記事

なぜ私はチアードを作ったのか?

1/2
さて、昨日は経済産業省から法令適用判断が公示された「ポイントベット」の仕組みと、それに伴って我々が立ち上げた国内初のスポーツベット提供の専業会社、株式会社チアードに関するご紹介をしました(未だ読んでない方はそちらを先にどうぞ)。今回は、その背景となった私の考え方をご紹介したいと思います。

株式会社チアードは、代表を務める若山と副島・木曽という2人の取締役、および社員で構成されるベンチャー企業です。若山は長らくTCG(トレーディングカードゲーム)業界とeスポーツ業界に従事、副島はスポーツ(格闘技)とeスポーツ、そして私はギャンブルと、それぞれ異なる専門性と関心分野を持つ人材であり、チアードの設立にあたってはそれぞれ違った「想い」があるもの。以下で描くのはあくまで木曽視点のものであるという前提で読んで頂きたいと思います。

1. 日本のスポーツ産業市場

2020年東京オリンピックの開催を予定している我が国では、現在、スポーツの「産業化」が大きな課題として語られています。その任を請ける組織として文科省の外局として2015年に設立されたスポーツ庁は「スポーツの成長産業化」を大きな目標として掲げており、これまで「運動を通じて心身の成長を即す」という「体育」の文脈で語られることの多かったスポーツを、「産業」として育成することを目指しています。

世界のスポーツ産業はイベント興行はもとより、施設運営、スポーツ放送、スポーツ用具販売などを合わせて約500兆円前後の産業規模を持つといわれています(出所)。

ところが、日本のスポーツ産業の市場規模は5.5兆円(2015年)程度といわれており(出所)、世界最大のスポーツ市場を持つアメリカの50兆円(出所)という産業規模と比べると、日米間にGDPにして3倍程度の差があることを考慮に入れても異常に少ない。政府はこれを2025年までに15.2兆円にまで拡大させることを具体的な数値目標として掲げているわけです(出所)。

2. 日本スポーツ産業の「足枷」

一方で、ギャンブル専門家たる私の目から見ると、日本のスポーツ産業の成長には一つの大きな「足枷」があります。それが、スポーツベッティングの不在です。

ギャンブルそのものの倫理的な是非はこの場の論議としては置いておくとして(それはそれで重要なテーマなのですが)、現実として実は世界で約500兆円市場と言われているスポーツ産業の隣には、それを「賭け」の対象として扱う約300兆円と言われるスポーツベットの市場が存在しており、それが相互作用しながら産業価値の増大を起こしているのが実態です。

我が国でその相互作用をまじまじと体験する事になったのが、2017年に起こったJリーグの放映権騒動。それまで我が国ではJリーグの放映といえば2007年にJリーグの全試合放送を開始したスカパー社であったわけですが、2017年に英国パフォームグループ傘下のDAZN社が全試合の放映権をかっさらって行きました。

DAZN社がJリーグに示した放映権料は契約期間10年の合計で2,100億円。スカパー社がこれまでJリーグに支払ってきた年間放映権料の実に4倍の値付けであったとも言われており、この放映権の高額購買によってJリーグから各クラブチームに分配される分配金等が高騰し、各クラブチームの財政が一気に改善したといわれています(出所)。

そして、この放映権を破格の値段で取得したDAZNこそが、実はスポーツベット関連企業であるわけです。DAZNが所属するパフォームグループは、主にスポーツベットサービスを提供するブックメーカーに対してスポーツ映像の配信を行なうことで成長してきた企業。

パフォームが本拠を置く英国では日本のJリーグのみならず、世界中のあらゆるスポーツ競技がスポーツベットの対象として設定されており、そこに映像配信を行う為、パフォームグループはDAZN社を通じて世界の様々な主要スポーツの放映権を獲得している。その戦略の上にJリーグ放映権獲得が「乗った」ということであります。

逆にいうのならば、スポーツ放送の土台となる部分に「スポーツベット」という要素が加わるだけで、その放映権がそれまでスカパーが支払ってきた価額の4倍の価値に一気に跳ね上がるということ。2017年のDAZN日本進出とJリーグの放映権買収劇こそが、我々日本人が「スポーツベットがスポーツ産業に与える影響」をマジマジと体感し、またその恩恵を間接的に受けることとなった事件であったわけです。

