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スターウォーズの時代が到来? - 土方細秩子 (ジャーナリスト)

 米国軍隊には5つのカテゴリーがある。陸軍、空軍、海軍、海兵隊、沿岸警備隊だ。このうち最も歴史が新しいのは空軍で設立は1947年。つまり第二次世界大戦中は航空機は主に海軍が所有していたことになる。

 この5つに加え、現在米国が急ピッチで設立を進めている第6の軍隊がある。その名も「スペース・フォース」、つまり宇宙軍だ。8月9日、米ペンス副大統領が設立の計画について初めて公の場で説明を行った。「宇宙空間における米国の安全と権利を守るためにも、スペース・フォースを設立することは必要だ」とした上で、設立に至るまでの4つのプロセスについても語った。

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 プロセスとはまず「スペース・フォースの長となる指揮系統を設立すること」。そのためには現存する5つの軍のトップクラスから中枢部となる指揮官を選抜、軍のドクトリン及び戦闘方法、テクニックなどを明文化することから始まる。その指揮系統の下に今度はスペース・オペレーション・フォースを設立する。これも各軍のエリート将校を集め、実際のスペース・フォースを形成する人的資源を確保する。

 ここまでは軍内部の人事の問題だが、このあとで宇宙開発を行う政府機関を設けることになる。この機関の目的はスペース・フォースが必要とする資材、テクノロジーなどを供給することにある。最後に防衛省副長官の身分でスペース・フォースの統括を行う役職を設立する。これらは政府側の対応となる。

 ではなぜスペース・フォースが必要なのか、という点についてペンス副大統領は「宇宙空間に米国のプレゼンスがある、というだけでは不十分だ。米国は宇宙空間を掌握する必要がある」と主張する。これはもちろんペンス副大統領だけではなくトランプ大統領の意向でもある。

 しかしスペース・フォースの設立には様々な問題点もある。まず予算だが、この件は2019年度予算案に計上されていない。スペース・フォースの設立は今年終わり頃から始める、とされているがその予算はどこから来るのかが不透明なままだ。政権では今後5年間で80億ドルを拠出、スペース・フォースの正式な設立は2020年を目指す、としているが実現可能な青写真なのか、政府内にも疑問の声がある。この予算を下院が承認する必要があるが、中間選挙で民主党に大敗すれば予算通過は不可能となるだろう。

 また5つの軍からペンタゴンとも呼ばれる国防総省は、今後新たな部署を加えてヘキサゴンになるのか、という問題。新たな軍が加われば国防総省そのものの大幅な改編が必要となり、例えば空軍と宇宙軍とをどのように差別化して行くのか、ということも今後協議が必要となる。

 そして現在各国共同で行われている宇宙開発の動きにどのような影響があるのか、という点だが、すでにNASAには影響が現れている。トランプ政権は2025年に現在の宇宙ステーションに対する政府資金の拠出を廃止する、としている。宇宙ステーションそのものが老朽化している、というのが主な理由だが、他国と共同での宇宙開発というコンセプトそのものに米国が反発、今後は自国のみでの宇宙開発や軍事拠点の設立に動く可能性もある。そうなれば現在のように日本人宇宙飛行士がNASAと協力して宇宙で活躍、というのも見られなくなるかもしれない。

ロシア、中国も追随

 何よりも世界的に軍縮が叫ばれる中での新たな軍の設立には、国防省長官である「狂犬」マティス氏でさえ反対している、と言われている。米国がスペース・フォース設立に動けばロシア、中国も追随する可能性が高く、本物のスター・ウォーズが実現してしまう危惧さえある。さらには宇宙空間を少数の国が支配することに反発する国もあり、国際的な問題に発展するかもしれない。

 ジェフ・ベゾス氏のブルー・オリジンが来年から「宇宙旅行」の予約受付を開始する、またテスラのイーロン・マスク氏が火星ロケットの開発を目指す、など宇宙には民間の開発の手も伸びている。スペース・フォースが設立されることでこうした民間の宇宙事業にどのような影響が出るのかも現時点では不透明だ。

 ペンス副大統領は「スペース・フォースの目的は宇宙空間の平和を保つことにあるが、歴史が証明している通り平和は力を通してしか実現できない」と語った。内向きな政策により世界の警察の座を降りようとしている米国が宇宙の警察に名乗りを挙げる、というのは何とも皮肉な動きだ。

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