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VCファームのアンドリーセン・ホロウィッツ、15億ドルの資金調達に成功―ホロウィッツ氏が述懐録とともに発表

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シリコンバレーのVCファーム、Andreessen Horowitzが、追加で15億ドルの資金調達を実施かと、先週ニューヨークタイムズ紙が報じていたが、早くも目標金額の15億ドルを調達し終えた。同VCファームの共同設立者ホロウィッツ氏が、自身のブログで本日発表した

15億ドルの追加資金調達については、先週、本サイトでも『マーク・アンドリーセン氏、15億ドルの資金調達を計画か』で紹介していた。15億ドルの資金を追加したことにより、同VCファームは、総額27億ドルの資金を運用・管理することになる。

VCファームAndreessen Horowitzの共同設立者、ホロウィッツ氏は、『なぜAndreessen Horowitzは3年で27億ドルの資金調達ができたか?』と題し、自身のブログで今回の資金調達が終了したことを発表しているが、その中で、以下の2つの質問についても回答している:

1.なぜAndreessen Horowitzのような若いVCファームがこれほど多額の資金を調達できたのか?

2.どのようにAndreessen Horowitzのような若いVCファームがこれほど多額の資金を調達したのか?

これら質問に回答するためには、そもそもなぜAndreessen Horowitzを設立しようと思ったのか、そのきっかけについて語る必要があるという。以下では、本日発表されたホロウィッツ氏のいわば述懐録と、Andreessen Horowitzの成功の秘訣について紹介しよう。

◆ ◆ ◆

1999年、当時立ち上げたLoudcloudへの第1ラウンドの資金を調達し終えた後、ホロウィッツ氏らは彼らに新たに出資してくれたVCファームのメンバー全員に面会するため彼らのオフィスを訪れた。LoudcloudのCEOに就任していたホロウィッツ氏は、資金提供してくれたVCに会うことに興奮しており、優れた企業へ育て上げるためにいかにパートナーシップ関係を築いていくかについて議論することを楽しみにしていた。しかしその気持ちはすぐに打ち砕かれたという。そのVCファームのトップのパートナーの一人が、ホロウィッツ氏の同僚(共同設立者)たちの前で、「それで、本物のCEOはいつ採用する予定なんだ?」と聞いてきたという。

出鼻をくじかれたホロウィッツ氏の衝撃は想像に難くない。しかも、このVCファームは、最大の出資者であったという。そのトップのパートナーから、ベンチャー企業を共に設立した仲間たちの目の前で自分はニセモノ(fake)のCEOだと言われたも同然の質問であった。この質問に対し、ホロウィッツ氏は「どういう意味ですか?」と聞き返し、それに返ってきた言葉はさらにプライドを傷つけるものだったという。このVCファームのパートナーの返事は、

「大組織を設計した経験があるような人物で、偉大なシニア・エグゼクティブを知り合いに持ち、既に築かれた顧客との関係を(この会社に)もたらしてくれるような人物で、何をやるべきか分かっている人物」というものだった。

この返事を聞いたとき、ホロウィッツ氏は息もできないほどだったという。同僚の眼前で侮辱されただけではなく、実際、言われた通り、自分にはCEOとしてのそうした経験やスキルが足りないということを自分でも分かっていたからだと記している。自分は「創業者CEO(founding CEO)ではあるが、プロのCEO(professional CEO)ではない」と。

その後、何か月もの間、「自分はCEO職について短期間で学び人脈を構築することができるのか?それともこの会社を失ってしまうことになるのか?」という質問に悩まされたという。

実際、その後何年もCEOとしてとどまり、最初に言われた「プロのCEO」と当時の自分のギャップを埋めるため、必死で働いた。しかし、1日として、この日VCファームのパートナーから言われたことを忘れた日はないという。マーク・アンドリーセン氏とも、このことについてはよく議論したという。なぜ創設者でありながら、自分たちは自ら設立した会社の経営を行っていくことができないかもしれないと投資家は疑念を抱くのか、そしてなぜその疑念を払拭して自らを証明しなければいけないのか?そして、投資家たちはなぜ創設者である自分たちが自ら作り上げた会社を経営できると考えてくれないのか?ということについて考えを巡らせた。こうした会話がきっかけとなり、3年前、VCファームのAndreessen Horowitzが生まれたという。