3. スポーツベットの代替サービス

とはいえ日本ではスポーツベットは刑法で禁じられる賭博行為であり、海外で提供されるスポーツベットにネット等を通じて日本から賭けを行なうことも含めて明確に「違法行為」であります。ギャンブルを専門とする私は、皆さん以上にそのハードルの高さとその制度の厳格さを認知しているわけで、だとすればその「代替」となりうるサービスをどの様に「捻り出すか」が私にとっての最大の課題でありました。

ここで少し話は変わりますが、米国のスポーツベット業界の事情をご紹介しようと思います。米国では1992年に成立した連邦法Professional and Amateur Sports Protection Act (PASPA:プロ・アマスポーツ保護法)によって、本法の成立以前にスポーツベットを合法としてきた一部地域を除き、スポーツベットが原則禁止となりました。

それが、今年2018年に連邦最高裁によって「州政府の自治権を侵害」と判断で無効判決がなされることとなったというのが最新の米国のスポーツベット動向であります(参照)。

その結果、米国では既に各州でスポーツベットの合法化の構想が現在進行形で進んでいるわけですが、一方で米国でスポーツベットが禁止されていた1992年から2018年までのおよそ25年の期間にスポーツベットの「代替」となるサービスが急速に発展していました。それが「ファンタジースポーツ」と呼ばれる賞金制ゲームであります。

ファンタジースポーツは、プレイヤー自身が仮想のプロスポーツ球団のGMになり、実在する好きな選手を集めてた一種の「ドリームチーム」を作り、他のプレイヤーの作ったチームと対戦するというゲームです。

プレイヤーが独自に作る球団自体はあくまで架空のチームであるワケですが、そこで集める選手の成績が実際に日々行なわれるスポーツ競技で各選手が獲得した成績に連動しており、仮想と現実のちょうど中間、いわゆる「2.5次元」の世界で競技を戦わせるゲームとなっています。

このゲーム、プレイヤーは5ドルから25ドル程度の参加料を支払い、優勝者には最大で100万ドル(約1.1億円)が提供されるなど高額の賞金制ゲームとなっており、アメリカでもそれが賭博であるか否かの論争が長らく続けられてきたのですが、少なくとも米国ではニューヨーク州を含む20弱の州がこれを適法なものと判断し、サービスの提供が行われてきたわけです。

そして、このファンタジースポーツこそが、米国においては長らく違法とされたスポーツベットの「代替」となるサービスとして利用されてきたもの。2015年の発表値ではファンタジースポーツの利用者数は約5,600万人、市場規模は関連産業まで含めて2兆8000億円にも及ぶとされています。

ファンタジースポーツの提供企業としてはFanDuel社とDraftKing社が二大巨頭ですが、そのうちの一つであるDraftKings社は2016年に160億円を資金調達し、当時のバリュエーション(企業総価値)はポストマネーで約2,000億円以上。出資者の中には、FOX Sportsのようなスポーツ放送大手局は元より、MLB(メジャーリーグベースボール)やNHL(ナショナルホッケーリーグ)などのスポーツ競技団体自身が含まれるなど、現在、米国の投資界隈では超弩級のユニコーン企業として知られる存在にまで成長しています(参照)。

あわせて読みたい

「ギャンブル」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    昭和の悪習 忘年会が絶滅する日

    かさこ

  2. 2

    「Mr.慶應」性犯罪で6度目の逮捕

    渡邉裕二

  3. 3

    早慶はいずれ「慶應一人勝ち」に

    内藤忍

  4. 4

    医師が語る現状「医療崩壊ない」

    名月論

  5. 5

    再び不倫 宮崎謙介元議員を直撃

    文春オンライン

  6. 6

    感染増の原因はGoToだけではない

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  7. 7

    宗男氏 桜疑惑めぐる報道に苦言

    鈴木宗男

  8. 8

    テレビ劣化させる正義クレーマー

    放送作家の徹夜は2日まで

  9. 9

    案里氏 法廷で昼ドラばりの証言

    文春オンライン

  10. 10

    公務員賞与0.05か月減に国民怒れ

    わたなべ美樹

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。