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保守を自称する中傷まとめサイト、論客が無意識に利用の実態

【まとめサイトを信じてしまう危うさ】

 ネットでは様々なムーブメントがその時節にあわせておきるが、そのひとつに「広告はがし」がある。主に保守を自称する中傷まとめサイトの運営資金を断つ目的で、表示される広告の企業などに、誹謗中傷がひどいサイトに広告が表示されていると通報し、掲載をやめるよう働きかけているのだ。そういった動きのなかで、様々事情で悪質な「まとめサイト」に巻き込まれている法人や個人がいる。ライターの森鷹久氏が、困惑する企業と個人に複雑な胸のうちを聞いた。

 * * *
 少し前に、いわゆる悪質な「保守系まとめサイト」がどんな目的で作成されているのかについて、制作者を直撃した記事を執筆した。ちょうど同じタイミングで、大手ネット掲示板では、保守系ニュースまとめサイトを自称する「アノニマスポスト」の管理人を特定しようとする動きが始まった。

 基本的に独自取材をせず、マスコミが報じるニュースを引用し、ネット上の反応と称してヘイトスピーチとも言える文言を並べて“記事”を更新し続ける、いわゆる保守系まとめサイトの「アノニマスポスト」は、抗がん剤治療を続ける沖縄県の翁長雄志知事の容貌を中傷する記事を掲載したことで炎上した。それをきっかけに、ネット上ではサイト管理人を特定しようとする動きが加速したが、その方法は、特殊な技術や方法を用いるというより、公開されている情報を丹念にたどるというものだった。

 たとえば、問題の情報が掲載されているページに埋め込まれているグーグルアドセンスやアマゾンといった「アフィリエイト広告」のID、サイトURLの所有者情報や所有履歴を丁寧に確認する作業を経て、すでに個人名や特定の団体名が運営母体だと指摘する声もネット上ではあがっている。名指しされたサイトは、すぐにこれら「特定作業」に対する反論めいたポストを投稿。さらに、サイト運営者であろうと指摘された人物や団体らから「無関係ではない」ことが明かされたが、結局、誰が管理し、執筆しているかについてははっきりとわかってはいない。

 筆者も以前から、同サイトの管理人を特定すべく調査し、同サイトと関連するとみられるサイト「X」のURL所有者に接触していた。このURL所有者は、結果的には同サイトのコンテンツとは無関係ではあったが「アノニマスポスト」の運営者が誰なのか、知りうる立場にいるA社だった。サイト運営についてA社に問い合わせると、担当者は当初、ひどく狼狽したような様子で答えた。

「弊社はホームページを設計、製作し、パッケージとして法人様や個人様に販売しています。URLの取得、サーバーの管理も行っていますが、今回問い合わせのあった“X”というサイトも、弊社が販売したサイトのうちの一つのようです」(担当者)

 競馬の予想情報などを表示するサイト「X」。ただし情報を販売しているわけではないため、販売サイトなら掲載が義務となっている、住所や連絡先を記した運営者情報が見当たらない。

 一方で、広告表示などのつながりから、Xと紐づいていると思われるサイトはほかにも複数存在し、そのうちの数サイトはA社が販売したものだったことを担当者は認めた。

「クライアント様の情報なので詳細についてはお答えしかねますが、契約上、そして倫理上の問題として、昨今問題になっているヘイトスピーチを行うようなクライアント様とは取引を解除しなければなりません。弊社としては販売しただけ、という立場でサイトの内容にまで立ち入ることはできませんが、弊社に対する風評被害への懸念はもちろん、社会通念上許されないことをやっているクライアント様とはお付き合いできない、ということは明確にしておきたい。鋭意、調査を進めてまいります」(担当者)

 最近では、特定の国や民族を中傷する言葉を並べたヘイトスピーチを垂れ流し、扇動を行うまとめサイトが問題視されたことによって、これらのサイトから「広告はがし」が行われている。具体的には、表示された広告企業に対し、「倫理的に問題のあるサイトに御社の広告が掲載されているのは問題ではないか」と通報することで問題を喚起し、その企業が広告をとりやめるよう働きかける動きが広がっているのだ。

 広告が表示されないと運営資金が確保できないため、サイト管理人らは物販や寄付を募りサイト存続を試みているようだが、その段階になっても結局、誰も顔や素性を明かそうとしない。資金を募る段になっても隠れたままでいようとするのは、「後ろめたさ」を感じていると表明しているようなものだ。

