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インバウンド時代の農業経営とは - 山口亮子

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 昨年は訪日観光客が最高の2800万人超となった。のべ宿泊者数でみると、約41%は三大都市圏以外の地方に泊まっている。地方を訪れる人の増加とともに、農家民宿、観光農園など、日本の農的空間への関心も高まっている。政府は農山漁村滞在型旅行をビジネスとして実施できる地域を2020年までに500地域にという目標を掲げる。インバウンドの巨大なビジネスチャンスを、どう農業経営に生かすか。6月11日に日本橋で開かれた農業とテクノロジーの融合をテーマにしたAG/SUM(日経新聞主催)で、農家と専門家に聞いた。

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京都おぶぶ茶苑で茶摘みをする外国人客(京都おぶぶ茶苑提供)

フロントランナーのインバウンド需要の取り込み方

 トークセッションのテーマは「世界中にファンをつくる! インバウンド時代の農業経営」。インバウンドと農業の融合におけるフロントランナーの3人に、私が聞き手となってインバウンドと農業の可能性について語り合ってもらった。その模様を簡単にレポートしたい(敬称略)。

松本靖治:京都府和束町の京都おぶぶ茶苑副代表。2012年から外国人インターンを受け入れ、世界67カ国にお茶の発送実績を持つ。67カ国という発送国の多さは、農業分野では国内トップクラスだろう。

篠崎宏:JTB総合研究所執行役員、主席研究員。農家民宿をはじめとするグリーンツーリズムの第一人者。

平田真一:広島県三次市の平田観光農園社長。外国人客の受け入れを1990年から始めており、年間約4000人の外国人を受け入れている。国内の観光農園で外国人の受け入れ数はトップクラス。

 京都おぶぶ茶苑では、2006年から、海外で日本茶を普及する活動を始め、12年に3カ月間、茶園で働きながら日本茶を学ぶ国際インターン制度を設けた。常時4~7人の外国人インターンを受け入れていて、これまでに24カ国89人が制度を利用して訪れた。1日50円で1坪の茶畑のオーナーになれる「茶畑オーナー制度」があり、18カ国約800人のオーナーがいて、うち150人ほどが外国人だ。

 茶畑ツアーは、団体旅行を対象にした2時間程度の茶摘みとお茶の飲み比べをするものと、個人旅行者(FIT)を対象に4時間かけて茶摘みや飲み比べをするツアーを開いている。昨年からは、“お茶の大学”と題し、2週間に30コマほどの授業で日本茶についてじっくり学ぶ仕組みも作っており、今年は12人ほどが参加予定だ。

 篠崎宏さんは、北海道から沖縄まで、全国で地域活性化の戦略構築、観光客誘致戦略、新規ビジネスモデル構築などを手掛ける。特に、一次産業の分野でのコンサルティングに強い。単純に一次産業と観光を結び付けるだけにとどまらず、観光のメカニズムを使って、農産物の単価を上げることにも挑戦している。現在、宮崎県日南市の日南市役所、商工会、漁協と協力して、カツオの一本釣りの漁法を日本農業遺産に申請する準備を進めている。

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平田観光農園でピザづくり体験をする外国人客(平田観光農園提供)

 平田観光農園は、公共交通手段がないというアクセスの悪さにもかかわらず、国内外から年間約16万人が訪れる。約150品種もの果物を栽培していて、秋にはブドウ、リンゴ、ナシ、プルーン、イチジク、ブルーベリーの好きなものが収穫できるという「ちょうど狩り」というコースがあり、人気だ。果物狩りだけでなく、アウトドア体験、ピザづくりなど様々な体験メニューを提供する。

 外国人客の場合、個人旅行者(FIT)の割合が6割まで高まっており、予約をしてレンタカーで訪れる人が多い。トークセッションの前日もアメリカ、香港、台湾からの外国人客がサクランボ狩りに訪れていたそうだ。ドライフルーツの輸出もしている。

コンテンツとして面白ければ外国人も来る

山口:地方を訪れて、「えっ、こんなところにまで外国人が来ているんだ」と感じることが多くなりました。地方を訪れる外国人が増える中、農業経営にインバウンドを取り込んでいくことが重要になっていくのではないかと考えています。まず皆さんがインバウンドにどう取り組んでいるのか、お聞かせください。

