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転職先を「年収」で選ぶと大失敗するワケ

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■人手の奪い合いvs仕事の奪い合い

「転職するなら35歳まで」という壁が崩れつつあるとも言われるが、黒田さんは「35歳の壁はある。全く崩れていない」と断言する。

「むしろ転職の老若格差は広がっています。45歳くらいまでホワイトカラーでやってきた人が同じような職種で転職しようと思っても、希望する仕事に簡単に就けるわけではありません。希望者に対して圧倒的に求人数が少ないためです」

偏差値の高い大学を優秀な成績で卒業し、給料もよく将来も安定した一流企業に就職したはずなのに、まさかの早期退職勧告。

「会社という大きな船に乗って働いていれば、一生安泰だった時代は終わっています。強い領主のもとで雇われていれば生き延びられた時代ではすでになく、そもそも強い領主がいない。自分自身が小さい領主になって戦っていくしかないのです」

人口が他の世代よりも多い団塊ジュニア&バブル入社世代は、これからも様々な雇用問題に巻き込まれることは明らか。どう向き合い、どんな準備をすればよいのか。転職を考える前に自分の客観的なマーケットバリューを知ることが必要だと森本さんは言う。

「大企業で育った人ほど変化対応力が乏しく、転職して苦労しているのが実情です。前職のブランドは関係ありません。自分の持っている外で通じる価値、ポータブルスキルは何か。そして変化対応力も含めたマインドセットを正しく自己診断することです」

自己診断ができていないと、自分は年収1200万円の人間だという年収の物差しでしか測れない。

「大企業出身者が、中小企業なんてと上から目線で入ってエラい目に遭うのはよくあることです。大企業では部門分けされていたのが、中小企業ではすべて自分でやらなければいけない。

また大手だと部下も偏差値の高い優秀な社員が多く、企業ロイヤルティも高く、やる気もある。転職先でレベルもモチベーションも低い部下をマネジメントするのは実は非常に難しいのです」

年収を軸に転職すると間違いやすいと森本さんは続ける。

「年収を維持できればいいほうで、場合によっては2割くらいダウンしてもいいという覚悟で臨んだほうがいい。むしろ自分が貢献して会社を成長させてゲインを得るくらいの気持ちがないと続かないですね。採用する側にしても高い年収で雇えば期待値も高くなりますから、本人も苦労すると思います」

40代からの転職となると、やはりそれまでの経験を活かせる同じ業界に移るほうがいいのだろうか。

「その産業自体が長期低落傾向にあるのであれば、業界のなかで移ったとしても、瞬間的には生き残ることはできるかもしれませんが、長期的な下降トレンドから抜け出すことはできません」(黒田さん)

「各企業が今求めているのは、過去の成功体験やマーケティング結果から導き出されたものではなく、競合他社がまだ見出せていない新たなサービスや商品、要は未来のニーズやシーズを捉えてビジネスにしていくことです。他社と競合すると結局は低価格競争になってしまいます。

同じ業界出身者からは先入観が邪魔をして常識を超えるアイデアが出てこない。企業が求めているのは業界経験よりもイノベーションを生み出せるビジネスプロデュース力を持っている人です」(森本さん)

これまでは骨を埋める覚悟で定年まで働くというロイヤルティを企業は求めてきたが、今は逆に「定年まで働きたい」と宣言されては企業も困る。

「年齢が上がれば上がるほどフリーランスのように〈株式会社自分〉という意識を持つことです。本当に実力があるのなら転職に年齢は関係ありません。出せる成果があればオファーはある。でも年齢の影響を受けてしまうのは、実力がないか、自分の価値を相手に見せられていないということです」(黒田さん)

35歳を過ぎたら、自分の市場価値を知るためにも転職エージェントを活用するのはマスト。転職エージェント選びのコツはあるのだろうか?

「弊社のようにミドル世代に強いとか、管理部門に強いなど転職エージェントにも特徴があるので、それを知って選ぶことです。できればセカンドオピニオンを聞くためにも複数のエージェントと話したほうがいい」(黒田さん)

「成功体験にこだわりすぎず、先入観を捨てて、選択肢を多岐に広げれば、思いもかけない化学反応が起こる可能性もあります。どんな球も振ってみないことには、手応えはわからないものです」(森本さん)

転職成功の秘訣は、まずエージェントに、この人をあの企業に紹介したいと思わせる人間力かもしれない。

各年代の転職のポイント

30代の転職
転職市場の主役世代。ポイントとなる年収だが、初年度だけでなく、2、3年後どのように上がるかを見据えて慎重に。

40代の転職
マネジメント能力が求められる世代。自分を雇うことがいかに利益となるか、説得力を持って提示できるかが鍵。

50代の転職
転職先が決まる前に退社しがちな傾向にある世代。望む仕事に就けるのは非常に難しいことを覚悟して活動を。

転職後に成功する人

1 固定観念に縛られない思考ができる人
2 自尊心が過去よりも未来にある人
3 慎重すぎず、無謀でもない決断ができる人
4 新たなことを学ぶのが好きな人
5 他者に肯定的で、自責志向の強い人

出典:黒田真行著『転職に向いている人 転職してはいけない人』
黒田真行(くろだ・まさゆき)
1965年生まれ。89年リクルート入社。2006年から8年間、転職サイト「リクナビNEXT」編集長を務める。2014年ミドル世代の適正なマッチングを目指し独立、ルーセントドアーズを設立。著書に『40歳からの「転職格差」』ほか。 

森本千賀子(もりもと・ちかこ)
1970年生まれ。93年リクルート人材センター(現・リクルートキャリア)入社。その後、リクルートエグゼクティブエージェントに移る。2017年転職エージェントmorich設立。著書に『35歳からの「人生を変える」転職』ほか。 

(フリー編集者 遠藤 成)

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