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改革に失敗し、危機を招いた大塚家具

さて、大塚家具の経営に黄色信号が点滅しはじめたようです。売上高が下がり続け、赤字が続き、自慢の無借金経営も資金繰りが怪しくなりはじめ、身売り話も難航しているようです。

大塚家具、決算短信に存続への「疑義」注記 中間決算:朝日新聞デジタル

久美子氏、社長退任を拒否か 大塚家具の身売り交渉難航:朝日新聞デジタル

大塚家具再建はますます難しい状況になってきています。親子対立まで起こし、父と娘で袂を分かったのですが、結果論になりますが、その際に描いた久美子社長の戦略が間違っていたのです。かと言って、先代社長が経営していても同じ危機は早晩やってきたものと思います。

大塚家具の危機を生んだ原因は、新しい構造を創造する能力とやりくり能力のいずれもがうまく発揮できなかったことにあると思います。中途半端な戦略しか描けず、そのもとに改革を進めたのですが、改革で得た新しい顧客よりも、改革で失った顧客のほうが大きかったのです。

いくら「無借金経営」といっても、現状のように、商品が売れず、赤字が続けば、あっという間に資金繰りが怪しくなってきます。
大塚家具の2018年6月(中間期)決算は更なる苦境を浮き彫りに - 銀行員のための教科書

人口減、インテリアにおける価値観の変化、さらにデフレの煽りも受けて縮小しつづけてきた家具市場では、ニトリが典型ですが、縦の統合、つまり企画から販売までを統合したビジネスモデルで、顧客価値(例えばニトリの「お、値段以上。」)を追求する競争が始まっていました。しかし、その価値競争の戦場に焦点をあてた大塚家具の再建計画ではありませんでした。

しかも久美子社長が標榜した「インテリア」領域では、どのようなコーディネートで、どんな夢のある新しいライフスタイルの実現を提供できるかで価値が決まり、それが競争力となるので、魅力ある商品を企画する能力とそれをブランド化する能力が欠かせません。大塚家具にとっても開発力とブランディングは絶対条件だったのです。

しかもそれは旧来の小売業の枠組みでは実現できないことでした。改革と言っても、店舗に入りやすくしたことと、雑貨の品揃えを厚くして商品品揃えの幅を増やしただけでは顧客は新しい魅力を感じません。

企業の経営を評価する際に、戦略創造能力とやりくり能力のマトリックスを参考にしているのですが、大塚家具はわかりやすい事例になりそうです。

いい戦略でやりくり上手なら最高です。悪い戦略でやりくり下手だとすればすぐさま淘汰されます。悪い戦略であっても上手にやりくりできれば企業はたとえ低成長、低利益でも生き延びます。いい戦略であれば、少々経営のやりくりが下手でも、顧客の支持に乗って、波にのることもできます。

そう見ると、先代の社長時代から、厳しさが増してきた家具市場で大塚家具は成長力も競争力も失ってきたのですが、クーデターを起こした久美子社長も、厳しい状況を打開するだけの能力を持っていなかったということでしょうか。その点では、極めて原理原則を貫いた改革案を作成し、現場を統率できる能力をもった元幹部を改革に引き込んだマクドナルドのカサノバ社長の経営手腕との差を感じます。

結論から言って、大塚家具の窮地は、久美子社長が、競争力を失ったビジネスモデルを大きく変えるところまで踏み込めなかったことが招いた失敗ですが、商品が売れない、つまり企業を回すだけの資金が得られない状況まで追い込まれてしまっては、商品ではなく、大塚家具そののもののセールを急いだほうがいいかもしれませんね。

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