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「北海道愛」の松山千春 全ては竹田健二氏らが取り持ってくれた縁 - 田中秋夫

オフィスゲンキ

松山千春氏の事務所から4月25日発売のCD「北のうたたち」が送られてきた。

このCDは、1869年(明治2)に 探検家松浦武四郎によって〝北海道〟と命名されてから今年で150年目となり、節目の年を記念して作られたという。「北海道にゆかりのある楽曲」を千春自身が選曲、カバーしたミニアルバムになっており、「網走番外地」「ネオン川」「虹と雪のバラード」等全5曲が収録され、彼の〝北海道愛〟が溢れた一枚になっていた。

私と千春との出会いは彼のCDデビュー前の1974年に遡る。

長髪をなびかせ朗々と歌う…フォーク界の人気アーティスト誕生

当時、文化放送で放送していたかまやつひろしのDJ番組「グレコサウンドシティ」の札幌での公開録音に彼がゲスト出演した時である(かまやつひろし氏=通称ムッシュは2017年3月他界)。

札幌公録は地元のSTVラジオに制作協力を依頼することになり、担当してくれたのが千春の生みの親で、今は亡き竹田健二氏だった。彼は制作現場の職人的な気質の持ち主で、熱心に準備を進めてくれた。

そして竹田氏がこの公録のゲストに選んだのがアマチュア時代の松山千春だった。

本番前に竹田氏からかまやつ氏と私を紹介されると、千春は多少照れたような表情で握手を交わした。肩まで届く長髪の彼は繊細な神経の持ち主のように見えた(現在の風貌とは別人の観がある)。特に音楽業界の大先輩に当たるかまやつ氏には憧れの眼差しを注いでいた。

当時、東京の音楽業界では「松山千春」の情報は少なかったが、公録の当日、我々東京勢は彼の人気に驚かされることになった。

会場のSTVホールの前は、早い時間からファンによる長い行列が出来ていた。そして、いざ開演となると熱狂的な声援が飛びかい、会場は熱気に包まれた。ステージでは千春が独特の語りで観客を沸かせ、透明感のある声でオリジナル曲を朗々と歌い上げていた。

私は初めて聞く彼の歌声に魅了され、「ふきのとう」以来の北海道発のフォーク界の人気アーティスト誕生を実感していた。

その後、1976年に竹田氏は日曜日のゴールデンタイムに「千春のひとりうた」という番組を立ち上げ、千春に番組内で毎週新曲を2曲発表することを義務付けたという。

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さらに竹田氏の推薦で1977年1月にキャ二オンレコード(現ポニーキャニオン)から「旅立ち」でデビュー。この曲は北海道でローカルヒットとなった。

しかし、これからさらに大きく羽ばたこうとしていた矢先に、竹田氏が急性心不全で急逝する。36歳の若さだった。「師と仰ぐ人物」の死は千春にとって心の大きな支えを失う出来事だった。(詳しくは千春の自伝小説と映画「旅立ち~足寄より」参照)。

その後、千春は第2弾シングル「季節の中で」のヒットに続いて「大空と大地の中で」「長い夜」等、次々にヒット曲を飛ばして音楽業界で確固たる地位を築いていった。さらに、TV界では千春の物まねタレントまで現れ人気の絶頂期を迎えた。

そんなある日、2007年2月に京都の暴力団のパーティに招かれて3曲歌ったことが報道され、これがきっかけとなり、竹田氏の企画した番組以来、30年以上続いていたSTVラジオに於ける千春のレギュラー番組が全て放送打ち切りの事態となった。

そういった情報がラジオ業界に広まった頃、当時職場が変わってFM NACK5の編成責任者であった私に事務所の担当者から連絡があり、「千春の番組をナックで出来ないだろうか?」との打診があった。

私は二つ返事で「ぜひやりましょう!」と答えた。

生放送の熱いトークで再ブレイク

千春の熱いトークは定評があり、NACK5のカラ―に合っていると思ったからである。彼の反社会勢力との付き合いは放送倫理上非難されてもやむを得ないが、彼の才能をメディアから長く締めだすのはやりすぎとの思いがあったのである。

そして番組タイトルも彼のレパートリーから「ON THE RADIO」に決めた。さらに番組の制作は千春と面識があった東海ラジオ出身の加藤与佐雄氏に委託することにした(加藤与佐雄氏は2016年1月他界)。

同年7月から番組がスタートすると「なぜ千春がナックで?」とラジオ界の話題になった。ラッキーなことに民放にとって欠かせないスポンサーとして千春の御贔屓企業「アサヒ緑研」が名乗り出てくれた。更に各地のラジオ局から番組ネットの希望が殺到し、ネット局は続々と増えていった。やがて、放送打ち切りにしたSTVラジオもこの番組を放送することになり、現在は全国19局で放送している。

今年の7月で11年目に突入したこの番組は原則的に「生放送」を貫き、千春のコンサート日程に合わせてネット各局のスタジオを借りて生放送を続けているが、聴取率も好調を維持している。

全ては今は亡き竹田健二氏を始め、かまやつ氏、加藤与佐雄氏が取り持ってくれた縁だと思い、今でも感謝の念を強く持っている。

田中秋夫プロフィル
1940年生まれ。一般社団法人放送人の会・理事。元FM NACK5常務取締役。
64年、文化放送にアナウンサーとして入局、その後、制作部に。「セイ!ヤング」や「ミスDJリクエストパレード」など深夜番組の開発に尽力し、ラジオ界での名物ディレクターとして知られる。その後、90年にFM NACK5に制作責任者として転籍。ラジオ番組のコンクールでは「浦和ロック伝説」「イムジン河2001」「中津川フォークジャンボリー」等で日本民間放送連盟賞受賞

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