拘束され、その後数年にもわたって尋問されたケースが見受けられ、世界的な問題となっています。

欧州諸国は欧州人権条約(ECHR)を批准していますので、情報機関といえど非合法な活動に手を出し難く、アメリカの情報機関との協力には消極的です。これはイギリスの6であっても例外ではありません。インクスター氏はアメリカのやり方について「理解はできるが許容することはできない」と批判的なスタンスのようですが、その一方で非合法的に得られた情報のお蔭で無人機による攻撃活動が可能になった、すなわち米軍の人的損耗を避けることができている点についても言及されています。

9.11テロの衝撃で各国の情報機関はテロとの戦いという大義名分ができたため、その予算を10年間で倍増させることができたのですが、多くの資源が対テロに注ぎ込まれている現状はいかがなものか、また欧米でテロを抑止できてもその代償として何倍もの人命がアフガンやパキスタンで失われている現状にも目を向ける必要があるとのことで、必ずしも現状は手放しで礼賛できません。ただそれでも国家にとってインテリジェンスの機能は必要不可欠なわけですから、インクスター氏もそこは快刀乱麻に論じるというわけにはいかないようです。

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