 ヘイトスピーチを繰り返すようなサイト運営者は、少なからず「後ろめたさ」を感じているはずだと語ってくれたのは、都内にある編集プロダクションに勤務していた男性・杉野芳文さん(仮名・29歳)だ。

「雑誌不況で仕事がなくなり、ネット記事の執筆、情報サイトの運営などを請け負うようになりましたが……」(杉野さん)

 杉野さんが執筆していたのは、驚くべきことに「女性の健康や生理現象」に関するサイトに掲載される文章だった。女性ユーザーからの悩みに、女医や女性識者らが「回答する」といった体で、実際に回答内容を考え、執筆していたのは杉野さん。情報の真偽が疑わしい健康系の情報サイト、アフィリエイトサイトが問題視され、一斉に閉鎖された問題にも一枚噛んでいたというのだ。またほかにも、競馬の予想サイト、宝くじの予想サイト、薄毛や肥満といったキーワードで検索すれば上位にヒットする情報サイトなど、合わせて十数のサイトの記事を執筆・運営もしていた。これらは、杉野さんの所属したプロダクションの上司の指示によって行われていたと明かす。さらに……

「極端な政治思想の持ち主たちに受けるようなまとめサイトや情報サイトの運営も行っていました。ちょうど2014年ごろです。法人としてやるには実入りが少なく、今はほとんど手を引いているようですが、これらのサイト運営のノウハウは、情報商材として出回るようになりました。情報商材には、まとめサイトの運営方法だけではなく、ユーチューブやニコニコ動画で動画を配信することでカネが得られる方法も書いてありました。今現在、動画サイト上に適当な音楽をバックに文字だけが流れるような動画が溢れていますが、あれも情報商材を購入し真に受けた人々がやっているのです」(杉野さん)

 杉野さんはあまりのバカバカしさにプロダクションを退職したが、運営や執筆をしていたいずれのサイトにも、杉野さんや同プロダクション名の記載はなかった。その理由を「恥ずかしいし、後ろめたいからです」と断言する。こうした現実を知ってか知らずか、筆者がウォッチしている右派系言論人が、SNS上で性懲りもなく前述の「アノニマスポスト」や、それに類似するまとめサイト、情報サイトへの記事リンクを共有し、そこには多数のコメントが寄せられていた。

 リンクを共有する言論人には、有名作家や政治を扱う情報バラエティ番組でコメンテーターをするようなエコノミストや評論家もいるため、「あれほどの有名言論人がリンクするなら、きっと確かな情報に違いない」と鵜呑みにする人が少なくない。そして、コメントには、非常識なヘイトスピーチが目立った。

「朝鮮人とは関わらないほうが良いですね」
「素晴らしい記事。拡散します」
「我々日本人と朝鮮人、中国人は別の生き物。彼らを排除しなければ」

 筆者は保守思想の持ち主であり、ネット上でも保守的な発言、発信をしてきたので右翼であり、「ネット右翼」でもあると自分では思っている。ネット上で右翼を「ネトウヨ」と呼ぶときは蔑視的なものだとはわかっていてもなお、ネット右翼と自認するほかない。しかし残念なことに、実際にヘイトの垂れ流しや扇動をしているのは、カネが目的というだけの者たちだ。そんな人たちに振り回され、取り込まれ、カルト的な流れに乗っていることに気が付かない人々が、残念ながら、保守派を名乗る人々の中に存在する。

 さらに付け加えておけば、ネット上では「ビジウヨ」とも揶揄される、ビジネス目的で“右翼を名乗る”人々、またその反対の立場を名乗る人々がいることも忘れてはならない。彼らは巧妙に、ときに大胆に、民衆を煽る。前述の杉野さんが勤めていた編集プロダクションには、左派寄りとして知られるジャーナリストらが出入りし、一緒になって非合法ギャンブル情報にまつわるアフィリエイトサイトやニュースサイトを運営していた。

「午前中に自民党を罵倒する記事を書き、午後には自民党を持ち上げる記事を書く。朝三暮四などではなく、単純にネタになるから、カネの為です」(杉野さん)

 保守派だろうが革新派だろうが、思想を持つことは健全だ。だが、敵視するあまりにそれを中傷するのは、ゆがんだ行為だと気づくべきだ。そのヘイトスピーチは、信念もなく金儲けのためにねつ造もいとわない者たちによって流された情報や、真偽を確認する手間を省いた有名人が安易に紹介した“真実”に影響された末、生み出されていることに早く気が付くべきなのだ。

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