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Vol.401 橋下市長が指摘した医療費高騰の元凶 ~医療費は削減可能、増税の前に歳出抑制を

※このコラムはグローバルメディア日本ビジネスプレス(JBpress)に掲載されたものを転載したものです。 http://jbpress.ismedia.jp/
武蔵浦和メディカルセンター
ただともひろ胃腸科肛門科
多田智裕
2012年2月13日MRIC by 医療ガバナンス学会発行http://medg.jp
1月6日、政府は「(社会保障の)給付に見合った負担を確保」するために、消費税を「2014年4月より8%へ、2015年10月より10%へ段階的に引上げを行う」という決定を下しました(「社会保障・税一体改革素案について」より)。

しかし、消費税を現状より3~5%増やすだけでは、とても「納得感のある」社会保障にはならないでしょう。素案に記載されているように、「(高齢化に伴い)毎年1兆円規模の社会保障の自然増が不可避」であるならば、「1%=2.5兆円」とされる消費税を今後10年で4%アップさせたとしても、ようやく現状維持にしかなりません。

さらに、破綻の危機が叫ばれている財政の健全化を図ろうとするのであれば、毎年発生している財政赤字50兆円分をカバーするために消費税換算20%のアップが必要です。

ですから、支出の削減についてほとんど触れられていない「社会保障・税一体改革素案」を進めるとなると、消費税が将来的に30%程度にまで上がる可能性が高いということになります。

そんな事態になるよりも先に、歳出そのものの抑制策を真剣に考えるべきなのは、誰が見ても明らかと言えるでしょう。

「全て無料」がモラルハザードの温床

特に医療においては、一律何%カットというハードランディング的な政策以外にも、保険制度の見直しで歳出抑制が可能な方法がいくつか考えられます。

1月13日、大阪市の橋下徹市長は、財政負担が年間1292億円に達する生活保護医療扶助に対して、「意図的な過剰診療などを繰り返す悪質な医療機関を(生活保護指定医療機関から)排除する」という方針を打ち出しました。生活保護者の医療費用は全額公費です。そのため、例えば腹痛を訴える来院者に、9割方異常はないとは分かっていても、血液検査一式、レントゲンは もちろんのこと、入院させた上でCTや胃内視鏡検査・大腸内視鏡検査など、保険の範囲内の全ての検査を行う医療機関が見受けられます。このように一部の医療機関が、生活保護受給者に対して、3割負担の一般の方よりも過剰というか「濃厚な」診療を行っているケースがあるのは確かです。

しかし、これは生活保護医療費問題の表面に過ぎません。裏側にあるもっと大きな問題は、受給者側の過剰受診問題です。自治体が症状などに照らして「過剰受診」だと判断し、通院頻度を抑えるよう受給者に指導しても、改善する受給者は3割程度だったという報告もあります。医療機関には「応召義務」がありますので、正当な理由なしに診察を断ることはできません。生活保護対象者の医療費が後期高齢者の医療費を大幅に上回っているのは、受給者が「無料」の医療機関を最大限まで利用しているからでもあります。 私には、生活保護受給者の医療費を「全て無料」にしていることがモラルハザードの温床であり、医療費高騰の元凶なのではないかと思えてなりません。たとえ少額でも、受給者に医療費の一部を負担してもらう制度も検討されるべきだと思うのです。

医療提供体制の効率化のために「医療アクセスの適正化」を

以上は、医療において考えられる歳出抑制の方法です。

今回の「社会保障・税一体改革」における医療の重点課題としては、「病院勤務医の負担軽減」と「地域における連携体制の強化および在宅医療の充実」が挙げられています。しかし、これらについても「検討する」と抽象的に並べられているだけで、解決策は具体性に欠けます。重点課題を効率的に達成するためには、「まずは近隣の診療所で受診して、必要があれば紹介状を作成してもらって病院で受診する」という「医療アクセスの適正化」を実施するしかないと私は考えています。

つまり、病院に直接行って受診することを可能な限り控えてもらうのです。

そうすることで病院勤務医の負担が軽減されます。さらに、診療所と病院の連携が強化されることによって医療資源が有効活用され、病院の収支も改善します。以前、取り上げた「医療機関(病院)の部門別収支に関する調査」を見てみると、驚くことに病院の外来部門は全科目において赤字であり、トータルで実にマイナス15%の逆ざや状態になっています。

つまり、現在の医療の保険点数のもとでは、病院の入院部門の利益は外来部門の赤字で食いつぶされているのです。ちなみに、人口当たりの医師数が全国最低である埼玉県さいたま市においては、必要に迫られて「医療アクセスの適正化」が事実上実施されていますが、大きな問題にはなっていません。

病院の2科目目以降の専門科医師は「ただ働き」

外来定額負担の導入は見送られてしまいましたが、まだ4月の改正に間に合う修正点が1つあります。それは「病院において複数科目における再診料を認める」改正です。現状では、病院を受診した場合、循環器内科、眼科、泌尿器科など複数科目を同日に受診しても再診料は1科目分しか算定されません。病院の2科目目以降の専門科医師は「ただ働き」なのです。

その上、病院で受診した方が診療所で複数受診するよりも安いのですから病院外来部門に利用者が押し寄せるのは防ぎようがありません。その結果、外来部門はもっと赤字になっていきます。理想的には、生活保護者の医療費は全額無料であるべきでしょう。

そして、全ての検査をすぐにできる病院で自由に直接受診できるべきでしょう。

でもそれは、財源を湯水のように使うことができるのであれば、という条件のもとです。確かに不便を生じるかもしれませんが、「医療資源は有限だから適正に使おう」とみんなの意識が変わるだけでも、多くの医療費が削減可能なはずなのです。

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