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フェイスブックの革新性と危うさ

プライバシーの壁を下げて情報共有を推し進めることについてザッカーバーグは「確信犯」だ。
米連邦取引委員会との攻防にもそうしたことが見てとれる。

米連邦取引委員会が指摘したフェイスブックの問題点

 フェイスブックは、さすが旬のサイトということか、書いている端から次々と新たな出来事が起こる。

 11月末フェイスブックは、プライバシー侵害をめぐる取り締まり当局との争いについて和解した。米連邦取引委員会(FTC)はフェイスブックの次のような問題点をあげて提訴していたが、フェイスブックは今後の対応について指摘を受け入れた。

 情報共有に積極的なあまり個人情報の保護がなおざりになりがちなフェイスブックのありようはすでに指摘してきたが、政府の委員会によってあらためて列挙されると、問題の根の深さが感じられる。

1 09年12月、フェイスブックはサイトを更新し、利用者がプライベートに設定した友人リストなどの情報を会員誰もが読めるようにした。変更について利用者に警告し事前に許可を得ることをしなかった。

2 インストールしたサード・パーティーのアプリは運営に必要な利用者情報にのみアクセスするとフェイスブックは説明したが、実際は、アプリが必要としないほとんどすべての個人情報にアクセスできた。

3 フェイスブックは、データの共有を「友人のみ」といったぐあいに限定できると説明したが、「友人のみ」としても、友人が使っているサード・パーティーのアプリに情報が渡った。

4 フェイスブックは、アプリのセキュリティーを保証したが、実際は確認していなかった。

5 フェイスブックは広告主と個人情報を共有しないと約束したが、利用者が広告をクリックしたときに共有した。

6 フェイスブックは、利用者がアカウント機能の停止や削除をしたときには、その利用者の写真や動画にアクセスできないようにすると言ったが、停止や削除後もアクセスできた。

7 個人情報保護についてのアメリカとEUの取り決めを守らなかった。

 これは次のようなことだ。
 EUは個人情報保護について自分たちのルールに合致していない国へのデータの送信を禁じている。しかしアメリカとは取り決めを交わし、米企業がEUのルールに従う場合には転送を認めている。しかしフェイスブックは、しかるべき個人情報保護措置をとらなかったので、この取り決めに違反しているというわけだった。

 いずれもばれないではすまないようなことだ。利用者がすぐには気づかないかもしれないが、フェイスブックを頻繁に使っている利用者が何億人もいる現在、誰かは気がつく。利用者が気づかなくても広告主やサード・パーティーのアプリ制作者などは気づくだろう。フェイスブックの個人情報にアクセスできれば利益になるかもしれないが、彼らもまた利用者だ。フェイスブックがいい加減なことをやっていると見てとれば告発する人も出てくる。
 にもかかわらず、フェイスブックはなぜ放置したのか。たとえたんなる「不注意」だったとしても、プライバシーを軽視しているというフェイスブックへの見方を裏書きしてしまった。

 和解の結果、フェイスブックは今後、利用者の個人情報について虚偽の説明をすることが禁じられ、情報共有のルールを変えるときには事前に利用者の承認を得ること、そして、今後20年にわたり、第三者機関によるプライシー保護の定期的チェックを受けることになった。

ザッカーバーグの抗弁

 フェイスブックのCEOザッカーバーグは、和解受け入れを発表したその日、「フェイスブック・コミュニティへのわれわれのコミットメント」と題したブログ記事を公開した。
「人びとは生活しながら共有しつながることを求めているが、そのためには自分たちが誰と共有するかについての完全なコントロールをいつも必要としているという考えのもとにフェイスブックを立ち上げた。この考えが、設立して以来のフェイスブックの核にある」
という言葉でこのブログ記事は始まっている。
  プライバシーを軽視したなどという批判はとんでもないと言わんばかりだ。
  FTCの指摘に対する反省を表すどころか自己正当化しているようで、FTCの指摘が事実であれば、「居直った」と受けとられても仕方がない文章だ。ザッカーバーグはこう続けて書いている。
「私がフェイスブックの最初のバージョンを立ち上げたとき、私の知っているほとんど誰もがネットで公開ページを望んでいなかった。それは恐いことのように思われていた。しかし、自分のページをプライベートにしているかぎり、友だちと安全に情報共有できるように感じた。コントロールがカギだった。人びとはフェイスブックでそのために必要な道具を初めて得た。そうしてフェイスブックは世界最大のオンライン・コミュニティになった」。
 それ以来、写真を共有し、グループを作れるようにし、コメントや「いいね!」ボタンを設置するなどいろいろな機能を加えてきたが、「あなたの情報を誰が見るかについて透明性とコントロール機能を提供する好ましい歴史だった」などと書き、FTCの指摘する「蛮行」などまるでなかったようなのだ。

 しかし、和解を受けて書かれたブログ記事ではあるので、「われわれは誤りを犯してきた」と、個人情報の扱いについて過去においてすでに謝罪していることについてはさすがに誤りを認めている。

 けれどもすぐに、「人びとがわれわれと共有した情報について、フェイスブックはいつも透明性を守ってきた」と繰り返す。フェイスブックが利用者をだましたとまでFTCが言っているにもかかわらず、突然のルール変更で利用者を戸惑わせたり怒らせたりしたことなどなかったかのようだ。

問題の根っこにあるもの

 フェイスブックは最近18か月でも情報をよりコントロールできるようにする20を超える機能を提供したとそれらを列挙し、FTCが指摘したことについても、4番目のセキュリティについてのアプリの保証は2年前にすでにやめているし、利用者のIDナンバーがURLに入ってしまって広告主が個人情報を得てしまう不注意なミスについても昨年5月には解決していると抗弁する。

 けれども前回も指摘したように、問題の根っこは、次のような文章に表れているザッカーバーグの考えそのものにあるように思われる。
「新しいツールを提供するごとに、共有しているものすべてを誰が見るのかを完全にコントロールし続けられるよう、新たなプライバシー・コントロールを付け加えてきた。これらのツールやコントロールのおかげで、数年前に比べて現在とても多くの人びとがより多く共有している」。
 目的は、ますます多くの情報が共有されるようになることにあり、個人情報のコントロール機能はそのための手段だというところに、フェイスブックの革新性と危うさが潜んでいる。

afterword

 ザッカーバーグの信念とフェイスブックのプライバシー問題についてはこれぐらいにして、あと少しだけフェイスブックに関する話題をとりあげて、長くなったフェイスブックの話をとりあえず終わりにしたい。

関連サイト

●フェイスブックの和解受け入れを発表する連邦取引委員会(FTC)のリリース「フェイスブックはプライバシーについての約束を守らず消費者を欺したというFTCの告発を受け入れる」(Facebook Settles FTC Charges That It Deceived Consumers By Failing To Keep Privacy Promises)(http://www.ftc.gov/opa/2011/11/privacysettlement.shtm)。
●FTCとの和解を受けて出されたザッカーバーグのブログ記事「フェイスブック・コミュニティへのわれわれのコミットメント」(Our Commitment to the Facebook Community)(https://blog.facebook.com/blog.php?post=10150378701937131)。

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