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「TBSは死んだ」再び。映像の押収を長い間公表せず

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「TBSビデオテープ押収事件」と呼ばれる有名な事件がそれだ。

1990年3月20日、TBSのバラエティー番組『ギミア・ぶれいく』が「潜入ヤクザ24時―巨大組織の舞台裏」というタイトルで暴力団に密着したドキュメンタリーを放送した。その中で暴力団組長による債権取立ての映像が問題になり、警視庁は当該組長を逮捕。同年5月16日に関連ビデオテープ29巻をTBS本社内で差し押さえた。

 TBSはこれに対して、「取材の自由」の侵害だとして差し押さえ処分の取り消しを求めているが最終的には最高裁で退けられている。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/393/050393_hanrei.pdf

 放送局が撮影したビデオテープが押収されたり、裁判に使われたりすると、なぜ「取材の自由」の侵害になる、として放送局が反対するのか。それは、そういう前例が広く行われてしまうと、放送局が何らかの撮影行為をする際に、「この映像は裁判に使われてしまうかもしれない」として、取材や撮影を拒否する人が出てしまうというのが放送局が長年主張してきた理屈だ、報道機関としての放送局と取材される一般の人々との信頼関係が失われてしまいかねない、というのである。

だからこそ、TBSもこの「潜入ヤクザ24時」の時には、警察による押収に反対し、異を唱えた。ヤクザといえども、当事者との信頼関係があってこそ撮影できるものがある。それは警察であっても押収すべきではない、という主張だった。

ビデオテープの押収をめぐって、「取材の自由」の侵害だと最高裁まで争ったTBS。

 ところが、「警察24時」になると、一転して警察による押収があったことさえ明かすことなく、反対もしていない。

 ビデオテープの押収は「取材の自由」にかかわる大問題であるのに、その事実を隠していたのだ。

 TBSという会社の一貫性のなさ。いったいどうしたことか。

 取材した映像が事前に権力機関によって押収されたりすればテレビ報道をめぐる大問題になることはテレビ報道人の常識である。そうであることを知りながら、放送もされず事実さえも明らかにしなかった姿勢には違和感を禁じ得ない。いったい誰の側に立って仕事をしているのか。

 今回のケースでえいば、TBSが事実を明らかにしなかったことは、警察という組織を利しただけで、遺族の側にとっては不利な形に働いたと思われる。

 スクープした毎日新聞によると、遺族はTBSの姿勢に怒りをあらわにしているという。

遺族側が問題視しているのは、この映像が放送されなかったことだ。男性の父親(80)は取材にこう訴える。「息子が命を奪われた現場に、テレビのスタッフがいたと知って驚いた。警察官が人を死なせてしまったのに、なぜその映像を報道しないのか。報道で真相を明らかにしてほしかった」

 遺族の代理人弁護士は「警官の制圧と死亡の因果関係や、結果を回避できたかどうかを判断する上で、映像は大きな支えになる」と言う。
出典:毎日新聞 ウェブ版

 命を落とした民間人の遺族よりも警察に配慮したとしか思えないTBSのふるまい。TBSには本当に報道機関としての使命感はどこまであるのだろうか。そのことを問わずにはいられない。

 「警察24時」という番組ジャンルは、TBSに限らず、民放ならば各キー局に存在しているが、もしも警察にとって「不都合な真実」を撮影してしまった時にはどうするのか。警察への遠慮や忖度は、視聴者の目からみれば警察との癒着として映ることになるだろう。そうした事態をきちんとシミュレーションしておかないと、今回のTBSのような失態がまた起きてしまう。日頃、どんなにご立派なことを主張していても、こうした出来事で「局の姿勢」が見透かされてしまう時代に入っている。

 視聴者の信頼を失うことに時間はかからない。

TBSはいつまで「死んだ」ままになっているのだろうか。

 今回の新聞スクープは、TBSに報道機関としての自覚がないことを物語っている。

 ただひとつ救いがあるとすれば、このスクープが同じメディアグループの毎日新聞によってもたらされたということだ。

 毎日新聞は自社家列のTBSの不祥事であっても、遠慮せずに堂々と記事を載せた。

 毎日新聞の姿勢には拍手を送りたい、

 そのことは日本のジャーナリズムがまだ捨てたものではないことをほんのわずかだが示している。

 今回、私も何人かのTBSの報道局の中堅幹部にこうした問題が伏せられたままだったらどう思うか聞いてみた。

 「それが事実であるならTBSは徹底的に叩かれるべきだ」

 苦々しい表情を浮かべながら、みな口を揃えた。

 もちろん、彼らの頭には以前のオウム事件の際のビデオテープ問題の苦い思い出もある。

 新たに出てきたTBSの「ビデオテープ問題」。

 TBSはどう検証するのだろうか。

 「TBSは死んだ」

 かつて筑紫哲也が口にした言葉の重みを、関係者はよくよくかみしめてほしい。

※Yahoo!ニュースからの転載

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