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焦点:ハードブレグジットは起きるか、想定されるシナリオ


[ロンドン/ジュネーブ 7日 ロイター] - 英国が合意なしで欧州連合(EU)を離脱する「ハードブレグジット」が起きる可能性が、じわじわと高まりつつあるように見える。先月、EUのバルニエ首席交渉官が、メイ英首相が示したEUとの新たな通商協定案の根幹部分について受け入れを拒否したからだ。

イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のカーニー総裁は3日、ハードブレグジットの蓋然性が「不快なほど高い」と発言。フォックス英国際貿易相は、合資なしに離脱する確率が6割あるとの見方を明らかにした。

英首相官邸は6日、メイ氏は英国にとって素晴らしい合意を勝ち取る交渉を行うが、ひどい合意よりは合意なしの方がましとの考えに変わりはないとのメッセージを改めて発した。

6日にはポンド/ドルが一時11カ月ぶりの安値を付け、市場参加者はその一因がハードブレグジットの可能性が浮上していることだとみている。

以下にハードブレグジットに関するいくつかの疑問とその回答を記した。

●英国とEUが合意できなかった場合に何が起きるか

英国は世界貿易機関(WTO)加盟国なので、EUとの間の関税その他の通商条件はWTOのルールに基づいて決まる。

EUの関税はかなり低く平均で5%ほどしかない。しかし英国からの重要な輸出品のいくつかにかかる税率はもっと高く、例えば自動車は10%が適用される。

英国の輸出業者は、食品や電子製品などでEUの基準順守を求められるといった別の障壁にも直面する恐れがある。それに伴ってEU域境で輸出品が滞留するかもしれない。

巨大な金融業を筆頭に多くの英国のサービス企業は恐らく、メイ氏の提案が実現した場合よりもEU域内での事業展開に制約が強まる。

WTOのルールでは、英国とEUは他の全てのWTO加盟国にも同様に適用しない限り、相互に低関税や国境チェックの迅速化、サービス分野の緊密な協力などを提示できなくなる。

●ハードブレグジットのマイナス面は

大半のエコノミストは、英国にとってEUとの貿易障壁が高まれば高まるほど、経済への打撃が大きくなると警告する。

英王立経済社会研究所(NIESR)によると、英国がノルウェーなどと同じようにEUとある程度の絆を保ったままで離脱する「ソフトブレグジット」に比べ、ハードブレグジットならば国民1人当たり年間で800ポンド(1030ドル)負担が多くなる。

投資が落ち込んだり、一段の生産性の伸び鈍化、移民減少による労働力不足などによって、経済への悪影響はさらに深刻化しかねない。

●逆にプラス面はあるのか

ブレグジット推進派は、WTOのルールのおかげで英政府がEU以外の急成長する国や地域と独自の通商協定を結べることが、経済発展を後押ししてくれると主張する。

しかしそうした協定締結には何年もかかるし、英国が米国や中国などから有利な条件を引き出すのは難しいのではないか。

ブレグジットを支持するエコノミストのルース・リー氏は、EU域外諸国はオンラインで輸出を申告して手続きをスピードアップしているため、ハードブレグジットで通関作業が滞るという懸念は大げさすぎると述べた。

ハードブレグジットで英国はEUに約390億ポンドの分担金を支払わなくて済み、それを公共投資に回せるメリットがある、というのもブレグジット推進派の意見だ。

●ハードブレグジットは混乱を意味するか

英国のEU離脱期限まであと8カ月足らずとなり、合意に向けた交渉ないし合意なしで離脱する事態への準備のどちらを進めるにも時間が少ない。

混乱のうちにブレグジットを迎え、突然新しい通関ルールが導入されれば、関係当局が対応に苦慮し、通関手続きが遅れるリスクがある。

英政府は、ハードブレグジットに備えて医薬品や血液製剤を備蓄する計画も策定しつつある。

最悪のシナリオでは、英国はEUの下で属していたさまざまな枠組みから放り出されてしまう。例えば米国とEUのオープンスカイ協定が適用されなくなり、運輸業界で上を下への大騒ぎが起きるかもしれない。金融デリバティブ取引は、法的な面で不透明感にさらされる。

英国のEU市民、EU域内の英国民はそれぞれ居住権や他の権利を喪失する危険もある。

JPモルガンのエコノミスト、マルコム・バー氏によると、混乱が想定されるため、EUはある程度合意を得られる見込みが出てくれば、英国との交渉期間延長を申し出るかもしれないという。

同氏は「EUは合意なしのブレグジットが全ての関係者に痛みを与え、対応が非常に困難になると承知している」と指摘した。

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