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続・どうでもいいけど。

東京からこだまで戻って三島駅5分停車のあいだにアジ寿司を購入(挨拶)。夕食にしたのですがシャリと魚の身の比率が微妙で個人的にはやや残念感が。

さて引き続き『週刊アスキー』(2012年2月21日号)。巻末に岡田斗司夫氏の「ま、金ならあるし」という、お買い物日記と銘打たれているわりに最近あまりお買い物をしていないような気配の連載があるのだが、今回は「コンピューター将棋と国家運営ソフト」と題して政治・行政・司法の自動化ないしコンピュータ化について書いている。のだが、後半の論旨は賛否あると思い私はまったく賛成しないが検討には値するだろうと思うところ、前半の「クラウドシティ市民"紫陽花"さんの日記でこんなことを知った」という前置きで岡田氏自身が再話している部分の事実誤認が甚だしく、まあこのレベルで何を言うてもねえ感が蔓延する。この部分。

裁判員の仕事は激務だというのを以前何かの本で読みました。午前に何件、午後に何件というようなスケジュールで多忙であり、棋士が1日に何回も対局するようなもので、当然誤審も可能性として多くなります。
  • (1) 裁判員は有権者から事件ごとに選任されるので、「午前に何件、午後に何件」というような事態はあり得ない。裁判員の負担が問題になる事例はあるが、それは特定の事件を担当するところ非常に複雑なので審理に何日間もかかるというような話であり、当然ながら「午前に何件、午後に何件」ではない。
  • (2) 裁判官のことかなあとも思い、たしかに日本の裁判官は負担が重いと一般的に言われているのだが、それは年間に200~300件を処理するというペースである。もちろん判決の言い渡しは曜日を決めてまとめてやったりするので「午前に何件、午後に何件」になることがあるが、それは「棋士が1日に何回も対局する」のとはまったく異なる。
  • (3) というか民事の少額訴訟(訴額60万円以下で、1日で調べられる範囲に証拠提出が限られ、原則として当日中に判決が出るが、被告側が要求すれば正式の裁判に移行する)や略式手続(100万円以下の罰金・科料にあたる場合で、被疑者の異議がない場合に公判を開かずに略式命令を下す)ならともかく、普通に証拠調べする訴訟が「午前に何件、午後に何件」というようなペースで進むわけねえだろという常識的な感覚もないのな。

特にこの(3)のあたりの感覚がないことが全体の論旨に影響しており、つまり「前提条件や事実の検証は人間、その後の計算はコンピュータがやります」というのだが、少額訴訟や略式手続のように事実認定の必要がなかったりごく制約されていたりすれば元から手間はかからないのであって、法律家の手間暇という非常に高価なリソースを使わないといけない事実認定の部分に手が付けられないのに機械化も効率化もあったものではねえのである。というか、認定した事実を入力すると類似した先例の量刑はこのあたりというのを示してくれるデータベースというのはすでに存在して裁判所では使っているという話を聞いたことがあり、であればこの記述全体が画期的でも何でもないよなということで終わりそうなのである。

このあたりの問題は「機械政府」の可能性を論じる後半部分にも共通しており、まず政治を現に存在する民意の集計・集約と考えるならばそこにソフトウェアを活用したり自動化したりする可能性というのは大いにあると思い、たしかにgoogleとかやりそうだよねえとも思うのだが、前提となる政治観自体がそもそも何が問題なのかを提示することによって民意を作り出すというアジェンダ設定機能を見逃しているよなという話がある。典型的には小泉純一郎元総理が遺憾なく発揮したような能力が、「機械政府」として想定されている存在に組み込まれているのかね? ということ。

逆に言うと、個々人の意思とか選択とかを基礎にしてその実現を図るのではなく、全個体の産生している快楽物質の総量を計測してそれが最大化するように統治しましょうとかいうシステムを考えるのなら民意を作り出すアジェンダ設定機能とかも不要であるので政治は現存するデータの集約に還元することができるから、「機械政府」化の可能性は(実現時期はともかくとして)現実的なものとなる。これが昨年11月の日本法哲学会における安藤・大屋間の議論の背景であった。

同様のことは法律の適用の部分にも言うことができて、つまり法解釈でも裁判でもいいがそれが形式化可能な形で現に存在するルールに特定の自体を当てはめることによって結論を論理的に演繹する作業だと考える人間は、法学部で1年もメシを食えばいなくなるわけである(いたとしたら落ちこぼれだ)。法律家自身が「法的三段論法」と言ったりしてその種の誤解が広まるのに手を貸している部分もあるのだが、実際には絶えず新しい意味や理解を提案することを通じて事態の妥当な解決を図る点に、法解釈の特徴はあると言った方がよい(というのが私の助手論文の論旨なのであった)。疑うものは、中古ゲーム販売訴訟最高裁判決が何をどうやったら論理的な演繹操作で出てくるものか、考えてみるとよい。

いずれにせよ、政治家なり法律家なりが実際に何をしているのかということにまったく無知な人々が勝手なことを考えておるなあというのが結論であろうか。まあ「歴史的必然」とかいう言葉を使う類にまともな話はないよと、それだけのことかもしれんし、そもそも岡田斗司夫氏の書くものや『週刊アスキー』に何を期待しているのかという問題もあるのだが。

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