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本田圭佑の会社で働く社会貢献活動責任者

プロサッカー選手であり、経営者でもある本田圭佑は、サッカーを通した社会貢献にも力を入れる。そんな彼の下で、社会貢献活動の責任者として働くのが本田と同い年の二村(ふたむら)元基さん(31)だ。青年海外協力隊員としてウガンダに赴任し、帰国後は社会福祉法人の職員として働いた経歴を持つ。その素顔とは。(オルタナS編集長=池田 真隆)

本田圭佑のSOLTILO(ソルティーロ)社では国内外の約80カ所でサッカークラブを運営している。昨年末からはアフリカで無償のサッカークリニックを展開

■ルーツは「母子家庭」

愛知県で生まれた二村さんは5歳のときに父親を亡くす。母子家庭として育てられたが、祖父母からの経済的な支援を受けながら私立の4年生大学を卒業した。

高校まではサッカー部で、大学生の時には、プロサッカークラブのカマタマーレ讃岐でインターン生として働いた。大学卒業後は、大手スポーツ用具メーカーに就職。3年ほど過ぎたときに、今後の働き方を考えた。

自己分析の一環で、自分自身のルーツを探ると、「母子家庭」が思い付いたという。日本の母子家庭を調べると、約6割が世帯収入200万円以下で、貧困と隣り合わせの生活を送っていた。貧困の連鎖の根は深く、この問題にアプローチするために、まずはスキルを身に着けることが重要だと考え、海外での「修行」の道を選んだ。

青年海外協力隊員としてウガンダに赴任し、シングルマザーを雇用するプロジェクトを手掛けた。日本では、多くの母子家庭が相対的貧困(*その国の全所得の中間値の半分に満たない状態を指す)で苦しむが、同国では食べ物がなく飢餓などに苦しむ絶対的貧困の状態にあった。

同国では、牛のと殺で牛皮が大量に処分される。その牛革を利用して、シングルマザーが商品化し、収入を得る取り組みを企画した。

SOLTILO海外事業部アフリカ統括マネージャーの二村さん

日本に帰国したのは2年後。その後、DV被害などに遭った母子家庭を支援する社会福祉法人の職員として働いた。現場では、夫からの暴力で心身ともに傷つき、自立に長い時間がかかる母子の姿を見ることもあったという。

保護した母子の生活を継続的に向上させていくには、精神面だけでなく、経済面での支援が必要不可欠だと実感した。「ビジネスの力でエンパワメントしないと根本的には解決できない」とし、社会福祉法人を辞めて、民間の事業会社で取り組むことに決めた。

そうして出合ったのが、本田圭佑のマネジメント会社であるHONDA ESTILO株式会社(ホンダエスティーロ、大阪府吹田市)である。世界に目を向けていることや社会貢献性の強い経営方針に共感したという。転職したのは2017年2月のことだ。

■本田から「どんどん暴れて」

転職した二村さんが最初に手掛けた企画が、アフリカでのチャリティープロジェクトだ。1年を通して、ケニア(6カ月)、ウガンダ(2~2.5カ月)、ルワンダ(2~2.5カ月)に日本人サッカーコーチを2名派遣し、現地のストリートチルドレンなど貧困家庭の子どもを対象にしたトレーニングを無償で実施する。

参加するのはストリートチルドレンや貧困家庭の子どもなので、スパイクを履いていない子どももいる

コーチの滞在期間の土曜日と日曜日に2時間程度のトレーニングを行う。対象は11~13歳で、定員は両日とも50名。この条件で、教える子どもを1カ月ごとに変えながら繰り返す。トレーニングを通して、コーチから才能があると認められた子どもは、SOLTILO社(*2018年4月にHONDA ESTILOから分社)が提携している3カ国(ケニア・ウガンダ・ルワンダ)のアカデミーに無償で入団できる。

昨年末からこのプロジェクトを行い、半年が経過した。年間で1000人の子どもを指導する計画で、これまでに500人以上に教えてきた。ただ、この中からアカデミーへ進んだのはわずか2人だけだ。家庭環境に恵まれていないため、栄養が偏っている子どもも多く、スタート地点からそもそもハンディを背負っているという。

初めてボールを蹴る子どももいる

残りの498人へは継続してサッカーを教えることはしないが、二村さんはサッカー以外のことで支援できないか模索している。

このプロジェクトには、スポンサーとして、じげん社やLIXIL社、サラヤ社など7社付いており、それぞれの企業の職業体験やスキルを提供する機会をつくれないかと考えている。

同社の理念は、「人を信じること。そして信じ合える世界を創ること」。これを実践するためには、サッカー(スポーツ・教育)で世界中に夢や希望を与え感動させ続けることが重要だと二村さんは強調する。

「サッカーが上手くなくても、時間をしっかり守ったり、リーダーシップがあったり、ボール拾いを率先して頑張る子どもなど、一人ひとりに才能がある。各スポンサー企業の強みを生かして、子どもたちの自立支援を行いたい」

青年海外協力隊員としての経験から継続して支援することの意義を体感しており、このプロジェクトは、「最低でも5年間は続けないと意味がない」と言い切る。さらに、ミズノからボールやユニフォームの協賛を得ているが、トレーニング終了後には回収する。

通常、チャリティーではプレゼントすることが多いが、二村さんはその理由をこう話す。「提供しているのは、モノではなくコト(技術指導)。おそらく、プレゼントしても売ってしまうし、モノをあげて喜ぶのは自己満足でしかない」。

当初、このプロジェクトが始まったときにはスポンサーは2社であったが、半年で7社に増えた。今後もスポンサー企業を募集中とのことだ。

本田圭佑もウガンダを訪問し、子どもたちと触れ合った

本田圭佑とは、普段スマートフォンのトークアプリを通して連絡を取り合うことが多い。二村さんがこのプロジェクトを提案したときは、「おれの名前を使えるだけ使ってくれて構わない。どんどん暴れて」と返信が来たという。

本田自身もサッカーを通した社会貢献には積極的で、ことあるごとに「ええやん」と二村さんの背中を押す。

二村さんは、「このプロジェクトでプロサッカー選手を輩出することはあくまで一つの指標に過ぎない。目標は、一人でも多くの子どもが自分の力で人生を切り開いていく世界をつくること」と力を込める。

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