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子育て関連の話題はネットで地雷 他人の人生に口出すな

ネットニュース編集者の中川淳一郎氏

 現実に隣に住む人だったら、ほとんどの人が放っておくだろう事柄でも、なぜかネットの世界では詰問し、糾弾し、炎上へということがしばしば起きる。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、話題にするだけで地雷になりがちな子育て関連の炎上事件を振り返る。

 * * *
 元々「宣伝材料があるか主張したい人間以外、ネットの情報発信は無駄」という考えでいたが、最近とみにその考えが強くなっている。「考えが違う」というだけで炎上させられるし、所属先にクレームも寄せられるからだ。

 6月、慶應義塾大学教授のツイートが多数の批判を浴びた。自身の趣味である観劇に、ゲーム好きの我が子が関心を示さぬため腹が立ち「ゲームはクソ! ミュージカルが最高!」と叫んだところ号泣されたという。これに対しては、「自分の趣味を押し付け、子供の趣味を尊重しない多様性否定のクソ親」的扱いをされ炎上、同氏はこのツイートを削除した。

 親の教育方針なんてものは、本来家ごとに異なるものだし、親の押しつけがあって当然だと思っていた。もちろん、寒い中ベランダに立たせたり食事を十分に与えなかったり暴力を加えるなどした、目黒の5歳女児虐待死事件のようなネグレクトは糾弾・通報・逮捕されるべきである。

 件の教授は子供にとってゲームは良くない、観劇の方が優れている、という考えを持っていたのだろう。にもかかわらず、「親の心子知らず」とばかりにゲームに没頭する子に苛立ち、怒った挙げ句いちいちツイッターで教育論をぶちかまし炎上した。

 だいたい、「所詮は他人の子」でスルーすればいいのに、けしからんと考える人々が一斉に発言者を叩く。教授は確かに迂闊ではあったが、彼の教育方針を糾弾する必要もなければ、彼の子を殊更可哀想な存在だと扱う必要もない。親子関係の深淵なんてものは、他人には一切分からないものなのだ。

 それなのに、一億総批評家状態になり、他人の考えや方針が自分の基準に合わないと一斉糾弾を行う。特に子育て関連ではこれが顕著で、ネットの人々は子供を「自立した一個の存在」と扱いたがる。だが、親からすれば子供というものはとにかく心配の種だし、より良い人生を送ってもらいたいと考えるから考えを押し付けがちだ。私も「目が悪くなるからテレビ禁止」という少年時代を送ったがなんてこたぁない。クラスの話題についていけなくなるばかりでなく、視力は小学校6年生で0.1になった。

 そもそも、子供の常套句である「○○くんだって持ってるんだよ~。ボクにも買って~」というダダに対しては「○○くん家とウチは違うの!」とバシッと言い切り、子供を納得させていたし、こうした意見はネットでは共感される。

 なのに「ゲームはダメ、観劇こそ至高」に対し「ヨソはヨソ、ウチはウチ」がなぜ今回は糾弾されたのか。観劇という値の張るハイソな趣味を子供に提供できる若き慶應教授に、自らの「課金さえしなければゲームはOKよ」的教育方針を否定されたと考えた親も多かったのではないだろうか。また、自分自身の趣味を否定されたと考えたゲーム好きの逆鱗に触れたか。私も「極端なこと言ってるヤツがいるな(苦笑)」と思ったが、わざわざ彼に批判を送る気にはなれない。

 見ず知らずの他人の人生なんてどうでもいい。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。

※週刊ポスト2018年7月20・27日号

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