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【読書感想】天才はあきらめた

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天才はあきらめた (朝日文庫)
・作者: 山里亮太
・出版社/メーカー: 朝日新聞出版
・発売日: 2018/07/06
・メディア: 文庫
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内容紹介
「自分は天才にはなれない」。そう悟った日から、地獄のような努力がはじまった。

嫉妬の化け物・南海キャンディーズ山里は、どんなに悔しいことがあっても、それをガソリンにして今日も爆走する。
コンビ不仲という暗黒時代を乗り越え再挑戦したM-1グランプリ。そして単独ライブ。
その舞台でようやく見つけた景色とは――。

2006年に発売された『天才になりたい』を本人が全ページにわたり徹底的に大改稿、新しいエピソードを加筆して、まさかの文庫化!
格好悪いこと、情けないことも全て書いた、芸人の魂の記録。
《解説・オードリー若林正恭》

 南海キャンディーズ、山里亮太さんの著書。
 2006年に上梓された『天才になりたい』という本がベースになっているそうです(僕は未読)。
 2004年のM-1グランプリ準優勝で大ブレイクし、その翌年はM-1決勝で最下位になってしまった南海キャンディーズなのですが、その後、長いソロ活動期間を経て、ふたたびM-1に挑戦します。
 前著の「その後」のことにも多くのページが割かれているので、『天才になりたい』を既読でも、十分読み応えがあると思います。

 僕は南海キャンディーズの不仲説って、ありがちな「ビジネス不仲」なんだろう、と解釈していたのですが、本当にこんなに仲が悪かった(というか、山里さんがしずちゃんに嫉妬し、厳しくあたっていた)ということを知って驚きました。
 いやほんと、この本、山里亮太という「お笑いの超秀才」であり、「独裁者」の黒歴史でもあるんですよ。読んでいて、「これはひどい……」と何度も呟かずにはいられませんでした。

 千葉県出身で、「みんなが認める良い大学に入ったら」という条件で親から大阪行きと芸人になることを許してもらった山里さんは、見事に関西大学に入学し、3回生のときに、吉本総合芸能学院(NSC)の22期生となるのです。

 山里さんは、NSCで最初にコンビを組んだ相方のことを、こう振り返っています。

 僕はクズです。本当にどうしようもない男です。先に言います、ごめんなさいM君。
 これから話すのは思い出話として話すというよりも、捕まった犯人が自供するような感じになると思います……。
 コンビを組んでくれたM君に対してとった僕の行動はまさに暴君だった。コンビというのは対等でなきゃいけないはずなのに、ネタを作っているというだけで相当上から目線になってしまった。僕は、それはそれは無理難題、理不尽極まりないことをM君にし続けた。

 例えば、M君は滑舌が良くなかったのだが、その中でもラ行が弱かった。聞けば、巻き舌ができないということだった。そこで近所の墓場に呼び出し、座っている僕の前立ちながら巻き舌をひたすら練習するというのを半日やらせた。
 なぜ墓場なのかもわからない。M君はひたすらルルルルと言い続けた。もしもここが「北の国から」だったら、キタキツネが数百頭集まるくらいルルルル言わせていた。

「なんでやねん」だけを3時間言わせたときもあった。ほかにも、バイトを休ませてまで、僕が選んだお笑いのビデオを数十本見せ続けたり、故郷の三重から彼女が来た日に急に呼び出してネタ合わせを入れデートをつぶしたり、1日30個のブサイクいじりワードの宿題を課したり、遊びに行ったらその先でのエピソードを必ず10件作ることを要求したり……。まだまだあります。ここらへんで1回挟みます。

 M君本当に申し訳ない。
 続けます。後に出てくる、あるスターコンビと仲良くするなら、何か向こうが不利になる情報を持ってこいと命令する。登場時のお辞儀の仕方が気に入らないと数時間そこだけ練習させる。警察のネタをやるときに、敬礼が違うという難癖をつけて敬礼をずっと練習させる……。

 こんな僕に「お笑いに熱い」なんて最高の誉め言葉をくれていたM君、本当にごめんなさい。僕は自分がすべきなのにできていないことを棚にあげ、それを全てM君に背負わせていた。そして自分もできた気になっていた。
 こんな僕の悪行三昧を経て、相方のM君は精神的に疲れきり、髪も薄くなり、頬はこけ、男前だったのに変わり果てたその容姿から、「死神」と呼ばれるようになっていった。

 お笑いのコンビって、こういうものなのだろうか、少なくとも一方だけがネタを作る場合は、こんな力関係になってしまうのだろうか。これって、パワハラ、モラハラ全開じゃないか……

 僕はこれを読んで、元ハリガネロックのユウキロックさんが書いた『芸人迷子』を思い出していたんですよね。

fujipon.hatenadiary.com

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