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林業・材価敗戦論

73回目の敗戦記念日を迎えた夏に、林業界における敗戦論を考えてみた。林業を単純化して経済面だけから描いてみる。

これは思考実験だと思っていただきたい。

現在の日本の林業の衰退は、利益が十分に得られないことにある。いくら木を伐採して売っても、儲からないから林業家は疲弊し、山村の経済は縮小していく。

通常の産業では、利益を出すためにすべきなのはコストを削減して価格を上げることだ。だが、現実には、コスト削減には限界があって、同時に価格を上げることもままならない。だから利益が十分に確保できず衰退している。

実は、これは日本だけではなく世界的な状況だ。木材価格(材価)は、どこの国でも全生産コストと比べると採算割れしている。なにしろ生産に数十年かかるうえ、資源は重くかさばり、地理的条件の悪いところに広く薄く分散している。だからコストは下がらない。

では、なぜ価格を上げられないのか。上げると売れなくなるからだ。

なぜ売れなくなるか。材価が高かったら買わなくても別の代替品に切り換えられるからだ。

まず別の産地の木材である。国内もあれば外国もある。ある意味、ダンピング合戦となった。

買い手市場は、生産量が常に需要を上回っていることで成立する。商品がだぶつくことで買い手に選択する権利が発生するのである。

ということは、現在木材は生産過多、供給過多だと言ってよいだろう。需要以上の木材が生産されて流通に乗ってしまっている。

代替品には、非木材商品もある。木材でなくて鉄骨でもセメントでもガラスでも合成樹脂でもいい。それらに木目を印刷して疑似木材もつくれる。木材が高ければ、非木材で代替が効く世の中になったのだ。このため木材需要が抑えられ買い手市場をつくる。

木材の消費者が求めているのは、どこの木材でもよく、木材でなくてもよい。

言い換えると、木材は産地や材質で求められているのではない。

この状況は近年になって生まれた。ほんの数十年前まで、木材はすべてのマテリアルの王様であり、さまざまな用途で求められ続けられていた。しかも量的には不足気味であり、代替品は希少だった。だから売り手市場だった。

しかし、地球レベルの森林の開発の拡大が行われて、大量の木材が流通するようになった。かつては自給自足に近かった木材需要は、世界市場化が進んだ。加えて無機質マテリアルが木材の代替として普及した。そして売り手と買い手の戦いが始まったのだ。

供給過多と代替商品の登場によって林業はマテリアル市場における経済戦争に破れ、価格決定権を奪われた。売り手市場は買い手市場になった。その結果が、林業の経済的奴隷化、そして材価の敗戦である。

いっそのこと、利益の上げられない商品は販売しなければよい。しかし木材の生産(林業)側は、主導権を握っていない。木材の消費側の求めるままに木材を生産し続けねばならない。そして材価を決めるのは、購入側、消費側なのだ。

木材生産側は木材消費側に(補助金などで)首根っこを押さえられている。つまり木材の売買は、徹底的に買い手市場なのである。 

他産業の奴隷である林業が成長産業になることはない。他産業の下請けとして生きていくしかない。木材の代替品ではなく、木材が他のマテリアルの代替品となっているのだから。

もし復権をめざすのなら、ぎりぎりまで生産を絞って買い手の選択権を狭めることと、「木材でなければならない商品」市場をつくって、その土俵で戦うことだ。需給で決まる材価ではなく、唯一無二のマテリアルとして、売り手市場を再び築くことで、経済の真の主導権を取り返さなくては無理だ。

ただ、主導権を取り戻した林業・木材業界は、縮小したマニアックな世界になるだろう。。。

以上、あくまで林業を経済的要素だけで見た思考実験である。

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