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苦戦続きの「日の丸家電」 なぜパナソニックだけ好調なのか

【昨年、創業100年の記念製品も出した(時事通信フォト)】

 海外メーカーとの価格競争に敗れたり、業績不振から外資系に飲み込まれたりと、長らく存在感を失ってきた「日の丸家電」。だが、ここにきてパナソニックの家電の国内売り上げが好調だという。その要因は何か。『経済界』編集局長の関慎夫氏がレポートする。

 * * *
 かつて「家電の松下」という言葉があった。全国に3万6000店のナショナルショップを築き、その強力な販売網を武器に、高度成長期の日本で家電製品を売りまくった松下電器、現在のパナソニックについたあだ名だった。

 ところが今、「家電のパナソニック」という言葉は使われない。きっかけは6年前、津賀一宏氏が社長に就任したことだった。

 当時のパナソニックは、プラズマテレビの敗戦処理に苦しみ、2年間で1兆5000億円もの赤字を計上した。これはテレビの売り上げ競争で敗れただけでなく、パナソニック創業者の松下幸之助が唱えた「水道哲学」が現代に通用しないことを意味していた。従来の大量生産・大量販売に基づくビジネスモデルでは、業績を伸ばすどころか損失を増やす結果になることにプラズマテレビの失敗でようやく気付かされたのだ。

 そこで津賀社長は、就任間もなくB2B(企業間の商取引)へのシフトを宣言した。今まで消費者相手に家電を売ってきた会社が、企業相手へのビジネスに転換するというのだ。これまでにもさまざまな電気・電子部品を企業に収めてきたが、あくまで家電が主、B2Bは従だった。しかしこれからはB2Bをパナソニックの主力事業にすると、事業戦略を180度ひっくり返した。

 その代表的な例が自動車関連事業で、米EVメーカーのテスラとは車載電池で提携、昨年にはトヨタ自動車とも車載電池を共同で開発することを表明した。また自動運転に不可欠なカメラやセンサーなどにも力を入れている。

 パナソニックは年間3000億円以上の設備投資を行っているが、その過半を自動車関連が占めている。

 その一方で家電部門の設備投資は、自動車関連の4分の1にすぎない。このことからも、家電事業がパナソニックの主力事業でないことがよくわかる。家電とはコストを抑え、安定的に収益を上げる事業という位置づけだ。

 格落ちとなった家電部門の社員の気持ちは複雑だ。中でもテレビ事業は業績悪化の戦犯扱いされたうえに、事業の大幅縮小で社員は自動車関連などの部署に異動となった。これでは士気も下がるはず。

 ところが不思議なことに、パナソニックの家電の国内販売は、かつて例がないほど好調だ。パナソニックの試算では、現在の国内家電シェアは27.5%と過去最高で、2位メーカーには倍以上の大差をつけている。

 パナソニックの家電部門を率いる社内分社、アプライアンス(AP)社の本間哲朗社長によれば、「ライバルがいなくなったのが最大の要因」だ。

 この20年間、国内家電メーカーは苦戦続き。シャープと東芝の家電部門は外国企業傘下となり、日立も三菱電機も事業の選別を行った。今ではフルラインで家電を販売しているのはパナソニックだけとなった。松下幸之助は生前、「事業を成功させる秘訣は、成功するまで事業を続けること」と語っていたが、パナソニックの家電にそのまま当てはまる。

 本間AP社社長がもうひとつの理由として挙げたのが、「事業部制の復活」だった。事業部が開発、製造、販売まで一気通貫でコントロールする事業部制は松下電器の象徴でもあったが、2代前の中村邦夫社長が、「破壊と創造」を掲げて廃止し、販売部門を独立させた。

 しかし津賀社長は事業部制を復活させ、事業部長は製販連結で評価されるようになった。事業部長の権限が大きくなり、意思決定が現場に近くなったことで、市場の変化に素早く対応することが、シェア上昇に結び付いたというのである。

 スピードアップは本間AP社社長が語る次のエピソードから明らかだ。

「以前は家電事業が本業ということもあり、販売にあたっては社長が出席する御前会議で最終的に判断していた。この会議の準備も大変だった。ところが今は、私のところですべて判断する」

 これは、家電事業が本業でなくなった効能といっていい。今のところ、主力事業からの格下げは、社員の発奮材料となり、むしろプラスに作用している。

 問題はこれからだ。今後、市場縮小が加速することは避けては通れない。しかも設備投資を抑えるなどのコスト削減は将来の芽を摘むことにもなりかねない。いまだにパナソニック製品の2割を販売する専門店(旧ナショナルショップ)の高齢化も進んでいる。製販それぞれで、時代は変わりつつある。家電のパナソニックも安閑とはしていられない。

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