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「経済・軍事に膨張を続ける中国」 ―金持ち中国人移民はその国の世論を動かせる― - 屋山太郎

 中国は経済的にも軍事的にも膨張指向を固めている。2025年には一流の経済大国となり、2050年には米国と太平洋を二分できる軍事大国となるという。憲法も習近平主席の独裁を可能にしており、これまでの毛沢東主席以来の共産党政権とは一線を画した体制を示している。周辺国を容赦なく併呑し、言論統制も段違いに厳しくなっている。

 こうした中国に対して日米両国は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を標榜し、インド、オーストラリアはもとより、太平洋に領土を有するフランスのマクロン大統領もイギリスのメイ首相も賛意を表明している。

 弱点はオーストラリアだ。ターンブル首相は「中国がオーストラリアの政治に対してこれまで前例のない、極めて巧妙な工作を行っている」という。同首相の子息は中国共産党の有力者の娘と結婚しており、ターンブル首相にも影響を与えているのではないかと勘ぐられている。その政治風土の中で、昨年12月、野党・労働党のダスティヤリ上院議員が「中国人実業家から政治献金を受けていた」ことを認め、辞職して次回選挙に出馬しない意向を示した。ダスティヤリ議員は南シナ海の問題について中国寄りの発言を続けてきた。同氏は次世代を担う有望政治家と見られていただけに、政界に与えた衝撃は大きかった。

 また外交部の報道官はこれまで「南シナ海問題はオーストラリアの国内問題ではない」と述べてきたことだ。政界が中国の金漬けになっている認識から、ターンブル首相は外国人の献金を禁ずる法律を制定した。

 オーストラリアは毎年16~21万人の移民を受け入れる政策をとってきた。人口は2500万人足らずだが、豪州の経済成長は移民が支えてきたと言っていい。移民受け入れ条件の中には500万豪州ドル(約4億円)以上持参の金持ちという条項があるが、金持ちの殆どは中国人だという。中国人は他国に住んでも中国本国の方針に従うという。金持ちの中国移民が過度に増えるとオーストラリアの政治は親中路線にならざるを得ない。豪公共放送は、約50万人が中国生まれだが「共産党から逃れてきた過去の移民と異なり、本国との結びつきが強い」と報じている。同放送は先に述べたダスティヤリ上院議員が公安情報を中国に洩らしていたことをスッパ抜いて失脚させた。

 米国で日本の慰安婦問題を宣伝戦に使っていたマイク・ホンダ下院議員は中国の反日団体から金を貰っていたとされる。慰安婦狩り出しは朝日新聞の誤報だと選挙民は認めたのだろうか、前回の選挙で落ちた。

 フランス創価学会が長い間当局から公認されなかったことがある。取材に行ったところ、認めない理由として当局が挙げたのは「大金を持っている」という理由だった。大金を使えば世論を動かせるからだという。それを聞いて自由と民主主義は言論の自由によって担保されることを改めて悟った。

 (平成30年7月23日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。 著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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