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酷暑でも"屋外学習"を強行する学校の論理

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■暴風雨のなかコンビニに行くか、行かないか

教育活動に付随する諸問題を、私は「学校リスク」と総称している。子どもが教室で授業を受けることから、手袋なしで便器を掃除することまで、そこにどのようなリスクがあるのか。教育的意義の語りをいったん止めて、その活動のリスクを洗い出すのである。

リスク研究の分野では、「リスク」を検証する際にはその対になる言葉として「ベネフィット」が措定されている。

たとえば、暴風雨のなかでコンビニに行こうとすれば、欲しいものが手に入るかもしれないが、途中で転倒したり身体がびしょぬれになったりする危険性がある。手に入れたいというベネフィットを重視する(=コンビニに行く)か、びしょぬれになってしまうというリスクを重視する(=コンビニには行かない)か。

私たちはつねに、リスクとベネフィットを天秤にかけながら生活を送っている。このリスクとベネフィットの両面を考慮することが、リスク研究の基本的な着眼点である。

■「健康被害」と「学習」を天秤にかける

学校では、リスクとベネフィットがそのまま天秤にかけられることはない。先の例で言えば、暴風雨のなかコンビニに行くか、行かないかが素朴に比較検討されることはない。

学校は、コンビニに行って商品を手に入れる、というベネフィットを優先する。先述のとおり、学校は教育をおこなう場であり、そして教育という名の営みは、ベネフィットそのものだからである。

ベネフィットが優先される状況下では、リスクが軽視されやすくなる。だからこそ、あえてリスクの側面を強調することに意味がある。

冒頭の豊田市での死亡事故も、「健康被害」と「学習」を天秤にかけたとき、前者のリスクが高い場合には、屋内での安全な活動に切り替えるという選択がとられるべきである。だが、そのリスクを引き受けてまで、ベネフィットとしての校外学習を実施しようとする状況があった。そして、それはこの学校特有のものではなく、学校教育全般に存在するものなのだ。

■医師のお墨付きがなければ、使ってはいけないのか

ここで取り上げたいのが「日焼け止め禁止」という校則だ。日焼け止めクリームは、紫外線をブロックすることによって皮膚を守る効能をもつ。とりわけ真夏には必携のアイテムと言ってよい。ところが、一定数の学校では、日焼け止めの使用を禁止したり、制限したりしている。

表に、ここ数年の範囲内で日焼け止めクリームを禁止している学校の事例をあげた。

●A中学校 通信
日焼け止めや制汗剤は、原則として家で塗るのみとし、学校での使用は認めません。健康上の事情により学校での使用が必要と認められる場合には、担任または部活動顧問に「使用理由書」を提出してください。

●B中学校 学年通信
学校生活に必要のないものは、持参しない。
例)リップクリーム、制汗剤、日焼け止めは原則禁止とする。薬用で健康上必要な場合には、担任の許可を得る。

●C中学校 学年通信
▽体育大会の練習について
制汗剤、汗ふき用シート、日焼け止めなどを学校に持ち込むのは禁止です。皮膚の病気などの理由で日焼け止めの使用を医師が勧めている場合には、担任に申し出てください。

※学校の匿名性を確保するために、文意を損ねないかたちで大幅に編集している。

これらの事例の類似性は高い。第一に、学校での使用を禁じている(自宅であらかじめ塗るのは認める)。そして第二に、健康上の理由がある場合のみ使用を許可するとしている。

■「日焼け止め禁止」のリスクとベネフィット

従来、日焼けは健康の象徴のように捉えられていた。だが、現在では紫外線がもたらす健康リスクへの関心が高まっている。実際に、日焼け止めの使用は多くの学校において、一定のマナー(例:無香料・無着色、使用場所の限定など)のもとで認められている。

他方でいくつかの学校が、日焼け止めの持ち込みに抵抗を示すのも理解できる。そこには教育的効果というベネフィットがあるからである。すなわち、生徒の教育にとっては、学校にオシャレや美容に関連するものを持ち込ませないことが重要なのだ、という見解である。

