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【荻上チキインタビュー 第2回】ネットメディアと政治論議(2) 津田大介×荻上チキ

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■政治の日常化

津田 ぼくは昔からメディアをつくることが好きでした。高校生のときは新聞部で、そのときの経験が今の仕事に大きな影響を与えていると思います。ぼくも含めて部員が二人しかいなかったので、すべてのことを自分たちでやったんですね。企画、取材、執筆、校正、印刷、最後は近くの文房具屋さんに行って広告営業までやりました。まさに「一人メディア」です。

予算も特別部として30万ぐらいあったので、とりあえず15万円で東芝のワープロを買って、生徒会室にこもり、わら半紙に印刷して年数回発行していました。メディアをつくることはすごく好きなんですが、原稿書いて楽しいと思ったことは一度もないんです。
<荻上 えっ、そうなんですか。

津田 常につらい作業ですね。

荻上 ぼくはわりと楽しいですよ。ぼくも小中高とずっと「放送委員」や「放送部」をやってましたが、こうも違うものですか。

津田 それはうらやましいです。本当につらくて。

荻上 ツイートは別なのでしょうか。

津田 140字で済みますし、思ったことを脊髄反射的に書けばいいから気楽ですね。仕事でもないし。仕事でもないというのはポイントで、「仕事としてこれこれこういうツイートして欲しい」という案件が来ると本当にストレスなんですよね(笑)。最近はできるだけそういう仕事は受けないようにしてるんですが。

「ナタリー(natalie)」(ポップカルチャーニュースサイト)をつくったときは、音楽メディアを変えたいという思いが強くありました。音楽がつまらなくなったとみんないうけれど、原因は「音楽」そのものにあるわけではなく、「音楽メディア」が腐っているからだろうという義憤を覚えた。雑誌は記事広告前提で、しかし音楽ジャーナリズムでございますみたいなことをやってるのが大嫌いだったんですね。時代の最先端を、面白く切り取ってこそのメディアですからね。

それと同じように、自分が読みたい政策を、リアルタイムの、ソーシャルメディアの速度感で伝える、いわば「政治版ナタリー」をつくりたいと思っています。

荻上 これからどういうふうなイメージで、日本のメディア環境を良くしていこうと考えていますか。

津田 「政治の日常化」です。高度な政策議論は、それこそシノドスのようなメディアでやればいいと思っていて、ぼくがやるべきことは、多くの人が政策に関心を持てるように、その裾野を広げることだと思っています。

荻上 なるほど。なににおいても、論点そのものをシェアしないと、議論はすすみませんからね。

津田 裾野を広げるという意味でいうと、TPP問題はうってつけのものでした。TPP21分野(24項目)ある中で、項目ごとに、日本が得する分野も損する分野もある。それらが全部わかったうえで、日本はどうグランドデザインを描いていくのか、みんなが議論を必要としていました。

TPP問題に関する世論調査で、「賛成」「反対」以上に「わからない」人が多かったという結果が出ていますが、これは本音を表していると思いました。わからない時点で強行しようとしていたし、メディアもそれを報道しなかった。そうした釈然としないものが多くの国民の中に生み出されていたんですね。「わからない」ということは、つまり、メディアが機能を果たしていないということで、メディアに責任があります。

荻上 ニコニコ動画では、政治ランキングでTPPに関する動画が毎日あがっていたけれど、政策を議論するというよりは、賛成派、反対派の応援合戦に単純化されていくような傾向が目立っていたなという印象はありました。ネットは様々な論点について無限にチェックをはさんでいくことも可能だけれども、同時に集合的行動として特定の情報を集めたカスケードが目立ってしまうこともある。そのカスケード性をコントロールすることはなかなか難しいですよね。

■生煮えの議論を出していく

荻上 今後津田さんが、どこまでメディアに顔を出されていくのかというのは気になるところです。新しい政治メディアを経由した、市民への応答をどのように行っていくのでしょうか。

津田 先日、荻上さんはぼくのメルマガに対してFacebookで反論されていましたね。

荻上 農業のやつですね。あれは反論ってか愚痴。津田マガの農業記事の中で引っかかる発言が多かったからなんだけれど、あれをベースに議論しても発展させられると思えなかったので、表向きはスルーしました。

津田 でも、たとえばそこで、「これ違うでしょ」と噛み付いてくれる人が出てくれば、では場所をかえて、それこそニコ生で対談しましょうというようにつなげていけるのがオンラインメディアのいいところだと思っています。

