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トランプ氏、金正恩氏との「決別宣言書」に遂にサイン

トランプ米大統領は20日、北朝鮮人権法を2022年まで延長する法案に署名し、成立させた。同法は、北朝鮮の残忍な人権侵害を止めさせるためのものだ。北朝鮮は人権問題への干渉を最も嫌っており、今回のトランプ氏の動きは、非核化を巡る米朝対話にも影響を及ぼす可能性がある。

(参考記事:あの話だけはしないで欲しい…金正恩氏、トランプ大統領に懇願か

2004年に時限立法として定められた北朝鮮人権法は、日本人拉致問題の解決を含めた北朝鮮の人権問題が改善しない限り、米国が北朝鮮に対して人道支援以外の援助を禁じるものだ。これまで2008年と2012年に延長され、昨年9月末に期間が満了。今年6月には再延長法案が上下両院で可決され、トランプ氏の署名を待っていた。

同法はまた、人権侵害に関わった北朝鮮の当局者らに対する制裁を維持することや、中国が脱北者を北朝鮮に強制送還するのを即時中止させること、USBメモリーや携帯電話などを利用して北朝鮮に外部情報をもたらす啓発活動への支援を大統領に求めている。

いずれも、金正恩党委員長を強く刺激する内容と言える。米政府は金正恩氏をはじめとする北朝鮮高官らを人権侵害に責任があるとして制裁指定しているが、これを知ったときの金正恩氏の怒りはすさまじかったと言われる。

(参考記事:金正恩氏が「ブチ切れて拳銃乱射」の仰天情報

中国による脱北者の強制送還は、様々な人権侵害を併発しているが、これが中止されたら中朝国境に一種の「自由地帯」が生まれかねず、金正恩氏がナーバスになるのは当然と言えば当然だ。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

外部情報の遮断は、北朝鮮当局が最も力を入れている分野であり、トランプ政権がこれに本気で挑戦したら、間違いなく非核化対話は壊れるだろう。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

つまり今回の法案は、北朝鮮に対する「決別宣言書」にも似た性格を持っているわけだ。

しかし実際のところ、トランプ政権が北朝鮮の人権問題に本気で取り組む可能性は低い。トランプ氏は米朝首脳会談の後、「(人権問題で)悪事を働いてきた国はほかにもある」と語り、北朝鮮の人権侵害を矮小化して見せた。ポンペオ国務長官も最近、対北朝鮮では非核化が最優先であり、人権問題はその後だと言明している。

これはすべて、金正恩氏が核兵器を維持することより、人権問題で米国から干渉を受けないことを重視しているのを、トランプ政権側が知っていることから来ている。

北朝鮮にとって、「完全な非核化」は簡単なことではないだろうが、不可能な課題でもない。金正恩党委員長は北朝鮮において、「全能」に近い独裁者だ。彼が決心すれば、たいていのことは実現できる。

しかし、人権問題は別だ。国民に対する人権侵害を止めるということは、恐怖政治を止めることと同義だ。そんなことをしたら独裁権力が弱まり、「全能」ではなくなってしまう。

だから金正恩氏は、トランプ政権が人権問題に干渉してこない限り、「完全な非核化」に向けた取り組みを続けるだろう。つまり、トランプ氏が人権問題での取り組みを「ポーズ」に止めれば、対話は続くのだ。

トランプ氏は、昨年9月の国連総会演説で北朝鮮を「邪悪な体制」と呼び、同11月の韓国国会での演説でも北朝鮮では約10万人が強制収容所に拘束され、拷問などの虐待を受けていると糾弾した。今年2月にホワイトハウスに脱北者を招いた際には、北朝鮮女性の人身売買を自分が「止めさせる」とまで宣言した。

そんな経緯もあって、今回の法案に署名しないわけには行かなかったのだろう。だが、米朝のコミュニケーションは、簡単に維持されているわけではない。何がきっかけになって対話が破たんするか、誰にもわからないのだ。

北朝鮮人権法の延長決定が、米朝対話に混乱をもたらす可能性は小さくないのである。

※デイリーNKジャパンからの転載

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