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【中証視点】中国レアメタル輸出規制をWTOが規則違反認定

  中国がレアメタルなどの鉱物資源を対象に行っている輸出規制が、世界貿易機関(WTO)のルールに違反していると欧米などが訴えている貿易紛争を巡り、WTOの最終審に当たる上級委員会は30日、欧米側の主張を認める第1審裁決を支持する報告書を発表した。中国商務部の関係者は1月31日、中国が一部鉱物資源に課している輸出関税が関税および貿易に関する一般協定(GATT)20条に適用されないなどとする第1審裁決を上級委が支持したことについて、「遺憾だ」と表明した。

  中国証券報が関係各者を取材したところによれば、中国がマグネシウム、ボーキサイト、マンガンなどの9品目の鉱物資源に対して行っている輸出規制を巡って貿易紛争が起きた2009年以降、これら9品目の需給関係は大きく変化しており、WTOがこれに対する最終裁決を下しても、市場への影響は有限とみられる。ただ今後はこれら9品目に含まれていないレアアース、タングステン、アンチモンなどの小金属に対して中国が行う輸出規制がこの影響を受ける可能性がある。事実、WTOの最終裁決が発表されると、欧米のメディアのほとんどが中国のレアアース輸出への影響を重点的に取り上げた。

◆マイナス影響は有限的

  商務部条約法律司の関係者は31日、「中国はWTOの裁決を真剣に評価し、またWTOのルールに基づき資源製品に対する科学的な管理を行い、持続的な発展を実現する」と表明した。

  業界専門家はWTOの裁決による影響が中国政府の今後の対応方針を決めることになるとの分析を示す一方で、「短期的にみれば、中国が輸出関税を引き下げて輸出規制を解除したとしても、マイナスの影響は有限的だ」とする見方を述べた。

  東興証券非鉄金属業チーフアナリストの林陽氏は中国証券報の取材に対し、「中国国内では亜鉛、マグネシウム、ボーキサイト、マンガンの需要が大きいが、世界経済が低迷する中で、欧米では原材料需要が伸び悩んでいる。中国政府がWTOの裁決に従って規制を解除したとしても、需給関係を速やかに変化させることはなく、短期的にみれば業界や企業への影響は限定的だ」と示した。

  中でも亜鉛がこの状況を示す典型的な例になるとみられる。富宝資訊のアナリストによれば、2011年1月1日に施行された「2011年関税実施法案」で関税が課せられたのは1号亜鉛と2号亜鉛のみ。WTOの裁決によって中国が輸出関税政策において譲歩したとしても、世界経済の低迷が川下の需要不振を招いており、短期的には亜鉛の輸出や価格にもたらされる影響は小さいとみられる。

  ボーキサイトの輸出環境もこれに類似している。中国の電解アルミ生産能力は大きいが、その原料となるボーキサイトは60%を海外に依存しており、中国のボーキサイト輸出量は極めて小さい。このためWTO裁決による影響は非常に限定的となる。

◆レアアース輸出に一石

  金属製品を扱う外資系商社の北京駐在員は31日、中国証券報の取材に対し、「欧米がWTOの今回の裁決を機に中国のレアアース輸出問題に一石を投じるとの見方が業界内で普遍的。今後、中国が何らかのレアアース輸出規制の措置を取る可能性は大きい」と話した。

  現在の経済情勢の下、欧米国にとって亜鉛や黄リンなどに対する中国の輸出規制に反対する意義は大きくない。中国がこれら2品目を含む9品目の鉱物資源に対して行っている輸出規制を巡って貿易紛争が起きた2009年時点は、レアアースの価格はまだ低かった。しかし現在はレアアース価格が過去最高の水準にあり、欧米国にとって今回の裁決は問題の対象をレアアースに向けさせることに真の意義がある。

  WTOの最終判決が発表されるや否や、米メディアが「中国の原材料輸出規制紛争を巡る最終裁決は、中国のレアアース輸出規制に対していかに対応すべきかを決める判断材料になる」との政府高官の話を伝えたことや、英メディアが「欧州連合(EU)は今後、中国にレアアース輸出規制の緩和を求めるだろう」と報じたことなどがこれを証明している。

  このほか、スズ、タングステン、アンチモンなどの小金属に対する中国の輸出政策も注目されている。商務部は昨年12月、タングステン、アンチモンなどの非鉄金属の2012年第1弾の輸出割当枠を発表。タングステンに1万1400トン、酸化アンチモンに3万3500トン、スズに1万800トンの枠を設定した。また中国工業情報化部はこのほど発表した非鉄金属工業の第12次五カ年計画の中で、今後数年はスズ、タングステン、アンチモンの国内需要が旺盛な伸びを維持するとの見通しを示し、同5カ年期間中の国内需要の年間平均伸びをそれぞれ5%、9.3%、10.2%と予測した。

  需要が旺盛な中で、輸出規制を緩和すれば、これら小金属の価格を押し上げることになると業界関係者はみている。

◆貿易紛争続く

  WTO貿易紛争解決機関(DBS)は30日内に専門家チームの意見を採択するかどうかを決め、その後中国に裁決を順守するよう提案する。

  近年は中国と欧米国家との通商摩擦が激化。米国のタイヤセーフガード措置、中米間の音楽作品紛争、中国の原材料輸出制限などの一連の貿易紛争がWTOに提訴されている。

  WTO上訴委が、GATT第20条は中国が鉱物資源に課している輸出関税に適用できないとするWTOの紛争処理委員会(パネル)による第1審判決を維持したことについて、中国の法律専門家は中国証券報の取材に対し、「環境保護目的あるいは資源不足を理由に輸出制限を行うことは非合理的なものではない」と指摘した。「その他の多くのWTO紛争処理の中で、ある措置がWTO加盟時の公約と矛盾があると認識された場合、それを弁護する理由は貿易制限的措置禁止の原則の例外を認めているGATT第20条だ。ただGATT第20条が適用されるためのハードルが高いにすぎない」と述べ、中国産肉製品の輸入に対する米のセーフガード措置を中国がWTOに提訴している件で、米国側がGATT第20条を理由に挙げていることを指摘した。

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