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大塚家具を正念場に導いた久美子社長の"典型的失敗"二代目社長ぶり

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共同通信社

”よくある二代目、三代目の失敗”を感じる経営

業績不振が続く大塚家具の自主再建に黄色信号が灯り、本格的に身売りの検討に入ったとの報道がありました。6月以降、各方面に支援を打診する中で、既に昨年12月に約6%の出資をしているイベントホール等貸しスペース業のTKPや、ヨドバシカメラをはじめ複数の流通大手の名前なども上がっている模様です。

大塚家具は2015年に、創業者で当時会長だった大塚勝久氏と長女の久美子社長との間で経営権を巡る争いが勃発して、「親子喧嘩」が世間を賑わせました。勝久会長は、会社を長年にわたって成長させてきた高級家具路線を主張。一方の久美子社長は、ニトリやイケアなどの新興勢力への対抗策として大衆化路線を提言します。

双方一歩も引かないまま、争いは経営権を賭けた株主総会での議決権争戦に発展。結果、久美子社長が勝利し退任に追い込まれた勝久会長は、取り巻きの幹部社員を引き連れて高級家具路線を踏襲した匠大塚を立ち上げ、久美子社長率いる大塚家具とは別路線を歩むことになったのです。

この折、囃子たてるメディアの影響もあってか大口株主はこぞって久美子社長を支持する動きを見せ、時代遅れの経営者である勝久会長の退任は至極当然的な言われ方をしていた、という印象が強く残っています。

しかし私個人としてはあの当時から、勝久会長路線が全面的に正しいとは言えないまでも、久美子社長のやり方には世によくある二代目、三代目の失敗に通じるものを感じ、先行きに対する不安を指摘させていただいておりました。

創業者の「成功体験」軽視の落とし穴

久美子社長は一橋大学を卒業後メガバンクに就職、一度大塚家具に入り組織管理体制を構築の後、自ら会社を立ち上げコンサルティング業界に軸足を移します。そして数年の経験を経て、再び同社に社長として戻ります。

銀行業界およびコンサルティング業界を知る立場から申し上げれば、両業界はうっかりすると机上論先行で物事を判断しがちであり、理論と現実との間でギャップを生むことも間々あります。私は当時の「親子喧嘩」での強硬な姿勢を見るつけ、久美子社長にもそんな懸念がありそうだと思ったのです。

懸念を生んだ最たる理由は、創業者である父勝久氏の絶対的な排除を前提とした闘争姿勢にありました。もちろん、先代が実の父親であるからこれを尊ぶ姿勢を忘れてはならない、などと長老的な説教がましい物言いをする気は毛頭ございません。

企業経営において、先人が実の父親であろうとなかろうとそれ自体はまったく問題とすべきものではなく、むしろ血縁的なしがらみを一切排除して会長に正面から持論で戦いを挑んだ久美子社長の姿勢には賞賛すら感じるところでありました。

彼女の問題点は、成功体験を持っている創業者である勝久氏をないがしろにした点にこそあります。創業経営者は生きる社史です。社史というと、緊急性を要さずかつ直接利益を生まないがゆえに、一般的にその編纂業務に携わる者を窓際族扱いする風潮から企業では軽視されがちです。しかし企業経営にとっては、「たかが社史、されど社史」なのです。

少なくともある程度の成功を収めた企業にとって、創業者がいかなる思いから自社の事業を立ち上げたのか、あるいはいかなる幸運や苦難を経て今に至ったのか等々は、何かを新たなことを始める際等の分岐点においては鑑みる必要のある重要な経営資源なのです。一介の社員であるならともかく、先人から経営を引き続く立場の者が社史を軽視するというのは愚かな判断であると言わざるを得ないでしょう。

先に久美子社長のやり方を「よくある二代目、三代目の失敗」と申し上げたのは、まさしくこの社史の軽視にあります。創業者の残した功績が大きければ大きいほど、そのあとを継ぐ者は先代を超えるために、全く違うやり方で新たな方向感を出さねければと思いがちであり、「親子喧嘩」で優勢に立っていたかに見えた久美子社長でしたが、私にはまんまとその落とし穴にはまってしまったように見えました。

その後の久美子社長路線は、絵に描いたような下降線を辿ります。業界で最大級の成功体験を持つ「生きる社史」を追い出して自己のやり方を貫き通したことに、躓きの第一歩があったと言っていいでしょう。

久美子社長にはさらにもう一つ、「よくある二代目、三代目の失敗」があります。高学歴な跡取りが銀行やコンサルティングファームで修行して、自社に移る。そして現場で泥にまみれる経験に乏しいまま、頭でっかちな机上論に走って戦略と称する絵に描いた餅を作り上げてしまうことです。

特にこのパターンに陥りやすいのが、創業者が低学歴の叩き上げであるケースです。高学歴な後継者は、実績では先代に勝てない弱みを学歴で埋め合わせようとするあまり、会社の歴史や現場とはかけ離れた机上論を振りかざしてしまう。創業の勝久氏が定時制高校出身で典型的な叩き上げの創業者という点が、高学歴な久美子社長にとってはさらなる不幸だったのかもしれません。

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