たとえば、髪の色を黒く染めさせる「頭髪指導」のように、もし髪の長さや色を自由にしてしまえば、それは非行を助長し、学校全体の規範意識を低下させてしまう――。学校側はそう考える。だから、髪の毛のスタイルを限定し、日焼け止めだけでなく、リップクリームや制汗剤も禁止にする。

こういった教育的効果というベネフィットの是非は、いまはいったん置いておく。ここで問題にしたいのは、日焼け止めを禁止・制限したその結果、健康被害というリスクが現実化されてしまう点にある。

■WHOは「学校が日焼け止めの重要性を教えるべき」

多くの学校は、日焼け止めの使用を「認める」という姿勢であるように思われる。だが、「認める」という発想から、「勧める」という姿勢に変わる必要がある。日焼け止めを使えば、健康被害を減らすことができるからだ。

学校や教員によっては、そこまで踏み込んで使用を推奨している場合もあるようだ。「健康上の特別な理由がある場合のみ許可する」という態度は、もはや時代遅れであると言えよう。

日本臨床皮膚科医会は「学校生活における紫外線対策に関する具体的指針」(2011年10月)において、「サンスクリーン剤を上手に使う」ことを提言し、「たっぷりと均一に」「2、3時間ごとに重ね塗りする」ことを勧めている。

真夏の部活動ともなれば、汗の量も多いだけに、自宅で1回塗るだけではまったく不十分である。また、自宅で塗るだけにすると、長時間効果のあるもの(「SPF」の値が大きいもの)を選ぶことになり、それは肌への負荷を大きくしてしまう。

WHO(世界保健機関)は2003年の時点で、「日焼け防止と学校:いかに効果を生み出すか」という冊子を作成している(図2)。そこで強調されているのは、子ども時代に紫外線を浴びることが後の人生に大きな負の影響をもたらすということである。

同冊子は、炎天下での部活動は、肌をやけどするだけでなく、長い人生においても健康リスクを高めてしまうと指摘する。そして、それゆえ学校においては教育の一環として、日焼け止めの重要性を積極的に教えていくべきと主張している。

■「そんな事例は一部にすぎない」とフタをするな

子どもを守り育てるための学校教育や校則が、子どもの安全や健康を損なっている。そんな学校やクラスは、全国的にはほんの一握りであろう。2018年7月の痛ましい小学1年生の事故も、全国的に起こっているものではない。また、日焼け止めを禁止している学校も、少数派であろう。

このようなとき、「そんな事例は一部にすぎない」という反論が聞こえてくる。とりわけ、学校教育にいそしみ、校則指導に日頃から取り組んでいる教師にしてみれば、一部を誇張した話は耳障りに感じるかもしれない。

だが、「一部にすぎない」という見解は、「だからそれにはフタをしましょう」という主張と同義である。仮にほんの一部の子どもや教師にしか当てはまらないことであるとしても、そこにいる当事者にとってはそれが大問題であり、いますぐにでも改善されるべき状況である。フタをしてはならない。

今こそ、教育のリスクをとらえなおし、学校の安全・安心を見直すべき時だ。近刊の編著『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』(東洋館出版社)では、そうしたリスクを具体的に論じた。ぜひ参考にしてほしい。命を失った小学1年生の児童のような悲劇を、二度と引き起こしてはならない。

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内田 良(うちだ・りょう)
名古屋大学大学院 准教授
1976年生まれ。名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士課程修了。専門は教育社会学。ウェブサイト「学校リスク研究所」を主宰し、また最新記事をYahoo!ニュース「リスク・リポート」にて発信している。著書に『ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う』(東洋館出版社)、『教師のブラック残業 「定額働かせ放題」を強いる給特法とは?!』(学陽書房、共著)、『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』(光文社新書)、『柔道事故』(河出書房新社)などがある。ヤフーオーサーアワード2015受賞。Twitterアカウントは、@RyoUchida_RIRIS

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(名古屋大学大学院 准教授 内田 良 写真=時事通信フォト)

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