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外務省OB「佐藤優」と財務省OB「山口真由」が語る官僚の生態

 外務省と財務省のOBだから語れるーー官僚は劣化したのか? 佐藤優と山口真由が「官僚の生態」を明かす!

ーー相次ぐ不祥事で官僚の権威が失墜している。佐藤氏が、その最大の “功労者” と名指しするのが、セクハラ発言で辞任した福田淳一前財務事務次官だ。

佐藤「手、縛っていい?」とか「おっぱい触っていい?」 とか、こんなハレンチな発言が全国紙の一面に出たのは、たぶん、明治以来、初めてのことです。

 福田さんは新たな歴史を作ったわけですよ。しかも、これで佐川(宣寿前国税庁長官)さんの文書改竄問題が、吹き飛んでしまった。結局、安倍(晋三)総理は9月の総裁選で三選されるでしょう。安倍さんは内心、「福田さん、よくやってくれた」と思っているんじゃないですか。

山口「財務省、でかした」って?(笑) たしかにハレンチ発言は、インパクトが大きいしわかりやすいから、メディアも飛びついたんでしょうけど、結局は福田さん個人の話じゃないですか。文書改竄は組織の話ですから、財務省にとっては、そっちのほうが影響が大きいと思います。

佐藤 福田さんや佐川さんと仕事したことはありますか?

山口 直接の上下関係はありませんが、佐川さんは主税局で一緒でした。

佐藤 どんな人ですか?

山口 佐川さんは、怖い上司として知られていましたね。たぶん、福田さんとは全然違うと思いますよ。

佐藤 福田さんは「省エネ型」の官僚だと思うんです。財務省によくいるタイプ。とくにやりたい政策がないのに上昇志向だけはある。そして政治家と絶対に喧嘩しない。これが「省エネ型」です。

ーー「官僚の中の官僚」といわれる財務官僚。そのトップに君臨した福田氏の人間像は、官僚の生態を知るうえで参考になるという。

佐藤 バカな部下がいても、福田さんは「いいよ、いいよ」ってべつに指導もしない。で、できる奴だけに仕事を与える。

山口 佐川さん型と福田さん型があるとすると、部下にガーッと指示する佐川さん型の上司が多かったですけどね。

佐藤 その意味では、福田さんは例外かもしれない。彼のような官僚が生き残るのは、政治がガタガタするときです。そういう官僚は政治に過剰に関与しないから傷も負わない。

山口 ああ、なるほど。

佐藤 福田さんの腹の中は、こんな感じだと思うんですよ。財務官僚のうんこから厚労官僚が生まれ、厚労官僚のうんこから防衛官僚が生まれ、防衛官僚のうんこから政治家が生まれるぐらいに思っている。
 そんな政治家なんか相手にする必要はないと。だから、逆にへらへらして、政治家に何を言われても平気なんです。

山口 ふふっ。財務官僚にはプライドの高い人が多いのは確かだと思います。

佐藤 外務省は逆で、政治家にすり寄る。外務事務次官から駐米大使になった杉山晋輔氏なんかその典型で、徹底的にゴマをすり、政治にすり寄って生きてきた人物です。

山口 財務省では政治家をランクづけしていますね。「話を聞く価値がある」政治家と、税調の小委員会に出てくるくらいの政治家を明確に区別しています。

山口 内閣人事局の発足も一端となって、官僚と政治家の関係は変わったと、よくいわれますよね。

ーー安倍政権が2014年5月に発足させたのが内閣人事局だ。省庁幹部の人事権を首相官邸に集中させたことが、官僚の政治家への過剰な「忖度」を生んだ元凶ともいわれる。

佐藤 昔から審議官以上の人事は政治の了承がないと動かせなかった。ただ、今の官邸は、課長レベルの人事にまで手を突っ込んでくる。

山口 内閣人事局が出来てから「下手なことで無駄死にはしたくない」という意識が、官僚に芽生えたのかもしれません。それが、今回の文書改竄問題の背景にあるのかも。

佐藤 あれは財務省全体の「仕事」でしょ。

山口 改竄した人たちは、個人のためでなく、「省のため」にやったんだと思います。

佐藤 ある外務省OBと会ったら「佐川さんのような事件があったら、外務省なら必ず誰かがマスコミにチクる。財務省は組織の統制が取れている。たいしたもんだ」と妙に感心していましたよ。

山口 国会答弁に誤りがないということは財務省にとってはすごく大事なことなんです。

佐藤 外務省にも、その種の問題はあります。ただし、外務省は文書の改竄はしない。間違えてシュレッダーにかけたことにする。「人間には過ちがあります」。これで逃げきる。あるいは、本当にシュレッダーにかけてしまいます。

ーー官僚への登竜門が国家公務員総合職(I種)試験だが、最近、受験者数は減っている。学生にとって官僚の仕事は魅力を失っているのか。

佐藤 お金の好きな東大生が増えたからですよ。

山口 官僚は給与面でそれほど恵まれていません。待遇面の不満もあるでしょうけど、東大法学部の学生はすごく「流行り」に弱いんです。
 私のときは、みんな司法試験を受けましたけど、いまは外資系コンサルが人気。みんなが行きたがるところに行く傾向はあると思います。

ーー対談の締めくくりにあらためて2人に聞いた。不祥事の続発は官僚の劣化を示しているのだろうか。

山口 官僚は優秀です。今は霞が関でしか通用しないローカル・ルールが外の世界にさらされ、組織が動揺しているんだと思います。財務省は家族型組織。私のミスを1年先輩が怒られるみたいなところがあった。でも、日本的な家族型組織の限界かもしれません。

佐藤 日本全体を飛行機にたとえれば、官僚は操縦席にいる。操縦席だけが劣化しているなんてありえません。だって、官僚よりもっと劣化してる奴らがいるじゃないですか。

ーーそれは政治家か? 2人とも否定はしなかった。

さとうまさる
1960年1月18日生まれ 東京都出身 埼玉県立浦和高校卒、同志社大学大学院神学研究科修了。1985年外務省入省。作家。元外務省主任分析官

やまぐちまゆ
1983年7月6日生まれ 北海道出身 国立筑波大学附属高校卒、東京大学法学部卒。2006年財務省入省。ハーバード・ロースクールを卒業。弁護士。最新の著作は『合格習慣55』

(週刊FLASH 2018年6月19日号)

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