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元オウム真理教信者、広瀬健一死刑囚の手記について

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<⑥オウムにおける麻原の地位について>
→「ここで、麻原について説明させていただく必要があるでしょう。麻原は教義上、カルマ*6の浄化に不可欠な存在だったからです。輪廻の原理とカルマの法則*7が支配するオウムの宗教的世界において、麻原は「神=救済者」といえる存在でした。カルマを滅尽した最終解脱者であり、苦界に転生する運命にある私たちのカルマを浄化し、私たちを幸福な世界への転生、ひいては解脱に導くことのできる「神通力」を具有するとされていたからです。〜「なぜあの男が」――麻原が教団において絶対的な存在になったことに対する疑問の声を聞きます。信徒の脳内には宗教的経験によって、「麻原は神である」という認識――感情、あるいはムードといったほうが正確かもしれません――が誘起されていたのです。麻原のいかなる言動を見ようとも、それに対する理性的判断を飛び越えて、ダイレクトに。」

*6:善悪の行為は因果の道理により、のちにその結果を生むという教え。ここでいう善悪は一般の概念ではなく、オウム では自己の都合で教義において善悪の行為を定義しており、通常の社会生活を行うと悪行が積み重なるとされていた。例えば、蚊を殺したり、グルメを楽しんだり、スポーツを楽しんだりすることは悪行とされていた。他方オウム に布施したり、信徒を勧誘することは善行とされていた。

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<⑦麻原がテロを決意したのはいつごろか、について>
→「1988年10月28日、麻原は出家者に対して(以下のような)説法をしました。
『わたしは今から三年前に、これは『トワイライトゾーン』を使って、わたしはアビラケツノミコトであると、そして光の軍勢を率いて救済するんだと、そういう比喩を使っている。当初、初めは、わたしはね、凡夫を救済するのがわたしの役割だろうと考えていた。しかし、近ごろわたしは心が少しずつ変わってきている。どのように変わってきているかというと、ひょっとしたら、動物化した、あるいは餓鬼化した、あるいは地獄化したこの人間社会というものの救済は不可能なのかもしれないなと。そして、じゃあどうしたらいいかというと、新しい種、つまり、今の人間よりも霊性のずっと高い種、これを残すことがわたしの役割なのかもしれないなと。』
ここで、「今の人間よりも霊性の高い種、これを残す」とは、オウムの信徒のみを残し、それ以外の人類を殺害することを意味します。その目的で麻原は、一九九〇年に猛毒のボツリヌス・トキシン*7を世界中に散布することを企図しました。ヴァジラヤーナの救済として。ですからこの説法は、ヴァジラヤーナの救済へと踏み出す麻原の意思を示すと考えていいでしょう。

*7:現在知られている中でもっとも強力な毒素の一つと言われる。麻原が製造を支持したが遠藤誠一が製造に失敗した。

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<⑧教団武装化の計画性について>
→「以上のように1988年の秋頃には、麻原の内面において、ヴァジラヤーナの救済の野望は押さえ難いものになっていたようです。そして、この救済へ向かう意思を示した説法の約三週間後、麻原は側近の大師に対し、後のオウムの動きに関して指示しました。その大師が作成したメモを次に示します。

・1988年11月5日は黙示録の予言を麻原が七つの予言その後世界戦争。2000年まであと一二年しかない。滅亡の日を出版しろと

・(11月)15日、オウムの方向性・・・旧約聖書によるとオウムの時間はあと七年、石油になってハルマゲドン、ソ、米、日世界大戦デザイン編集がプロパガンダマシンに完璧になりきること(人材と経済力のためでもある)

一.新信徒の獲得、

二.人材ハンター(ブレーンハンター)(信徒の中から選ぶ)、

三.大学理数化学の人材をぬきとる、

四.ドクター(医者)を集める、

五.美人を集める(看板)、

六.経済的センスを持っている人間(プロパガンダ=広報)

七.法律専門家

八.大師(一人で二~三億)が5000人

九.建築班1000人

一〇.7年後大師だけで一四五〇〇億」

*意味が通らない部分もあるが原文ママ

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<⑨ボツリヌス菌を通じた全世界テロに関する麻原の指示について>
→(1990年4月10日ごろの麻原の言説)

「現代人が悪業を積んでいるために、地球が三悪趣化し、宇宙の秩序が乱れている。それを我々が正さなければならない。これから上九(上九一色村)で培養するのは、ボツリヌス菌である。この菌が生産するボツリヌス・トキシンは、少量でも吸い込むと呼吸中枢に作用し、呼吸が停止する。そしてサマディーに至り、ポア*8される。

このボツリヌス・トキシンを気球に載せ、世界中に撒く。これは、第二次世界大戦中に日本軍が行った「風船爆弾」の方法である。中世ヨーロッパでペストが流行したときは黒死病といわれたが、今回の病は白死病といわれるだろう。ここで、なぜ我々がやらなければならないのか、疑問が生じるかもしれない。これは本来、神々がやることだが、神々がやると天変地異を使い、残すべき者を残せないから我々がやるんだ。

そして、縁ある者を地球に転生させて、真理の実践をさせる。今回の衆院選は、私のマハーヤーナ*9の救済のテストケースだった。その結果、マハーヤーナでは救済できないことが分かったから、これからはヴァジラヤーナでいく。これは最初から分かっていたことだが、私もだいぶ悩んだんだ。なあ○○、私はちょうど一年前にもこのようなことを言ってたよな。」

*8:オウム 真理教における殺人の隠語。オウム真理教では(オウム の基準での)悪行をなす人物を殺人することによって、その人物の悪行を止めることは(オウム の基準での)善行とされた。
*9:全ての人物をオウム真理教に引き入れて救済を目指すこと。衆院選出馬はこのアプローチによる救済と位置付けられた。


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<10 衆院選惨敗がテロの契機になった点について>
「ヴァジラヤーナの救済を麻原が行動に移した(結果は伴いませんでしたが)契機は、自ら述べているように、衆院選での落選と考えて矛盾はありません。その蹉跌によって麻原は、現代人は救済し難いとの認識をより深め、かかる衆生を救済する手段といわれるヴァジラヤーナへと舵を切ったのでしょう。それが、「マハーヤーナでは救済できないことが分かったから、これからはヴァジラヤーナでいく」という言葉の意味です。本質的には前述のように、ヴァジラヤーナの救済の野望が臨界近くまで達していた麻原に、衆院選での惨敗という刺激が加わったに過ぎないのかもしれませんが。なお、「これは最初から分かっていた」という麻原の言葉については、額面どおり受け取れない部分があります。それはむしろ、落選する結果になる衆院選に出馬したことの正当化でしょう。

まず麻原は衆院選について、落選を最初から承知の上で敢えてテストしたという状況ではなく、当選を目指して真剣に取り組んでいました。たとえば一九八九年一二月から翌年一月頃、麻原は私に電話で、「わしは当選するかどうか心配でしょうがないんだよ」と漏らしたり、「(衆院選に関する報道で、麻原を)泡沫候補とか言っているが、今に見てろよ」と話したりしていたのです。」

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昨日大学生と話す機会があったのですが、地下鉄サリン事件の後に生まれた世代であることもあり、この事件についてみなほとんど知りませんでした。今なお続くオウム真理教が起こした事件の被害者の後遺症の問題も含めて、この問題をどのように語り継ぐべきなのか、私としては明確な答えを持っておらず、非常に考えさせられるものがありました。

では今回はこの辺で。

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