平田:中国地方のマチュピチュと呼ばれています。こんなところでも人が来るのかというところですけれども、あのマチュピチュでも人が行くということで、楽しいところであれば場所は関係ないということでございます。

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平田観光農園の全景(平田観光農園提供)

 観光農園って、果物を一つずつ取っていって、最後はなくなるものです。うちではブドウ15万房、リンゴ25万個作っているんですけど、それがなくなれば終わりなものですから、日本人も外国人もあまり関係ないわけですよ。コンテンツとして面白いものを提供して、キラーコンテンツが誰にもまねされていなければ、外国人も来てくれる。

 ただ、外国人は日本人の30分の1です。なので、まだ2800万人と言っても、日本人(国内延べ旅行者数)の6億人の方にプロモーションかけた方がコスパがいい。でも、今から日本人観光客が減ることを見据えてノウハウを蓄積しておくという意味では、しっかりやっていかないといけない。外国人が来る仕組みは、ほぼ口コミで、SNS上で評判が良かったり、写真を見たりして来ているというのが私の感触です。

 FITで自由にプランを組んで、うちに来て、出雲大社に行って、足立美術館に行ってという感じで。中国ですら、今、そういう感じです。最初に来たのは香港の方で、最初はいちご狩りで、次はブドウ狩りに来てとずっとリピートされている。

松本:観光を始めたきっかけは、インターネット通販でお茶を販売したら、海外でもお茶がウケるということで、英語サイトをつくった。お客さんはだいたい欧米の方なんですが、茶畑というのは日本が北限で、欧米では茶はほとんど作られていないので、茶畑を見たいという要望があって、それで観光を始めました。

 2012年にティー・ツアーを英語で案内して、当時、英語もしゃべれなくて(笑)。僕らの場合は、ちゃんと説明しないと、全然価値が伝わらない。リンゴやブドウだったら、甘い、美味しいから入りますが、お茶の場合、渋いとか苦いで、美味しいと分かってもらうまでなかなか難しい世界もあったりする。けれども、ちゃんと説明すれば分かってくれる人が格段に増える。

 なので僕らの場合、言語の壁はかなり大きいなと、観光をやっていて感じる。同じ農業インバウンドと言っても、アプローチも違えばやっている内容も違うなと、平田さんの話を聞いていて感じました。

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京都おぶぶ茶苑の茶畑ツアーの一場面(京都おぶぶ茶苑提供)

平田:うちの場合、大きなリンゴがとか、大きなイチゴを取ってとか、分かりやすいので、言葉はあまりいらない。高齢のスタッフの方が、外国人を相手にするのが得意だったりする。お越しになられたら、確実に満足されるんですけども、そこまでのアプローチが一番難しいところで、なかなか知ってもらえなかったりする。

千歳空港の外国人のレンタカー利用が10年で100倍

山口:篠崎さんはもともと日本人の海外旅行に関わっていて、のちにインバウンドに関わるようになったそうですが、ここ数年のインバウンドの変化をどう感じているでしょうか。

篠崎:日本人の海外旅行の変化をみると、分かりやすい。日本人ももともと爆買いをしていたのが、関心が食にシフトして、お土産をあまり買わなくなった。日本人も最初はロンドン、パリ、ローマのような都市を訪れ、2回目、3回目になると田舎に行きたがる。大体似ているんです。

 ポイントになるのが、どうやってそこまで行くのかという交通手段。どんどん個人化しているので、ここに行きたいと思った場合に、予約の方法はいくらでもあって、問題は足ですよ。この足の部分がすごく変化していて、私は2003年から北海道にいたんですけれども、その時に千歳空港でレンタカーを借りる外国人は年間300台くらいしかいなかった。ところが、2014年に2万4000台。100倍近いですね。今、レンタカーを使えないのは中国大陸から来た方だけで、あとは皆さん使えるので、レンタカーで動く人も増えています。日本人もハワイ旅行をリピートすると、レンタカーを借りるようになる。パイナップル畑に行ったり、内陸のエビの養殖場に行ったり。

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