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難民先進国のはずが…済州島にイエメン難民殺到し韓国世論二分 “ノービザ制度”が逆手に


韓国最南端に位置する済州(チェジュ)島。「韓国のハワイ」と呼ばれ、日本人観光客にも人気のリゾート地だが、その“楽園”の現地島民にはいま不安の声が広がっている。

「外国人がたくさん入ってくるのは、私たちにとって良いことではないでしょう。犯罪者なのかどんな人なのか、分からないじゃないですか」

「最近は事件がたくさんあるので、そのような面で良くないですね」

済州島で連れだって歩くアラブ系の顔立ちの男性。彼らは、中東・イエメンからの「難民」だ。イエメンでは、2015年に政府軍とゲリラ軍の間で内戦が勃発し、30万人近いとされる難民が国外へと脱出したといわれている。

そのうちの一部の人たちが目を付けたのが、韓国の済州島。ここでは、一定期間ビザなしで入国できる制度が導入されており、今年に入って一気に500人以上のイエメン人が済州島にやってくる事態となった。


難民の1人アリ・アルサフィさんは、イエメンの首都・サナアでインターネットカフェを経営していたが、今は済州島内のホテルで仲間4人と生活。「私には子ども2人と妻がいます。家を転々としましたがそのたびに空爆されました。食料もなく医療も受けられなくなり、ここ韓国に来ました。韓国は素晴らしい国で気に入っています」と話す。

難民の多くは所持金が底を尽きかけているといい、ボランティアらが食糧や住居などの支援を行っているが十分とは言えず、海岸近くでテント暮らしをしている人も。話を聞いた難民の中には、1日1食で我慢するため、ただひたすらじっとしているという人もいた。


さらに難民を苦しめているのが差別。韓国大統領府のサイトでは「難民申請の許可の廃止または改正を求める」という意見に70万人近い賛同が集まり、インターネット上には「怖くて子どもが生めません。同意します」「『平和の都市』が顔負けになるほど、済州島で外国人の事件が多くなっています」と難民たちへの反発の声が溢れ、イスラムへの憎悪をむき出しにした過激な意見も少なくない。また、ソウル市内では難民受け入れに反対する約1000人が抗議デモを行うなど、国内にジワジワと難民排除の声が広がっている。

「これまで難民は遠い国の話だと思っていましたが、私たちの国、済州島に来てしまった。地元の人はそう思っています。それで少し不安を感じています」(済州島民)


韓国世論を分断する一大問題に発展したことで、政府もようやく「難民を保護する義務がある」として、難民審査の期間を縮小するなどの対応策に乗り出した。

「この件は今後、難民に対して韓国社会の全体的な思考を見直すきっかけになると思っています。この機会を通じて、これから入って来るであろう難民を、我々がどんなシステムで、どのように迎えるかが整備されるのではないかと思います」(済州平和人権研究所 シン・ガンヒョプ所長)


イエメン人難民のアリ・アルサフィさんは「外に出ることはできません。なぜなら私たちイエメン難民に対するいろんな声が聞こえてくるからです」と不安の声をあげつつ、「戦争が終われば国に帰って家族と生活がしたいです。私たちはいい人です。いい人だと説明する機会が欲しいです」と訴えた。

なぜこの問題はここまでこじれてしまったのか。取材にあたったテレビ朝日ソウル支局特派員の良永晋也記者は、済州島の“ノービザ制度”が逆手に取られていると話す。

「観光を盛り上げるために導入されたノービザ制度を、いわば逆手に取るような形でイエメン人が入国してしまったということで、これは韓国政府にとっても想定外だった。慌てて先月、ノービザ入国の対象からイエメンを外したが、一方でいま済州島にいるイエメン人が仕事をすることは特例で認めると。どっちつかずな対応になってしまった」


その結果、賛成派と反対派の双方から批判される事態になっているという。また、最新の韓国国内の世論調査では「反対」が5割、「賛成」が4割で、若い人ほど反対の声が多いという。

韓国は2013年、他のアジア諸国に先駆けて難民申請者の権利などを保証する「難民法」を制定した、いわば難民先進国。しかし、2013年から計3万5000件近く出された難民申請のうち認められたのは1000人に満たず、ヨーロッパ諸国などと比べても低い水準となっている。良永記者は「済州島の一件で難民問題がクローズアップされ、難民法の理念と実際の格差が浮き彫りになった」との見方を示す。

また、済州島の島民が漏らした犯罪への不安には、2つの側面があると指摘。「警察に問い合わせたところ、今月4日現在でイエメン人に関連する犯罪は1件。イエメン人同士が喧嘩になって暴行容疑で取調べを受けたというもの。500人以上が島の中にいることを考えると、1件という数字は急増しているとは言えないのでは。

ただ、島民の治安に対する不安はあながち的外れではなく、ノービザ制度が導入されて以来、島には中国をはじめ外国人観光客が押し寄せるようになって、それに伴い外国人による犯罪も増えた。なので、イエメン人でも同じことが起こるのではないかという不安は確かにある」とした。

通常のプロセスであれば、難民申請が認められるまでには半年以上かかると言われている。イエメン難民は特例で仕事を認められているが、難民としての公的な保護は受けられず、生活は島民の善意や済州島の地方自治体の支援に頼っているのが現状だ。

良永記者は「イエメン人が難民として認められるかどうか、審査の結果が出るには少なくとも2~3カ月がかかるとみられ、問題はしばらく尾を引くことになる」と懸念点を述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

【動画】故郷に平和を…シリア難民の“戦場のピアニスト”が東京公演

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