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ふるさと納税の使途に注目が集まれば-都市部ほど有利だと考える根拠 - 高岡 和佳子

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2017年9月26日に発出された総務大臣書簡を機に、ふるさと納税の使途に注目する向きがある。

その書簡において、ふるさと納税の更なる活用のために重要なことが2つ示されるとともに、地方団体の取り組みに対する支援が表明されている。重要なことの1つ目は、ふるさと納税の使途を地域の実情に応じて工夫し、ふるさと納税を活用する事業の趣旨や内容、成果を出来る限り明確化すること、そして2つ目は寄附者と継続的なつながりを持つことである。

使途に注目したふるさと納税制度の活用が進めば、過熱する返礼品競争の鎮静化が期待できる。過熱する返礼品競争が鎮静化すれば、返礼品を調達するための費用が減少するので、実質的な財源減少を抑制することにもなる。つまり、ふるさと納税で得られた資金のうち、より多くの資金を地域の課題解決のために活用できることになる。近年ふるさと納税により多くの寄附金を集めていた地方部への恩恵が増すようにも思えるが、地方部は喜んでばかりいられない。ふるさと納税の使途に注目したふるさと納税制度の活用が進めば、都市部ほど有利に働く可能性もある1

ふるさと納税に対し、都市部の住民が地方部を支援する制度といったイメージを持っている人も多い。確かに、制度創設のきっかけは、都市部に住んでいても、自らの意志で自分を育んでくれた地方部に納税できる制度があっても良いのではないか、といった問題提起であった。しかし、制度上、都市部の自治体を支援することも、自分が居住する自治体を支援することも可能なので2、都市部に多額の寄附金が集まることもありえる。そこで、ふるさと納税の使途に注目したふるさと納税制度の活用が進めば、都市部ほど有利だと考える根拠を2つ紹介したい。

1 本稿では、都市中心に加え、都心中心への通勤者が多く住む近隣市区町村も含めて都市部と、それ以外を地方部と表現する。

2 ただし、総務大臣通知において、居住者の寄附に対し返礼品を送付することは自粛するよう求められている。

根拠1:以前、ふるさと納税の受領自治体上位は都市部だった

図表1は、各年度のふるさと納税の受入額上位10自治体をその特徴に応じて色分けしたものである。桃色は災害支援の一環として寄附が集まったと考えられる自治体、灰色は政令指定都市(特別区及び政令指定都市を有する都道府県を含む)、水色は中核市(中核市を有する都道府県を含む)である。総務省が返礼品の送付について初めて言及したのは2015年1月23日なので、返礼品を目的としたふるさと納税制度の利用が進んだのは、2013年度~2014年度頃と考えられる。その前後でふるさと納税の受領自治体が様変わりしていることは一目瞭然だ。返礼品を目的としたふるさと納税の利用が進む前までは、主たるふるさと納税受領自治体は都市部に偏っていた(東北地方太平洋沖地震に係る義援金を除く)。

ふるさと納税に関する現状調査報告に基づき作成


ふるさと納税受領自治体上位が都市部に偏っていたのは偶然ではない。返礼品の恩恵も無いのに、2,000近くに及ぶ自治体の中から寄附する自治体を選ぶため、時間を割ける寄附者は極めて限定的であろう。大多数の寄附者は、寄附しないか、馴染みのある自治体に寄附すると考えられる。通常、馴染みのある自治体は、以前住んだことのある自治体か、現在住んでいる自治体なのだから、人口の多い都市部にふるさと納税受領自治体上位が集中するのは致し方ない。生まれ育った地域が地方部だからこそ、ふるさと納税の意味があるといった反論もあるだろう。しかし、高度経済成長期における地域的な労働比率の変化を背景とした、都市化率(都市人口 ÷人口)の急速な上昇は、1960年代以前に起こっている3。 現役世代(15歳~65歳)の大半は、都市部への急激な人口移動後に生まれているのだ。

馴染みのない自治体に寄附が集まる理由は、返礼品に他ならない。ふるさと納税の使途に注目が集り、結果として返礼品への注目が相対的に薄れると、馴染みのある納税者が多い都市部ほど有利になるのではないか。もちろん、馴染みのない自治体に寄附が集まった背景には、ふるさと納税関連ポータルサイトや情報誌により、好みの返礼品を送付する自治体を容易に検索・比較できる環境が整ったこともある。同様に、好みの使途を提示する自治体も容易に検索・比較できるのだから、馴染みのない自治体への寄附が継続する可能性もゼロではない。

3 土屋宰貴(2009)『わが国の「都市化率」に関する事実整理と考察―地域経済の視点から―』,日本銀行ワーキングペーパーシリーズ参照

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