- 2018年08月10日 15:24
技能実習生制度の問題点を克服する ~なぜ、失踪、犯罪が起こるのか~
1/2技能実習生制度を巡っては、国際社会の厳しい目が注がれてきた。最も、具体的な指摘をしてきたのは、米国国務省の人身取引報告書だ。2016年まで繰り返されてきた指摘を引用する。
「日本は、強制労働および性的搾取の人身取引の被害者である男女、および性的搾取の人身取引の被害者である児童が送られる国であり、被害者の供給・通過国である。主にアジアから移住労働者は男女ともに、政府の技能実習制度を通じた一部の事案を含め、強制労働の状態に置かれている」
日本人としては、悪しざまに書かれすぎてはいないかと感じる部分もなくはないが、「借金による束縛、暴力または強制送還の脅迫、恐喝、パスポートの取り上げ、その他の精神的な威圧手段を用い、被害者の移動を厳しく制限する」といった具体的な指摘を受けると、否定できないところがある。2017年になって、「人身取引撲滅のための取り組みの強化」を評価する記述が登場するが、「技能実習制度における労働搾取を目的とする人身取引犯罪の可能性」についての言及が依然として存在している。
同種の指摘は、国連人種差別撤廃委員会の最終見解(2014年)や国連自由権規約委員会の最終見解(2014年)などにも見られる。
労働力不足に悩むわが国は、技能実習生と留学生という裏口のルートを使って、年間20万人ペースで外国人労働者を増やしてきた。私自身は、わが国がすでに移民大国となっていること、移民を正面から認めるべきということだということを主張してきた。国際的な指摘を待つまでもなく、もはやごまかしは効かないということを我々政治家が肝に銘じるべきなのだ。
私は、特定技能が定着すると、やがては技能実習生制度そのものが発展的に解消する可能性があると見ている。まずは、特定技能を導入するにあたって、技能実習生制度で指摘されてきた問題点を克服しなければならない。
○失踪と犯罪が発生する理由
ベトナム人の技能実習生を巡って、ここ数年、問題になっているのが失踪と犯罪の増加だ。他の国でも同様の問題が存在しており、実習生が急増したベトナムで顕在化したものだ。
2017年のベトナム人技能実習生の失踪者の数は3751人、刑法犯検挙人員は398人と、共に急増している。昨年は、70人をチャーター便でベトナムに強制送還したとのことだった。ベトナム人の場合、凶悪犯はまれで、万引きなどが多数を占めるため、国民感情が悪化するには至っていないが、すでに現状を放置するのは危険な水域に入っている。逆もまたしかりだ。日本社会に適応できずに失踪や犯罪に走るベトナム人の日本への感情も良いはずがない。
失踪やすらぎ犯罪の原因の一つに借金の問題がある。従来、ベトナムでは、150万円程度の資金がなければ技能実習生になることができなった。親類縁者から金をかき集めるため、より高い給与を求めて失踪する実習生が後を絶たず、犯罪に手を染めるケースも出てくる。遅きに失した感があるが、研修生の借金の問題にベトナム政府が取り組みだした。ベトナム国内で送り出し機関が実習生から徴収することができる費用(研修費、宿泊費など)の上限を4800ドル(60万円ほど)に設定したのだ。