そして、Andreessen Horowitzの基礎となる、アンドリーセン氏とホロウィッツ氏が共有して抱く信念が生まれた:

「一般的に、創業者CEO(founding CEO)のほうが、プロのCEO(professional CEO)よりも長期的な観点で見るとより優れた実績を残す。そして、創業者CEOを成功に導くVCファームは、最高の企業を築くのを支援し、優れた投資リターンを生み出す」。

創業者が自ら興した会社を経営できるように支援できるVCファーム、それを設計していく中で、「プロのCEOは創業者CEOに比べて何が優れているのか?」という質問を抱くようになる。そしてプロのCEOの中核となる優位性には以下の2点があるという考えに至る:

● 卓越したスキル:CEOを務めるということは、膨大なノウハウを必要とする。そうしたノウハウは、実際にCEOとして十分に経験することなく体得するのが非常に困難である。CEOとしての経験がない創業者は、当然、「OJT(オン・ザ・ジョブ)」のトレーニング期間中に多くの重大な過ちを犯す。優れたプロのCEOは、既にそうした必要なスキルを持っている。

● 卓越した人脈:優れたプロのCEOは、突出した才能を持つエグゼクティブや社員の多くを知っている。そうしたエグゼクティブや社員はまた、鍵となるレポーターやアナリスト、重要な潜在顧客、そして業界内におけるトップ・プレーヤーを知っている。創業者は、こうした人々を知るほど十分な業界経験を積んでいない場合が多く、人脈についてほぼゼロから築く必要がある。

それでは、VCファームはこうしたギャップを埋めるためにどうすればいいのだろうか?

スキルを身に着けさせるのは非常に困難なことであるということが証明されている。というのも、CEOになる方法を学ぶには、実際にCEOを経験してみるしか方法がないからである。教室で教えられるスキルはあるかもしれないが、たとえ優れた選手にアメフトの仕方を習ってみても、実際フィールドに出れば一瞬にして敵にやられてしまう。

しかし、ホロウィッツ氏らは、創業者に対してCEOに必要なスキルをすべて教えることはできないが、学習プロセスを早めるためのある種のメンターシップは提供することができるという考えるに至った。この結果、出資先のベンチャー企業へゼネラル・パートナーを送り込む際、創業者が優れたCEOになることを支援できる効果的なメンターになること、というのが最初の必要条件となった。これが理由となり、Andreessen Horowitzがベンチャー企業へ送り込むゼネラル・パートナーの多くは、元創業者かCEO、もしくはその両方の経験がある人物となっている。

もちろん、全ての創業者がCEOになりたいと思っているわけではないため、Andreessen Horowitzは、そうした企業へは適したプロのCEOを選定するための支援を提供するこことにしているという。

次に人脈について、ホロウィッツ氏らがビジネスを共にした既存のベンチャー・キャピタリストたちは、重要な業界内の人脈を持ってはいたが、次の点において欠落していたという:

● 縦割り: 起業家として、自社の役員メンバーであるゼネラル・パートナーたちへは、顧客や他社エグゼクティブへ紹介してくれる橋渡し役として頼りにすることはできるが、VCファーム自体にそれを期待することはできない。各ゼネラル・パートナーは、それぞれ独立した人脈網を持っているが、パートナーたちが持つその他の人脈へアクセスするというのは現実的ではない。その理由は、こうしたパートナーたちは自身が携わる複数の企業を優先順位づけしており(ポートフォリオ企業の一社にすぎない会社の創業者には)そのパートナーが抱える企業群を知ることは決してなく、そのためそこから助けを期待することもできないからである。つまり、ポートフォリオ企業が利用できる、VCファーム全体にまたがった人脈網というのは存在しない。

