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映画「榎田貿易堂」R‐15が辿り着いた秘境のようなオトナのシモネタと群像劇

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映画「榎田貿易堂」公式サイト

夏が始まり、終わる――。ひと夏という季節の通過儀礼により、人々の何かが少しずつ変わる。映画「榎田貿易堂」は群馬県の渋川・伊香保を舞台に、ひとクセあるオトナのようなオトナ達の淡々としならがも混沌とした群像劇だ。

登場するオトナ達は何かしらの「迷い」を抱えている。個々にとって切実な「迷い」が絡みあい、タバコをふかしあい、軽口を叩きあい、ツッコミあい、こそりと詮索しあい、働いて弁当食って時々酒飲んでうどんすすって、笑っているうちにその裏側が透けてきて、雨降って晴れて曇って夏が過ぎていく。

幾すじもの余韻が尾を引く作品だった。ストーリー概要を公式サイトから引く――。

迷える大人たちの喜怒哀楽

< 映画「榎田貿易堂」公式サイトより >

群馬県にある開業四年目のリサイクルショップ・榎田貿易堂。

「扱う品はゴミ以外。何でも来いが信条さ」という店主・榎田洋二郎(渋川清彦)のもとには、店の商品同様に様々な人間が集う。榎田貿易堂でバイトする人妻・千秋(伊藤沙莉)、同僚のクールな青年・清春(森岡龍)、終活中の客・ヨーコ(余貴美子)、東京から出戻った自称スーパーチーフ助監督・丈(滝藤賢一)。各々が小さな秘密を心に抱えながらも、穏やかな日々を送っていた。※( )は筆者補足。

ある夏の日のこと、いつものように彼らが集う中、店の看板の一部が落下する。「これ予兆だよ。何か凄いことが、起きる予兆」と言う洋二郎の言葉通り、それぞれの抱える悩みや問題が、その日から静かに、だが確実に動き出す…。

夫との関係に寂しさと不安を抱く千秋、過去から抜け出せず苦しむ清春、新たな恋人との生活と人生のけじめに揺れるヨーコ、東京での映画作りの日々と故郷での生活に迷う丈。そして、洋二郎の胸にも捨てられない想いがあった。果たして5人は現在に「留まる」のか、それとも「やめる」のか…。
渋川清彦演じる主人公の榎田は、リサイクルショップを「なんとなく、勘で」という、あってないような動機で始め、家電や家具や脈絡のないレトロなグッズに囲まれながら、仕事と色事をゆるく行き来し、地に足がついているのかいないのか、つかみどころの無い浮遊感で地元を漂っている。押しそうで引いていて、アクが強そうで淡く、今この時代、どこかにいそうで既視感のない、ふんわりしてて優しくてふざけたオーバーオールの似合うアニキ。物語が進むうちにじわじわと気がかりな存在になっていく。

このアニキを軸に、榎田貿易堂というプラットホームにいつもの面々が集い、雑談が始まる。戯れて毒づきながら、話はやがていない誰かの噂になる。狭いジモトの人間関係は最大の暇つぶしだ。

また、言葉を要しない場面では、コドモが美容院での秘め事を「覗き」、オトナがコインランドリーでの秘め事を「覗き」、ジモトの(下衆で日常な)時間は年齢に関わらず流れたりしている。男女の結合は、地元民達をつなぐ永遠の接着材だと言わんばかりに。

この映画で描かれる男女の結合は「危うさ」や「逞しさ」など様々な磁力を放ち、目を逸らさない。その中でも出色だったのが伊藤沙莉が熱演した「珍宝館」のシーンだった。

※(すでに6月9日より公開済みの映画ではありますが、ここからさらなるネタバレを含みます。これから観そうな予感がある方はここで読むのを止め、ぜひ上映館へ。鑑賞後にまた読み進めて頂ければ何よりです)。

夫とのセックスレスにフラストレーションを溜めている若い人妻

伊藤沙莉

女優・伊藤沙莉(いとうさいり)は、最近ではNHK朝ドラ「ひよっこ」(2017年)で少しクセのある米屋の娘「米子」を演じていたのがおなじみか。子役時代からの長いキャリアを持ち、現在24歳だ。美女とも言い切れず、かといってブスではない。しいて言えば「中の上」、そんなエリアの誰もが持っている「何かを持ってない」感が、芝居の妙味を連れてくる。若いが巧い注目のバイプレーヤーだ。

伊藤が演じる千秋という女性は、夫とのセックスレスにフラストレーションを溜めている若い人妻。女として満たされず、抱いていた理想の夫婦からかけ離れてしまった現実をこじらせている。その反動もあってコインランドリーの主人(諏訪太郎)とヨーコ(余貴美子)の秘め事を覗いては、正体を隠した横槍を入れることが、フラストレーションのハケ口になっていた。

だが、ヨーコに勘付かれてしまった千秋は「ちんちんダッシュ」という名の犯行を白状する。(※「ちんちんダッシュ」の詳細は作品でお確かめを)。男女の営みをエネルギッシュに謳歌し、人生の経験論を熱弁する熟女ヨーコを前に、千秋は溜め込んでいた苦悩が一気に噴き出し、泣く。

「もう2年は旦那に触られてない」と。そんな千秋にヨーコは踏み込んだカウンセリングをアドバイスを送る。
< 「榎田貿易堂」より >

ヨーコ(余貴美子)「今夜(旦那を)誘いなさい」

千秋(伊藤沙莉)「やり方忘れちゃいましたよ」

ヨーコ「手っ取り早いのはいきなりフェラチオ」

千秋「できませんよそんなの!」

(略)

ヨーコ「だったらデートで珍宝館行きなさい」

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