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書評「日本一学生が集まる中小企業の秘密」


日本一学生が集まる中小企業の秘密: 社員20人なのに新卒採用に1万人が殺到 [単行本] 近藤 悦康
徳間書店
2018-06-26

無名の中小企業ながら、新卒採用でそうそうたるグローバル企業と競合して打ち勝つ会社があると聞けば、ほとんどの人は耳を疑うのではないか。本書は、実際にそうやって大手食いを実現した株式会社レガシードのトップが明かした採用指南書である。

ちなみに同社は「みんなの就職活動日記 2019卒 インターン人気企業ランキング」では三菱商事やトヨタといったグローバル企業に交じって堂々の32位である。

中小企業でありながらいかに大企業に新卒採用で打ち勝つか。
実は大手の行う新卒一括採用には致命的な弱点がある。人事が採用時に決めているのは採用人数とおおまかな配属先だけだから、学生個人に具体的な仕事を明示できない。だから学生にも必要なスキルを明示できないし、当然配属約束も出せない。結果的に説明会は退屈でつまらないものになるし、インターンは会議室を使った“一日インターン”になる。

それでも気になる企業を見つけた学生は、次に会社説明会に参加します。ところがその説明会に参加した友人たちに様子を聞くと、ほとんどの説明会は寝てしまうほどつまらないのだと言います。ならななぜ、貴重な時間を費やしてまでそのような説明会に参加するのかと尋ねると、そこに参加しなければ次のステップに進めない、つまり選考テストを受けられないからだと言うのです。
(中略)
そしてさらに私が驚いたのは、次の質問への答えです。
「内定が決まった会社に入社したら、どんな仕事をするんだい?」
「そんなことは入社してみないと分からないよ」
内定を出した企業も、採用活動においてどのような仕事をしてほしいのかということを学生に伝えておらず、入社を決めた学生たちも、
どのような仕事をすることになるのかわかっていないというのです。

一般的に言って、優秀層ほど、入社後の配属先やキャリアパスが提示されない新卒一括採用に強い不満を抱いている。幸か不幸か、普通の就活を経験していなかった著者はその矛盾を見抜き、大手の新卒一括採用とは徹底した逆張りで採用活動を展開したわけだ。

(一日インターンではなく)長期間のインターンシップを採用活動のベースとする、求人広告で母集団は作らない、エントリーシートや筆記、面接は重視しない等、同社の逆張りぶりは徹底しており、しかもちゃんと合理的な理由に基づいている。

中でも筆者が感心したのは「新卒採用は即戦力になる」という部分だ。

ここで大切なのは、採用側は学生が入社した時点でどの職務についてどのレベルまで仕事ができるようになっているかという目標を明確にし、そこから逆算して、必要な知識や経験を入社するまでに持たせるような計画を立てることです。

あらかじめ業務内容を明確化することで、意欲の高い人材は主体的に努力するものだ。「まっさらな状態の22歳を3年間かけてじっくり育てる」式の新卒一括採用と比べると、もう入社日の時点で人材レベルに大きな差がついていることになる。

大手の採用担当者は本書を読むと2重の意味で愕然とするのではないか。
まず、こんな採用を行っている会社が日本に実在するのか、という点だ。自社でやろうものなら、経営も各事業部門も人事部も一体となって配属先を確定した上で、現場体験型のインターンを実施しつつ、配属予定部門の幹部が選考に参加するしかない。それは事実上の人事部門から採用権の移譲を意味するから、人事部長はけしてウンとは言わないだろう。

そして、なにより大手の担当者を愕然とさせるのは、採用できる人材レベルだ。優秀層の中には、積極的にリスクを取り自分で新しい事業を手掛けたいし、ゆくゆくは起業もしてみたいと考える人材が一定数いる。実は、それは大手が喉から手が出るほど欲しがっているグループでもある。

同社はそういうグループに、インターンシップという名のもと、会社がリスクをとって自由に挑戦させつつ、自社に取り込むことに成功しているわけだ。

たとえ自社の内定者が300人いたとしても、その中にそうした進取の気性に富んだ人材が何人含まれるだろうか。「定年まで安泰そうだから来ました」「大手ばかりエントリーして受かったのがここだけでした」そういう人材が9割ではないのか……そうした不安に駆られる人事担当は少なくないのではないか。

大手から中小企業まで、本書はすべての採用担当者が読むべき一冊だろう。くわえて、就活を始めてみたけどいまいち手ごたえを感じられないという学生にも良き指南書となるはずだ。

最後に。それでも「やっぱり入るなら大企業でしょ。なんだかんだで安定してるし」という困った大人向けに、同社の若き内定者の言葉を本書より紹介しておこう。

大企業や有名企業を勧める理由は「安定」だからという理由が大きいと思う。じゃあ、何をもって安定というのか。この時代、いつ、どの会社が潰れるかなんてわからない。じゃあ、会社のフレームで「安定」しているより、個人的人間力や能力を成長させて「安定」しているほうが魅力的じゃないでしょうか。

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