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圧力がかかる若手弁護士の「増員」批判

 驚くべきことですが、若手弁護士に増員政策を批判する資格があるのか、ということを本当にいう先輩弁護士がいるようです。最近も、日弁連会長選の公聴会後、ある候補の推薦者が、こう語ったという話が流れています。

 「増員政策で法曹になれた若手が増員反対を言うのは矛盾だ」

 以前にも書きましたが、この点をむしろ真剣に受け止めてしまっている若手がいるのは事実です。増員によって枠が広がった中に入った一人、いわば、その恩恵を被った立場かもしれない、という意識があるため、この増員政策に疑問を感じ、また、弁護士になった後、もろにそのしわ寄せを受け、批判したい立場にありながら、その批判に躊躇してしまう若手です(「『改革』批判を躊躇する若手の心情」) 。

 これは、心情的には十分理解できます。しかし、前記先輩弁護士の言い方が正しいとは思えません。増員反対をいう若手が、増員の恩恵で合格できたのかどうかを決めつけることはできませんし、しかも、制度の是非について議論しているときに、なれたかなれないで、発言する資格の有無につなげ、そこを矛盾とするのは、およそ弁護士らしからぬ論法のように思います。旧司法試験で受かる合格順位の方だけに発言資格があるとでもいうのでしょうか。

 もし、それを言い出したならば、旧司法試験下で今ほどおカネがかからないで、弁護士になれる環境を享受してきた先輩弁護士が、法科大学院本道主義に旗を振るのはどうか、ということになるかもしれません。法科大学院や貸与制だったら、今頃、弁護士になれていないと語る旧司法試験組はいくらもいます。さらにいえば、合格500人時代の経済的、あるいは弁護士修養での「恩恵」を被ってきたともいえる弁護士が、即独時代の弁護士たちに、需要は掘り起こせばまだまだあるとか、増員基調の「改革」は続けるべきということだって首をかしげる話になります。

 点からプロセスという旧司法試験から新法曹養成の議論でも、一部法科大学院関係者から聞こえてくるような、あたかも旧試験組が「欠陥」制度による「欠陥」法曹であるような言い方だって、新法曹養成で旗を振るならば、法曹自身がそれを自認しなければ、「矛盾」なんてことにもなってしまいかねません。

 いうまでもありませんが、要するに、そういう問題ではないのです。しかし、増員問題での冒頭のようなとらえ方は、一部の先輩弁護士の中にあります。あくまで若手を黙らせるための方便として。もし、これが前記流れている情報のように、この日弁連会長選の中で聞かれたとすれば、その狙いは、さらに明らかというべきかもしれません。いわば、若手の中にある、前記のような、ある意味、必要のない躊躇や、増員反対の声を上げることの後ろめたさの心情を衝いて、投票行動においても黙らせるということになるからです。もちろん、数としての若手への脅威の裏返しとみることもできます。

 これは、実に嘆かわしいことだと思います。もちろん弁護士の中には、こうした躊躇の心情を吐露する後輩の若手に対し、「気持ちは分かるがそれは違う」と肩をたたく先輩がいることも知っています。一弁護士の立場で、この法曹養成を論じていいのは当然です。むしろ、「矛盾」などというのは、選挙対策で、何が何でも彼らを黙らせるために言っているようにすらとれてしまいます。

 これもまた、今の弁護士会の混迷する世論状況を象徴しているというべきかもしれませんが、嫌なものを見たような気持ちになります。

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