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自滅する国産機関銃 輸入へ切り替え

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それはこれまで経緯を見る限り、すでに導入されているM3あるいはM134、M240Bなどが採用される可能性が高い。ただしM134は駆動に電力が必要なので小型機には向かない。また空自の救難ヘリUH-60J及びその改良型はMINIMIを装備しているが、ドアガンとしては威力や射程が不足であり、諸外国ではあまり例が無い。

これまた7.62ミリ機関銃や12.7ミリ機関銃に換装される可能性があるだろう。海自のヘリ用のドアガンも同様であろう。海自の哨戒ヘリSH-60K、救難ヘリUH-60Jなどは74式機関銃を装備しているが、信頼性が低く実戦的ではない。陸空自が機関銃を更新すればこれらも更新の対象となるだろう。

M240Bは車載機関銃としても導入されている。陸自では水陸両用機動団用に52両のAAV7を導入した内、42輌が40ミリグレネードランチャーMk19と12.7ミリM2を装備したAPC型であり、各5輌の指揮通信型、回収型は7.62ミリM240B機関銃を装備する。

APC型のMk.19は一般輸入DCS(Direct Commercial Sales)で調達されるが、12.7ミリ機関銃は用途廃止になった車輌のものが転用される。サンプル調達されたAAV7のAPC型4両の武装の40ミリグレネードランチャー、Mk19と12.7ミリM2機関銃はMFS(Foreign Military Sales)による調達である。同様にそれぞれ1輌が調達された指揮通信型、回収車型はM240Bが同様にFMSで調達されている。

▲写真 10式戦車の12.7ミリ、7.62ミリ機銃は用途廃止戦車からの転用が多い。 ©清谷信一

陸自では40ミリグレネードランチャーとして96式自動擲弾銃が採用されているが、AAV7では採用されなかった。これは作動不良が多く、現在では殆ど調達されていない。事実上調達は中止されている。また使用弾薬が我が国独自の40x56mmであり、NATO規格の40x53mmと異なるために米軍との相互運用性に欠けるからだろう。96式も今後Mk19で更新される可能性がある。

今後自衛隊で必要とされる74式機関銃とM2機関銃の調達数はかなり減るだろう。そうなれば調達単価も更に高騰することになる。実際に2012年度にM2は113丁で調達単価は531万円だったが、2018年度は660万円となっている。

今後も中期的には調達数の大幅増加は見込めない。その上新型8輪装甲車の開発も中止された。新型8輪装甲車の調達はやり直しということになり、新しい装甲車が選定され、調達が始まるまで最低3年は遅延するのは確実である。その分12.7ミリ機関銃調達は少なくなる。また先述のように岩田陸幕長は後継機関銃の採用を示唆している。

これらの理由から今後12.7ミリ機関銃は、調達数量の激減により、値段が安い輸入品に切り替わる可能性が高い。また74式機関銃も機動戦闘車と10式戦車の同軸機関銃用だけであり、しかも用途廃止された車輌からの転用が続くだろう。このため調達数は極めて少なくなるだろう。故に調達を維持するのであれば単価は高くなる。

▲写真 74式機銃は戦車などの同軸機銃としても使用されている。写真は機動戦闘車。 ©清谷信一

MINIMIは調達数、調達単価以前に別な問題がある。諸外国では小銃弾と同じ5.56ミリ弾を使用する機関銃は普通科(歩兵)の分隊支援火器として採用された。各国ではこれを分隊支援火器として使用しており、別途7.62ミリ機関銃も使用していることが多い。

だが自衛隊では我が国の想定される戦闘において交戦距離が短いために7.62ミリ機関銃は不要である、故に62式機関銃の後継として5.56ミリ弾のMINIMIを採用したと説明している。だがこれは不自然である。世界でそのような軍隊は筆者の知る限り存在しない。

都市国家といってよいシンガポール、同様にオランダやベルギーなど国土の狭い国も含めてだ。しかも数の上では主力APCと言って良い、軽装甲機動車は固有の武装が無く、下車隊員のMINIMIを車載機関銃の代用として使用している。このため陸自機械化部隊の火力は極めて低い。

本当の理由は人員不足に対応するためだろう。7.62ミリ機関銃は通常2~3名の機関銃分隊で運用されるが、MINIMIならば1人で運用が可能であり、機関銃要員を減らせる。つまり組織内部の事情に合わせたものだと思われる。実際自衛隊の2士、1士の充足率は4割にすぎず、士長含めても充足率は7割でしかない陸自だけであれば充足率は更に下がる。

だが7.62ミリNATO弾と5.56ミリNATO弾では射程も貫通力も大きく異なる(陸自の5.56ミリ弾はNATO弾と微妙に仕様が異なっている)。7.62ミリNATO弾と5.56ミリNATO弾では威力の差は約2倍ある。

例えば厚さが15ミリのアルミ装甲の場合、5.56ミリは200メートル程度の距離までしか貫通できないが、7.62ミリ弾は400メートル程度の距離、つまり約2倍の距離でも貫通が可能だ。またPKO活動では現地の軍隊や武装勢力は7.62×39カラシニコフ弾や7.62×54ミリロシアン弾を使用していることが多く、5.56ミリ機関銃では対抗が難しい。

諸外国では5.56ミリ機関銃の運用を見直す軍隊も出てきている。英陸軍ではMINIMIの廃止を検討している。米陸軍も5.56ミリのM249(MINIMI)をより大きな口径のオートマチックライフルに変えるNGSAR(Next Generation Squad Automatic Rifle)プログラムを進めている。陸自ではMINIMIを更新する計画はないが、陸幕や富士学校でも普通科向けの7.62ミリ機関銃の採用を再検討してきている。

先述のようにMINIMIはヘリ用の機関銃としても威力不足であり、今後陸自においても少なくとも7.62ミリ機関銃の導入が検討される可能性は高いだろう。その場合、MINIMIの更新だけではなく、同軸機関銃を共有化した方が兵站負担も軽くなる。

また既に導入されたM240BやM134との弾薬の共有化も可能となり、当然米軍との弾薬の相互運用性も改善される。そうであれば74式機関銃も輸入の7.62ミリ機関銃に切り替える可能性が高い。

現実問題としてここ数年の調達水準では住友重機の機関銃生産ラインと約50名といわれている雇用の維持は不可能だろう。産業として維持できるレベルの発注数は確保できない。また国家財政も逼迫しており、国際価格の7~8倍以上の機関銃の調達を維持することは財務省も問題視している。

既に海自も高い国産機関銃に難色を示しており、2018年度予算では実現はしなかったが、輸入機関銃の採用を検討した。これらのことから機関銃調達が国産から輸入に切り替わる可能性は少なくない。

その場合、全ての機関銃でモデルの変更が行われる可能性も少なくない。有事の際には国内での生産が不可欠だという論もあるが、現在のメーカーの体制では即時の増産は不可能であり、画餅に過ぎない。しかも調達単価が高いこともあり、予備の備蓄が殆どない。むしろ安価な外国製を集中的に調達することによって、相応の戦時備蓄を持つ方が遙かに有事に有用と言えよう。

それから表に示したが、空幕では5年以前の予算の資料を廃棄しており、これは予算執行を検証する時に極めて困難になることを最後に指摘しておきたい。

取材協力:陸上自衛隊幕僚監部広報室
     海上自衛隊幕僚監部広報室
     航空自衛隊幕僚監部広報室

トップ画像:MINIMI on a LAMV ©清谷信一

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