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自民党総裁選挙―安倍氏独走態勢 ―軍事力・改憲を問題視しない野党は自民党との対抗は無理― - 屋山太郎

自民党総裁選挙は安倍晋三氏の独走態勢である。石破茂氏が立候補したとしても、安倍・石破両氏が訴える最大のテーマは憲法だろう。若干の差異があるにせよ、自民党が「改憲」で党員の意志を問うのは史上初めてである。重大目的を掲げて信を問うことこそ、政党の存在意義がある。これまでは各候補者、あるいは派閥が勝手な要求を掲げて立候補していた。選挙人はスローガンに興味がないから人脈によって選んだ。

 安倍氏を3選しようという動機の元は、安倍氏が築いてきた外交・防衛路線が適切であったという評価だろう。安倍外交を延長させ、日本を世界で落ち着きある国にするためには憲法に目を向けなければならないと、国民は考えているのではないか。

 あえて安倍嫌いの朝日新聞の世論調査を見てみる。7月26日付にまとめてあるが、13年12月に特定秘密保護法が成立した時には安倍支持率が7ポイント落ちて46%になったが、14年3月には50%に回復した。14年7月、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した時には6ポイント下がって44%となったが、15年2月には50%に回復している。15年9月、安全保障関連法が成立した時には実に15ポイントも下がって35%となった。その後支持率は54%まで上がる。17年7月にモリ・カケ問題が表面化すると共に、「共謀罪」法が成立した時には都議選で惨敗し支持率は54%(17年1月)から33%に急落した。しかし18年1月には45%にまで回復している。本年4月の財務省文書改竄問題の時には31%まで下がったが、直近では38%まで回復している。

 この世論調査の流れでわかることは、“防衛問題”に絡む法律が成立すると急落し、のちに必ず回復することである。国民の心情は軍事は嫌だが、その法律で外敵を抑止できるなら認めるしかないというものだ。

 安倍氏は国民の用心深い心理を読んで、当初は民主主義国同士が手を結ぶ「価値観外交」を唱えた。次に世界を大きく見るために唱えたのが「地球を俯瞰する外交」である。この間中国が南シナ海の岩礁に軍事基地を造り、「一帯一路」と称してアジア、アフリカ、欧州にまでに経済圏を広げた。

 中国の軍事目的はとりあえず南シナ海の領海化だろう。安倍氏はすかさず日米豪印の4ヵ国の連携を提唱し、「開かれたインド太平洋戦略」と称した。この対中抑止路線を提案できたのは、支持率がドンと下がるのを承知で、防衛がらみの法律を成立させたからだ。

 対中抑止の一点でマクロン仏大統領、メイ英首相とも手を握った。地球を俯瞰する外交が実を結んだのである。

 トランプ米大統領が「貿易戦争を起こした」と言われているが、狙いは中国で「盗みはよくない。盗んだカネは全額返せ」と言っているのである。当然の要求だろう。仮想敵国である中国ばかりが得をする体制をぶち壊しにかかっただけだ。

 日本の野党は4分5裂しているが、軍事力、改憲を合併の中心問題にしない限り、自民党に対抗する党はできないと知るべきだ。
屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。 著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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