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資産があるから大丈夫?

 「国の借金が膨大で大変だ。」という話をすると、必ず「資産があるから大丈夫。」というお返事を頂くことがあります。たしかに国が持っている資産を総計すると672.7兆円になります。究極、これらを売却すれば赤字国債・建設国債の返済に充てられるではないか、という考え方です。

 国の持っている資産で大きいのは、有価証券(119.9兆円)、貸付金(115.5兆円)、運用寄託金(109.1兆円)、有形固定資産(181.5兆円)、出資金(72.5兆円)くらいです(数字はいずれも平成28年度末)。

 有価証券の大半は、為替介入の時に入手した外貨証券です。これは政府短期証券の発行によって行っているので、資産の裏に負債がくっ付いています。「為替が円安に振れたら円換算で増えるので財源になるではないか。」という議論をする方が居ます。私はこんなものを埋蔵金扱いするのは間違っていると思いますが、いずれにせよ、既に2017年度一般会計予算の財源で使ってしまっています。私は当時何度か「こんなものを取り崩していいのか。」と財務省に聞いたのですが、あまり火が点きませんでした。段々世の中の感性が麻痺して来ているのかもしれません。

 貸付金の大半は財政投融資です。財源は財投債(公債)です。資産と見合いの負債がしっかりとあります。運用寄託金は年金の積立金でして、国民の皆様から預かったお金であり、将来、年金としてお支払いすべきものです。

 有形固定資産とは、道路・堤防等の公共用財産とか国有財産(庁舎、空港、防衛施設)です。一部、空港のようにコンセッションで利益を生むものもありますが、大半は収益を生むわけではありません。当然、買い手はおらず、売却の対象とはなりません。

 出資金は、その大部分が独立行政法人、国立大学法人、国際機関等に対するものですので、市場で売買される対象ではありません。

 こうやって見ていくと、建設国債・赤字国債の償還に充てる事が出来るようなものが殆どないのです。しかも、これだけ資産を持っているにもかかわらず、国の負債が1221.6兆円ですから、資産・負債差額はマイナス548.9兆円です。この差額は、負債の見合いとなる財源、資産が一切存在しません。そして、この差額が平成21年度末では372兆円でしたので、この間、どんどん増えて行っています(勿論、GDP比で世界最悪レベルです。)。

 上記の議論と似たものとして、「日本は対外純資産が多い」という事を強調する議論があります。ただ、これはよく考えなおしてみると、「日本国内の投資機会が少ない」という国内経済の低調とリンクしがちである事は忘れてはなりません。日本が海外に投資しているのに比して、外国が日本にどんどん投資してくれていない事の証左です。私は「対外純資産が多いって、そこまで得意気に語っていいのかな。」といつも首を傾げています。

 そして、民間セクターが保有している対外純資産を徳政令のように公的目的に拠出させる事が出来るわけではありません。しかも、政府の持っている外貨証券は負債として政府短期証券が後ろにくっついています。

 これらを纏めると「政府の借金が多くても、資産があるから大丈夫。」という議論にはならないはずですね。ただ、話に夢が少ないので一般的にウケないです。かつて、こういう話をした結果、ある国会議員から「財務省の犬」とまで言われた事もあります。

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