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耐え難き総理の言葉の軽さ〜各省から満遍なく人選した官僚に「縦割りの弊害をなくす」ことを期待する「財務省の操り人形」

「ワンストップできちんと迅速に対応することと、そして役所の壁を乗り越えていく、縦割りの弊害をなくしていくというこういう使命。その器に魂が入るのは、今回集った、約250人の職員の志だというふうに思います」。

東日本大震災から11カ月経過した10日に誕生した復興庁に関して、野田総理は記者会見の冒頭でこう発言した。

いまや「財務省の操り人形」と目されている野田総理が、「縦割りの弊害をなくしていく」ことを新設の復興庁に求めるというのは悪い冗談でしかない。

「ワンストップできちんと迅速に対応すること」を実現するために「私がトップとなり、各省庁より格上の立場という位置付け」にしたと強調しているが、全く説得力のない主張である。少なくとも「私」が日本のトップとなってから、「縦割りの弊害」をなくすためにリーダーシップを発揮する機会はいくらでもあった筈である。もし、「私」がリーダーシップを発揮していたら、復興庁など設立する必要もなかったかもしれないし、もう少し迅速に設立されていたはずである。

さらに、「その器に魂が入るのは、今回集った、約250人の職員の志だ」と発言するに至っては、何をかいわんや。「その器に魂を入れる」のはその器のリーダーの仕事であり、「各省から満遍なく集められた職員」ではない。「その器に魂を入れる」ことを「各省から満遍なく集められた職員の志」に求めるところに、リーダーとしての志の低さと資質のなさが現れている。

「福島の再生なくして日本の再生なし」

野田総理は、10日に記者会見でもこのお気に入りのフレーズを披露した。被災地を思いやるフレーズなので批判の対象にはなり難いが、この表現は正しくない。本来は「日本の再生なくして福島の再生なし」となるべきである。

福島で生産されたものを購入し、福島の人達に雇用の機会を提供し続けるためには、福島以外の経済がしっかりしていることが大前提である。日本全体が、福島の復興に頼らなければならない状況で「福島の再生」など望むべくもない。

福島を始めとした被災地の復興需要による景気浮揚効果など、一時的なものに過ぎない。破壊されてしまったものを元に戻すだけの一時的な経済活動で、日本が成長軌道に乗るのであればこんな楽なことはない。

もし野田内閣が、復興需要が日本の景気浮揚、成長軌道への主役だと考えているのであれば、それは「公共事業による景気浮揚効果」を認めているということである。もしそうならば「日本の再生」のために公共事業という選択肢を排除するのは論理矛盾である。

ある時には公共事業は無駄であると言い、ある時には公共事業が景気浮揚の切り札であるかのような「コウモリ発言」を繰り返す「論理破綻内閣」。野田内閣には「公共事業=悪」という誤った考え方が刷り込まれてしまっており、これが「日本の再生」の足枷にもなっている。

実際は、悪いは公共事業ではなく、公共事業に「シロアリ」がたかることで、公共事業の投資効果が低くなって来ていることである。「シロアリ退治」を訴えていた野田総理。「日本再生」を本気で目指しているのであれば、馬鹿の一つ覚えのように公共事業の規模を減らすのではなく、リーダーシップを発揮して公共工事にたかる「シロアリ」を退治し、公共事業の投資効果を上げることに尽力すべきである。

「シロアリ」を退治せず、投資効果の低さを放置したままでは、いくら公共事業の規模を減らしても、「財政再建」には繋がらない。「シロアリ」がいるから公共事業の規模を減らすという短絡的な判断を繰り返す限り、日本経済は縮小均衡に向かわざるを得ず、結果として「日本再生」も「財政再建」も、「絵に描いた餅」で終わることになる。復興庁に対して「縦割りの弊害をなくし」「先例主義にとらわれずに」使命を果たすことを求めた野田総理。その言葉を自らにも投げ掛けるべきである。

復興庁の体制を「被災地をよく知り、政策の継続性の確保に最大限配慮した、即戦力の陣容」と自画自賛する野田総理。遅きに失した感は否めないものの、被災地復興にとっては、取り敢えずは一歩前進かもしれない。

しかし、日本社会全体は、政治の舵取りを「経済を全く理解せず、政策の継続性や一貫性に全く配慮しない、素人集団」に任せてしまったことで、多くの「国益」を失っており、「日本国民総被災者」状態となっている。こうした状況から脱するために本来必要なのは、「野田総理がリーダーシップを発揮する体制を備えた、被災地のための復興庁」ではなく、「野田総理がリーダーシップを発揮し得ない体制を整えた、日本再生のための復興庁」である。

「魂の入っていない」耳触りの良い語呂合わせを繰り返すのではなく、一日も早く「魂の入った政治」を目指して貰いたいものである。「日本の再生無くして福島の再生なし」。

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