● アクセスの難しさ:CEOにとって、自社に出資しているVCに対して「潜在顧客のいくつかに紹介してほしい」と尋ねるのは常に多少奇妙なことである。まず、VCというのは多くの業務を抱え忙しくしている人々であるため、そうしたお願いは不都合なことに見える。次に、実際に紹介するというのは決して簡単なプロセスではない。紹介したことでどうなるのか?VCはミーティングをセッティングするのか?紹介されたことで潜在顧客に会うために飛行機で現地まで行くことになるのか?VCは付き添いをするのか?潜在顧客はわざわざ会うのに十分条件を満たしているか?もしそうでなければ、面会を依頼する意味があるか?さらにやっかいなのが、顧客に面会するというのが1度限りではないということである。出資元のVCに、2度、3度、そして10回も依頼するにはどうすればいいだろうか?そしてどの時点になると、VCは、このCEOが自力で顧客(もしくは流通業者、サプライヤー、投資家、もしくは買収先)を見つけ出すことができない無能な人物と考えるようになるだろうか?

● 不完全性: 最後に、VCが持つ人脈は、不完全である傾向にある。特定のゼネラル・パートナーは、テレコム通信事業者といった特定の種類の顧客を知っているだろうが、製薬会社や政府機関といったその他の種類の顧客については知らないだろう。顧客との人脈があったとしても、鍵となる人物と深いつながりはないかもしれない。雇いたいと考えているエグゼクティブとは面識がないかもしれない。逆にエグゼクティブと面識があっても、エンジニアとはつながりがないかもしれない。創業者CEOは、忙しいのが常であり、一つの人脈をたどってみて結果が得られなければ、おそらくその人脈を頼ることは二度とないだろう。

こうした問題に対応すべく、Andreessen Horowitzでは、抱えてる人脈網を、ファーム全体を横断したものにし、アクセスを極力簡素化し、そして網羅的なものになるようデザインしている。これは、オペレーティング・パートナーのサポートを受けて実施しており、彼らがフルタイムで各枝分かれした人脈を管理、開発している。

こうしたアプローチの結果、以下のような成果を出している:

● 2011年、Andreessen Horowitzは法人客およびパートナーに対して、メンロ・パークにある自社オフィスで600件以上のポートフォリオ企業のプレゼンテーションを主催。これらプレゼンテーションの結果、ポートフォリオ企業とフォーチュン500/グローバル2000のシニア・エグゼクティブたちとの間で、3,000件以上の紹介につながっている。

● Andreessen Horowitzは、4,000人以上のエンジニア、デザイナー、プロダクト・マネジャーたちとの人脈を構築しており、自社ポートフォリオ企業に対して1,300名以上の紹介を行っている。この結果、ポートフォリオ企業は130名を採用している。

● Andreessen Horowitzは、2011年、550名以上のエグゼクティブを人脈に追加しており、300名以上のエグゼクティブを自社ポートフォリオ企業へ紹介している。

● 自社ポートフォリオ企業に代わって、メディアと400件近いインタラクションを行っている。

こうした活動を通して、創業者たちが重要なCEOスキルを身に付けることを支援できており、そのため、Andreessen Horowitzは創業者たちの間で評判の高いVCファームとなっているとホロウィッツ氏は言う。

起業家たちの間での評判のおかげで、Andreessen Horowitzは優れたテクノロジー企業を興す優れた起業家たちへと投資することが可能となっていると言う。まさに、正の連鎖が起きているということなのだろう。また、起業家たちからのニーズというのは、あらゆる規模、そしてあらゆるステージにある企業からあるという。その例として、シード・ステージの企業としてはCumulus NetworksのJR Rivers氏、そして成長著しいAirbnbのBrian Chesky氏などの名前をホロウィッツ氏は挙げている。

そして、こうしたことが、設立して3年というAndreessen Horowitzが27億ドルの資金の調達に成功した理由であり、やり方であると締めくくっている。

Image credit: Andreessen Horowitz

Source: Why Has Andreessen Horowitz Raised $2.7B in 3 Years?

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