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焦点:貿易戦争より「手強い脅威」、中国で米企業が直面

Adam Jourdan

[上海 27日 ロイター] - 米中両国が全面的な貿易戦争へと向かう中、中国で販売されている米国ブランドは、より手ごわい脅威に直面しているのかもしれない──。それは政府の後押しを受け、革新的製品で武装したチャイナブランドだ。

アップル<AAPL.O>やスターバックス<SBUX.O>、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)<PG.N>の「パンパース」といった人気ブランドが市場で享受してきた支配的地位が脅かされており、数千億ドルを稼ぐ米国企業の中国ビジネスに長い影を落としている。

中国の清涼飲料やシャンプーといった総額6390億元(約10.6兆円)規模の日用品市場では昨年、中国ブランドが約75%のシェアを獲得。2013年の約67%からさらに数字を伸ばしたと、ベイン・アンド・カンパニーとカンター・ワールドパネルが中国都市部の4万世帯を対象に行った調査に基づく分析は示している。

パンパースやコルゲート<CL.N>の歯磨き粉、ミード・ジョンソンの粉ミルクなどアメリカ製品の市場シェアは、過去5年間で約10ポイント低下。その一方で、人気のノンシリコンシャンプーを販売する滋源や、地元原料にこだわったスキンケア商品を製造する百雀羚といった中国ブランドは急速にシェアを伸ばしているという。

「地元での競争は、外資にとって極めて重要な課題だ」と、同調査を共同で行ったコンサルタント会社ベイン・アンド・カンパニーのパートナーで、香港に拠点を置くブルーノ・ラネス氏は言う。「中国で成功するには、いまや従来の企業だけでなく、これまで思っていた以上に行動が早く、革新的な地元企業に勝たなくてはならない」

米国ブランドは長い間、中国でもてはやされてきた。米国のファストフードや飲料、コーヒーチェーンは都市部の至るところにあり、消費者はアメリカの粉ミルクやジーンズ、車やスマートフォン(スマホ)を好んで受け入れてきた。

しかし、そうした市場優位性は、特定分野で勝てる企業を生み出し、競争力の無い企業を排除して質を向上させることで、国内ブランドを育成しようとする中国の取り組みによって脅かされている。

高まる貿易摩擦によって、さらに状況が悪化する可能性があり、1800億ドル(約20兆円)を上回る米国企業の中国での収益を脅かしかねない。これは直近の会計年度で中国売上高を公表している米国上場企業121社の分析に基づく数字だ。

中国で積極的にビジネスを展開しているスターバックスやマクドナルド<MCD.N>、ウォルマート<WMT.N>など、現地売上高を公開していない米企業の数字を加えれば、数字ははるかに大きくなるだろう。

アップルの中国売上高は昨年度448億ドル、P&Gは約52億ドル、スポーツ用品大手ナイキ<NKE.N>は42億ドルだった。

貿易不均衡や技術移転、また中国で企業が直面する障壁など、北京やワシントンで行われた米中通商協議が物別れに終わった今、貿易戦争の勃発が現実味を増している。

<ゼロ成長>

だが、より大きな脅威は、中国ライバル企業の追撃かもしれない。

調査会社カナリスのデータによると、中国スマホ市場におけるアップル製「iPhone(アイフォーン)」のシェアは2012年以降、10%程度にすぎず、中国のOppo(オッポ、広東欧珀移動通信)やVivo(ビボ、維沃移動通信)などの新興メーカーや通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)にシェアを奪われているという。

コーヒー文化がまだ新しい中国で人気のスターバックスは、第2・四半期の既存店売上高がゼロ成長だったと発表。同社はデリバリー問題を成長鈍化の理由として挙げたが、中国大都市圏で急成長する小規模な地元ライバル企業の台頭にも直面している。

脅威を感じているのは米国ブランドに限らない。欧州の貿易団体は最近、欧州ブランドが感じている主な懸念の1つとして、中国企業との「競争激化」を挙げている。

こうしたトレンドに逆行する米国企業も存在する。米モンデリーズが販売するクッキー「オレオ」の中国市場シェアは依然高い。また、2012年から16年にかけて、より健康的とみられるジュースや水にシェアを奪われていたコカ・コーラ<KO.N>とペプシ<PEP.O>は、ともに昨年売り上げを回復した。

前出のベイン調査によると、中国ブランドは昨年、スキンケアやシャンプー、粉ミルクといった21の消費者向け製品分野において、海外ライバル企業よりも高い市場シェアを獲得。中国ブランドが昨年7.7%シェアを伸ばしたのに対し、海外勢はわずか0.4%の増加にとどまった。

「これは疑いようもないトレンドだ」。米大手消費財メーカーの上級幹部はそう語り、同社が中国で直面した最大の課題は、強い中国ライバル企業だったと付け加えた。

<現地化>

中国ブランドは、ハイテク分野を含め、海外ブランドとの競争に自信を深めている。

世界最大となる同国の自動車市場では、国内ブランドが、政府支援にも助けられて、この5年で海外ブランドに迫りつつあり、米自動車大手フォード・モーター<F.N>やゼネラル・モーターズ(GM)<GM.N>、そして米電気自動車(EV)大手のテスラ<TSLA.O>に挑んでいる。

EVを主要産業と位置付ける中国政府の推進策は、この市場に参入したい多くの新たな中国企業を引きつけている。

EVが単なる輸送手段ではなく、娯楽性とワークスペースの側面を強めており、スマートカーやEV、自動運転車へのシフトが中国ブランドを活気づかせていると、中国のEV新興企業NIO(ニーオ)の投資関連会社NIOキャピタルのパートナー、イアン・チュー氏は語る。

「現地顧客の好みと地元の事業環境を熟知していなければならない。その点において、外国企業にはとてつもない試練だと言えるだろう」とチュー氏は語る。

新エネルギーやスマートビークルといった戦略的分野もカバーする中国政府による製造業振興策「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」も国内ブランドを後押ししている。

医療機器や半導体、医薬品といった他のハイテク分野でも、中国は海外市場への依存を減らすため、国内企業の育成に努めている。

また、多くの企業が中国に製造拠点を移すことで、国内ブランドに準じたステータスを得ている。

「私たちが販売する製品の大半は国内で製造されている」と、米食品大手クラフト・ハインツの中国担当マネジング・ディレクター、ゼ・ディアス氏は、最近上海で行われた、オレオに似た中国限定ビスケット菓子の発表会でロイターに語った

ディアス氏は、貿易摩擦によるコモディティー相場の変動リスクに自社がさらされていると述べた上で、長期的には米中が問題を解決することに期待を寄せている。

「短期的にちょっとした問題はある」が、米国と中国は「競うよりも協力するだろう」と同氏は語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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