ぼくはメディアをつくるときに編集機能が一番の核になると考えています。生煮えの状態でもいいからとりあえず世に出して、そこから議論を深めることにつなげる。そこにマネタイズのポイントが隠れているような気がするんですね。シノドスだったらセミナーをやってるし、アフィリエイトや動画配信もいいかもしれない。いろんなヒントがそこにあります。

だからまずはその間口を広げることをやりたい。ぼく自身はあまり主張がないので、基本的には敵がいないんです。どのテーマでも。

荻上 とはいえ、テーマやスタンス的に許せないというのは絶対あるでしょう。たしかフジテレビデモのときに、違和感含みのツイートされていたと思いますが、津田さんは、外国人などへの差別発言が起こることに対しての危機意識を生理的に感じることもあるわけですよね。

津田 もちろんそれはあります。

荻上 それも、そうした違和感表明に対して安直に「津田終わったな」みたいなリプライを送る人が多数現れることの「面倒くささ」「うんざり感」「しんどさ」が容易に想像出来る中で、それでもいうべきことはいっておかなきゃ、というほどには強く感じていると思っています。これはやばいなと思ったときには、それを中和するようなものに話を聞きに行くというバランス感覚を持って、これからも議論をしていかれるでしょう。

津田 そうですね。そこらへんはこれから考えていかなければならないところですね。

荻上 生煮えの状況で出せば出すほど、カオスな喧騒に呆れた学者が離れていくということも起こりえて、プロレス上手なやつは勝ち残るというような、論争術で政策が決められていくことを強化してしまわないかなという懸念がありますが、その点についてはどうでしょう。

津田 それをしないためにぼくがひとつ決めているのは、すべてをテキスト化することです。基本的にはすべて編集構成されたテキストで、その中身に対して、ネットユーザーがレスポンスできるというかたちでやりたい。

荻上 なるほど。政府の透明化と言った場合、動画での実況を進める動きもありますが、数時間かかる動画をぜんぶ見てくれる人は稀。テキストにすることで、リーチ率もあがるし、検索性もあがる。議論ための敷居も下がる。そのことが翻ってデマにつながりやすいような、「部分的抜粋」への検証元にもなりうるし、恣意的な論述へのチェック機能としても働きうるだろうと。

となると、津田さんがそういう課題点をあらかじめ懸念しているという点でも、津田さんのメディアならではの「色」というか「特色」が出てくると思うんですよ。だからぼくが楽しみにしているのは、「政治メディア」を立ち上げる際の、津田さんによる「巻頭言」や「リリーステキスト」ですね。こういうスタンスでいるのだという、明確な。

津田 明確にあるのかな(笑)。頑張って準備します(笑)。

■新しいメディアに向けての「ポジだし」

荻上 細かな話ですが、民主党が与党になった頃、「2ちゃんねる」のまとめサイトがなんだか政治化していったなあという印象があります。アクセス数が増えるとわかったからなのかもしれないけれど、それまで政治ネタをとりあげなかったようなネタサイトも、「ルーピー」を哂うようなものから嫌韓的なものまで、ガンガン取り上げるようになったように。

今や、2ちゃんのまとめサイトも実は政治メディアとして機能しているんですね。すごくくだらない編集であっても、見出しで数万人を釣ったりするようなものでも、特定の人たちに対するヘイトスピーチや、刹那的なヤジの発露になっていたりする。

津田 その結果としてフジテレビ抗議デモがありますからね。

荻上 また、「スイミー」のように小さな者たちによる集合が大きな権力に対して対抗していくという方向にではなく、普通の個人を含めた相手への私刑に活用される常勝自慢的な場面が多く、あるいはデマを拡大再生産して訂正すらしなかったりと、多くの問題含みな現状がある。

津田 本当にプアーですよね。

荻上 「ステマ」問題のように、アテンション獲得の仕方も健全とはいいがたいものがある。ただ、これらをもって、「日本のネットは残念」と全体化できるわけでもなく、ソーシャルメディアの普及によって、その他の社会運動の敷居も下がったなとも思うんですね。

津田 そうですね。震災後、とくに強く感じますね。

荻上 そういう状況の中で、メディアをどうつくりなおしていけるのか。「ダメだし」だけでなく、「ポジだし」、ようは「自分ならこうするぜ」というモデルの競争がまだまだ足りないと思うんですね。いきなり完璧なものは生まれないので、課題を応えようとしながら切磋琢磨していかざるをえませんから。津田さんによる身を切った「ポジだし」には、仮に批判的なスタンスであっても、「アレはダメだよ」といった嘲笑にとどまらない、「こっちのほうがいいだろ?」という提案でレスポンスを返していく。そうした応酬を盛り上げていかなくてはと思わせられる。

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