記事
  • 連合

「最低賃金」 働く者の生活を底支えし、 公正競争を促して経済の好循環へ

2/2

2 法定最賃決定の流れ─労働組合の果たす役割は大きい

春季生活闘争の賃上げ率や企業内最賃協定の適用労働者数・金額が大きく影響

最賃はどこでどう決まるのか。地域別最賃も特定最賃も、実質的な決定が行われるのは、最低賃金審議会。公益、労働者側、使用者側の三者同数の委員構成だ。

地域別最賃は、中央最低賃金審議会(以下、「中賃」)が「金額改定の目安(以下、「目安」)」を提示し、47地方最低賃金審議会(以下、「地賃審議会」)それぞれで改定金額を決めるという2段階審議だ(図4)。中賃は、厚生労働大臣による諮問で目安審議をスタート。47都道府県はA〜Dのいずれかのランクに区分されており、ランクごとに目安をとりまとめ、厚生労働大臣に答申する。この目安を踏まえ地賃審議会が調査審議を行い、改定金額をとりまとめ、各地方労働局長が決定する。


改定金額を決めるにあたっては、地域の労働者の①生計費、②賃金の上昇率、③通常の事業の支払能力の3要素を考慮しなければならない。例えば、春季生活闘争の賃上げ率そのものに加え、労働組合がないような小規模事業所(従業員30人未満)の賃金引き上げ率なども重視される。これらに時々の事情を総合的に勘案して地域別最賃額が決められる。

なお、A〜Dのランク区分については、中賃「目安制度の在り方に関する全員協議会(目安全協)」で5年ごとに見直しが行われている。

特定最賃は、地賃審議会で、金額改定の必要性審議と具体的な引き上げ額を決める金額審議の2段階で審議される(図5)。審議のスタートは、労使いずれかからの申出だ。申出には、適用労働者数の相当数をカバーする企業内最賃協定や、金額改定の必要性を求める署名などの提出が求められる。申出を受けた地賃審議会は、関係労使からのヒアリングなどを行いながら、必要性審議を行う。この段階で、「必要性あり」と全会一致で合意できれば、金額審議に移行できる。この全会一致というのがくせものだ。特定最賃が必要だと主張する労働者側と、不要だと主張する使用者側の溝が埋まらず、必要性審議をクリアできないケースも珍しくない。


金額審議に移行できれば、その産業の現場実態をよく知っている、当該産業の労使が中心となって調査審議し、金額をとりまとめ、各地方労働局長が決定する。この際、申出に添付された企業内最賃協定の金額も参考とされる。なお、金額審議では、全会一致の合意までは求められていない。

地域別最賃も特定最賃も、各段階で意見書や異議申立など、外部から意見を聞く機会も保障されている。また、決定した金額を周知するため、官報公示を経て効力が発効する。

3 地域別最賃引き上げの必要性は政労使で合意済み

かつてに比べ地域別最賃の大幅な引き上げが続いている。2‌00

7年の最賃法改正以降、地域別最賃が生活保護を下回る逆転現象の解消を促進した影響もあるが、そもそも、なぜ最賃法は2007年に改正されたのか。それは、非正規労働者の増加に伴って拡大した賃金格差を許容できなくなったからだ。格差拡大が超少子高齢化の一因ともなり、深刻な社会問題となる中、セーフティネットとしての機能を充実させねばと、最賃引き上げを求める声が高まったのだ。このような声は政労使合意や政府のいわゆる骨太方針などにも反映されている(図6)。

引き上げのトレンドは続いているが、課題もある。地域別最賃については、その金額水準の低さと地域間格差だ。現在の地域別最賃は、安心して生活できる金額には依然として届いていない。さらに、最低額は最高額に比べ76・9%、額にして221円の差だ。地域別最賃の低い地域から高い地域への働き手流出の一因にもなっている。特定最賃については、その存続が危ぶまれる状況だ。地域別最賃との金額水準差が縮小する中で、一部地域では必要性審議が難航し、金額審議に移行できないケースも見受けられる。

2014年度には地域別最賃と生活保護費との逆転現象は、一応解消された。働きに見合う金額水準をめざすステージに入った今、地域別最賃の金額水準引き上げと格差是正をどう両立させていくのか。特定最賃をどう存続させ、金額水準をどう引き上げていくのか。労働組合の果たす役割が大きいぶん、その責任は重い。


※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合7月号」の記事をWEB用に再編集したものです。

あわせて読みたい

「最低賃金」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    米議事堂襲撃 副大統領は間一髪

    WEDGE Infinity

  2. 2

    五輪判断 どう転んでも政府苦境

    内藤忍

  3. 3

    トランプ氏罷免せず 判断を評価

    猪野 亨

  4. 4

    官邸崩壊の足音 秘書官もう交代

    NEWSポストセブン

  5. 5

    スピルバーグ氏に見る残酷な一面

    Dain

  6. 6

    「病床に余力」医師提言に課題も

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    総額6.7兆円 不良債権回収の苦難

    BLOGOS編集部PR企画

  8. 8

    感染拡大の深刻さを認めぬ菅首相

    おくの総一郎

  9. 9

    母がマルチ商法に心酔 娘の悲劇

    PRESIDENT Online

  10. 10

    au批判の武田大臣 表現が不適切

    S-MAX

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。