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自滅する国産機関銃 輸入へ切り替え

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清谷信一(軍事ジャーナリスト)

【まとめ】
・機関銃の国内調達は危機的状況。近く輸入への切り替えも。
・高価格、発注数減、性能不足、データ改ざん。国産が絶望的な理由。
・国産より安価な外国製の集中調達による戦時備蓄が有事に有用。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て掲載されないことがあります。その場合は、Japan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=41406でお読みください。】

自衛隊の国内生産による機関銃の調達は危機的な状況を迎えている。近い将来自衛隊の機関銃は国産から輸入に切り替わる可能性が高い。

現在自衛隊では5.56ミリMIMINI、7.62ミリ74式機関銃、12.7ミリM2重機関銃を使用している。MINIMIとM2はベルギーのFN社のライセンス生産品である。MINIMIは7.62ミリ62式機関銃の後継として採用された。74式は国産汎用機関銃である62式を原形とした車載機関銃で、主として戦車などの同軸機関銃やヘリのドアガンとして利用されている。弾薬はNATO弾に準じているが、威力の低い減装弾を使用している。1962年に採用された62式は既に一線部隊から退いている。

▲写真 74式機銃(下段)©清谷信一

▲写真 10式戦車に搭載されている12.7ミリ機銃 ©清谷信一

これらは全て住友重機械工業株式会社(住友重機)が製造を担当しているが、諸外国に比べて概ね6~8倍の高い調達単価となっている。2018年(平成30年)4月6日の財務省の資料によれば、防衛省のMINIMIの調達単価は2017年(平成29年)度で327万円、米国の調達単価46万円の約7.2倍となっている。

因みに輸入しているオーストラリア軍のMINIMIの調達単価は49万円である。だが陸自のMINIMIは古いMK1相当に対して、米軍が採用したM249PIPは銃床の変更やレールマウントの追加などの改良が行われており、実質的な価格の差は8倍以上となるだろう。

問題は価格だけではない。2013年(平成25年)、住友重機が40年以上も防衛省に納めていた機関銃などすべての種類の性能や耐久性などのデータを改ざんし、防衛省が定める発射速度や目標命中率などの基準を満たさないまま納入していたことが判明した。(※住友重機の発表文)

2014年(平成26年)10月21日、防衛省での記者会見で、武田博史報道官は筆者の質問に答える形で、住友重機械工業が製造している機関銃3種類を2014年度は調達せず、2015年度予算においても調達しないと述べた。

防衛省は住友重機に対して指名停止措置5カ月、賠償請求金額247万4916円を請求した。10月23日の記者会見で岩田清文陸幕長はこの既存の機関銃の改修は住友重機が費用を負担して行っていると述べた。またこれらの機関銃の後継や代替案などを検討しているとも述べている。

実際に2014~2015年はこれら機関銃の調達は行われなかった。それだけではなく、それまで15丁程度は調達されていた74式機関銃も以後も調達はまったくない。74式の原形の62式は作動不良が極めて多く、74式も同様で、またベルトリンクの装填が不便であり、部隊では更新を望む声も大きい。

▲写真 62式機銃 ©清谷信一

12.7ミリ機関銃は2016年(平成28年)度も調達がなく、2017年(平成29年)度は海自の5丁だけ、2018年(平成30年)度は海自用が2丁、車載用として28丁、合計30丁が調達されただけだ。2011年(平成23年)までの毎年120丁程度の調達レベルからみると極めて少ない。これでは「小売り」並みだ。

▲作成:清谷信一

2014年(平成26年)以降も車載用機関銃などの調達の必要性はあったが、用途廃止になった74式戦車などから外した機関銃を転用して対処している。因みに2009年(平成21年)度まで装甲車輌の機関銃は車輌に含まれていたが、2010年(平成22年)度からは別途要求となっている。

▲写真 12.7ミリ機銃 ©清谷信一

MINIMIは2016年(平成28年)度から調達が再開されたが、2016年が40丁、2017年(平成29年)が32丁、2018年(平成30年)度が2丁に過ぎない。これまた2009年(平成21年)の459丁から下がり続けていたとはいえ、189丁あった2014年(平成26年)と比べても極端に極めて低い調達レベルとなっている。2016年(平成28年)度以降の調達は概ね330万円で、22年度までの約1.6倍に跳ね上がっている。

▲作成:清谷信一

実は機関銃の輸入は一部始まっている。陸自は機関銃の最大のユーザーだが外国製機関銃、特に航空用機関銃の輸入が増えている。陸自が導入するV-22オスプレイ17機にはFMSで12.7ミリM3重機関銃、7.62ミリM240Bが調達される。また特殊作戦群を輸送する第1ヘリ団の102航空隊(102nd Aviation Unit)のUH-60JA用にディロン社の7.62ミリM134ミニガンを採用している。

陸自ではヘリのドアガンとして主として12.7ミリM2を使用しているが、M2は重量が重く、発射速度は遅く、しかも俯角では弾つまりをおこしやすいので実はヘリのドアガンには向いていない。これは陸自航空隊内部でも問題となっている。このため将来航空用に適した機関銃に換装される可能性が高い。

▲写真 12.7ミリ機銃はドアガンには向いていない ©清谷信一

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