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できる者たちだけに光を当てる世界になってしまった~「ジンケン」の再定義を

■相模原事件や国会での性的弱者差別事件、ソーシャルインパクト評価

いまの人間は、自分の生を「生産性」や「効率化」で測られることに対して、どこかで「仕方ないか」と思っているかもしれない。

その諦めが反転すると、相模原事件や国会での性的弱者差別事件につながる。

また、「ソーシャルインパクト評価」なども、社会問題の中で一定の「結果」を証明するための測定装置だから、たとえば生涯一度も働いてはいない高齢ひきこもりが50才をすぎたあと自分の80才の親を懸命に介護するその姿は、あっさり看過される。

看過というか、社会的には就労していないゼロ集団の一人として測定される。

ソーシャルインパクト評価を取り入れた「ソーシャルインパクトボンド」事業は、イギリスを中心に世界で数百件現実化している。糖尿病支援等の測定しやすいヘルスケアジャンルはさておき、若者の就労支援や貧困支援にまでそのムーブメントは襲来しようとしている。

若者就労支援には「高齢ひきこもり」が含まれる。貧困支援には「虐待サバイバー」が含まれる。

いずれも数十万人存在するマイノリティだが、これらに対する支援を担うNPOたちは、これらマイノリティを捉えきれない。

それは第一に支援スキルの問題もあるが、支援団体がもつ余裕のなさや支援評価のあり方が原因である。

■支援の余裕のなさと評価のあり方

支援の余裕のなさとは、低予算であり、ギリギリの人員の中での問題発見の弱さを示す。

たとえば高齢ひきこもりでは、その生活は案外安定しているため(家庭内暴力や明らかな親子対立は低減し、奇妙な「凪」常態が続く)、日々ギリギリで支援する支援者は「問題ありそうだけど、今日も、ま、いいか」となる。

たとえば虐待サバイバーにおいては、役所に近づかない、あるいは近づいてもすぐに口論/トラブルになってしまう虐待サバイバーは、「めんどくさい」存在として遠ざけられる。よほど偶然の出会いがない限りは、若年ホームレスになってしまう方もいる。

支援評価のあり方とは、就労実習体験や面談の日数、実際の就労期間等、目に見えやすい就労支援の結果を指す。ここには、就労や社会に対する見方がポジティブに変化したかどうかという指標も含まれるかもしれない。

高齢ひきこもりでは、たいていはこうした「数」につながらない。虐待サバイバーにしても、たとえば「子ども食堂」などには近寄らない。それぞれが懸命に生きているだろうが、どうせ言ってもわかってくれないミドルクラス支援機関にいうのあれば、自分を利用していると薄々気づいていても親身にトークしてくれる風俗関係者に心を(少しだけ)開く。

これら、支援の見過ごしや低評価は、全体としてみればそれほどマズイことではない。全体としてみれば、たとえば1,000名のニートの就労面談をして、そのうち100名が3ヶ月程度の長期アルバイトをすればオッケーとなる。

■人権の再定義

マイノリティその人たちが諦めている。

だから僕などは、相模原事件陳述における絶望的差別、国会でのLGBT差別、ソーシャルインパクト評価におけるマイノリティ看過、などは、頭のどこかで「どうしようもない」と諦めていることは事実だ。

とにかく、差別や人権といった基本タームが風化している。

そんな時代になってしまっている。

目の前で差別され、隠蔽化され、差別が恐ろしくて逃げ、そんな中でも日常生活は続き、気が緩むなかで「弱いものが弱いものをさらにたたき」という実態もある。

そんなごちゃごちゃの状況の中で、「できる者たちが生き残れる」世界という価値が徐々に浸透してきているように僕には思われる。できないものをさらに潜在化させ肯定せず、できないものはさらにたたかれる。

そして、できる者たちだけに光を当てる世界。

そんな世界に我々の社会の大部分はなってしまったようだ。

これに抵抗するには、まずは、「人権」という風化した言葉を捨て去ることが重要だと僕は思う。

人権がもつ意味の重要性はそのまま残しつつ、手垢と利権と紋切りに完ぺきに覆われてしまった「人権」を一度捨て、その言葉がもつ「肯定性」にあらためて戻る。

つまり、人権を再定義する必要がある。紋切り的ではない、我々に最も近いものとして。そこから「権利」的表現の堅さもとり、もっと自然体で自由な要素として、産まれたと同時に生命体がもつ当たり前の皮膚のようなものとして。産声の感動を表現する言葉として。

義務との等価交換ではなく、匂いや色や笑い声や泣き顔や伸ばす指先のようなものとして、生命自体がウィ/イエスと頷き笑う所作として、現在ジンケンと呼ばれるその価値はある。再定義というよりは、新しい名がそれには本当に必要だ。

※Yahoo!ニュースからの転載

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