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国土交通大臣がJR東海にリニアを認可してはいけない法的理由【大深度地下法:公共の利益の視点から】

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 すでに始まっている外環道のトンネル掘削工事では、上を流れる野川に圧縮空気で掘り進む空気の気泡がブクブクとあがってきています。大深度地下の掘削に使う密閉式シールドマシンは、密閉されるので地下水に影響を与えずに掘り進むことができるという説明は、野川で誤りであることを証明した形です。

洗足池の水が抜けてしまう心配も解消されません。水が抜けてから事後にJR東海に請求しても、因果関係が立証できなければ、JR東海は責任をとらず、責任逃れを許すことになるかもしれません。大深度地下利用は認めるべきではありませんが、かりに、工事をするなら大田区とJR東海とで、洗足池の自然環境を守るための協定を結ぶべきです。

大深度地下法は、今回の鉄道はじめ、道路、河川、電気通信、電機、ガス、上下水道等の公共の利益となる事業を対象に、法第16条に書かれている7つの要件すべてに該当するとき、使用の認可をすることができると規定されています。「できる」規定ですから、認可しなくても良いということです。

知らされずに、財産権が侵害され地下の私権がおよばなくなりますが事前の補償もなく、被害を被っても自分で立証しなければならない可能性。環境への影響についての事前の協定の必要性など、私含め公述で明らかになってきた大深度地下の問題を十分踏まえ、ご判断いただきたいと思います

私益(株主利益)最優先の株式会社に、公共の利益は担えるか

国鉄の民営化により、現在、JR東海は東海旅客鉄道株式会社というその名の通り、株主利益を最優先する営利目的の事業者です。

JR北海道が不採算路線を廃止している事例をとりあげるまでもなく、営利企業は、利益がでなければ廃線し撤退します。

公益より、株主利益という私益を優先するのが株式会社ということなのです。一般に、公益といった場合には、不特定多数の利益を言いますが、それが公共の利益となると、さらに厳しく、私利目的が無いことや、特定のものへの優遇の禁止や排他性の無いことなどが求められます。

大深度地下法の認可は、国土交通大臣が認可した鉄道事業者が行う鉄道事業なら、何でも認めてよいでしょうか。

鉄道事業といっても、鉄道事業すべてに公共の利益が認められるわけではないはずです。

そもそもの必要性や自然環境への影響、安全性や公金投入の可能性や要件などを検証・立証すべきではないでしょうか。

・リニア建設の過剰な設備投資で、増える事業者利益、増える国民負担

JR東海は、リニア中央新幹線を作ることで、東海道新幹線による大動脈の二重系化もたらし、東海地震など東海道新幹線の走行地域に存在する災害、リスクの備えとなる。といった必要性を説明しています。

しかし、東京―大阪間は、東海道線、東海道新幹線、航空路、東名・中央自動車高速道路、加えて空路などすでに、何重にもリスクの備えとなる交通網を備えており、リニア中央新幹線建設の必要性が、公共目的にかなうかどうかの、費用対効果の検証も不十分です。

まったくの民間の事業であれば、建設しても、整備しても、自己責任で売り上げを確保して、コストを回収し利益をだしますし、私たちは「使わない」ことも可能です。

ところが日常生活に密接にかかわり、使わなければ生活できない鉄道事業が、過剰に投資されると、私たちは、かかった費用に利益を載せる総括原価方式で、強制的にそれらの費用を切符代、場合によっては税金で支払わされることになります。

東京ー名古屋間の移動は、生活においてもビジネスにおいても、国民の日常的な交通網になっています。

しかもJR東海は、リニアを建設したら、のぞみを廃止し、こだま、ひかりを重視した輸送形態へと変革することを示唆していますから、私たちは乗りたくなくてもリニアに乗ることを余儀なくなされるかもしれません。

鉄道の老朽化に伴うリニア建設と言いながら、東海道新幹線も使うといっており、結果として、東京ー名古屋間の新幹線インフラは二重になり、私たちは、強制的に二つの鉄道網の建設・維持・管理費用を将来にわたり負担することになります。

JR 東海は、鉄道網を備えると3大都市圏が相互に一時間で結ばれ、国際競争力を向上させる好機をもたらすとしていますが、人口減少に加え、年齢構成の変化に伴い、労働人口が大幅に減少していくことが明らかなこの時期に、新たな鉄道網の建設が必要なほどの需要があるでしょうか。

羽田空港の飛行ルート変更では、空の便の需要も増えると言っているのに、です。

災害や鉄道整備の予備のラインなら、日本海周りの上越新幹線のルートを名古屋までつなげることを目指したほうが効率的です。

リニア中央新幹線建設は、私たちの経済的負担や自然環境への負荷を大きくするばかりです。

総括原価方式による鉄道網整備・社会資本整備は、かかった経費を私たちの消費や税金で負担するため、過剰になるとその分投資利益が増大します。結果として利益が増大し、営利性が高くなる私益の事業で、公共の利益ではありません。

談合体質企業に問われる公共の利益を遂行する能力

さて、

今回の大深度地下使用の認可に際しての要件、法第16条4項 は、事業者が当該事業を遂行する十分な意思と能力を有するものであること、を求めていますが、これは単に、資金を集め、トンネル工事ができるか否かだけではなく、公金を扱う事業者としての公共性の有無も問うているとみるべきです。

談合が行われたことが明らかになったJR東海は、公共の利益を遂行する「能力」は持ち合わせていなかったことになります。談合企業体質の改善無くして、公共の利益のための事業と名乗ることはできません。

・どこが違うの?「私的目的の開発事業」と「営利企業JR東海の事業」

2000年の政府の公報「時の動き」には、そもそも、大深度地下利用は、民間が私的目的のために行う開発事業は対象外にしていないと書かれています。国には、公共とそれ以外との区分けができているということです。

私は、営利企業に公共の利益は担えないと考えますが、国が作った法律ですから、私益を追求する営利企業JR東海も含め、公共の利益のための事業を担える要件を国は明らかにすべきです。資本に対する利益率、役人報酬、内部留保、いくらまで、何%まで認めるかなど目安を作るべきでしょう。

ここを国が不問にすれば、公共の利益と私益との違いがなくなり、大深度地下法の前提が大きくくずれます。少なくとも、大深度地下利用における私益との関係を明確にすべきです。

 ・建設コスト1割減、土地代不要、手間暇無しは、誰のメリット?株主でしょ?

大深度地下利用は、都市部の社会資本整備における用地取得の問題をクリアにするとともに、建設コストを抑えるメリットがあると言っています。

建設コストは1割程度抑制で来て、土地代も不要、しかも時間がかからないというのです。

これは、いったい、誰のメリットでしょうか。少なくとも、そこに住み暮らす住民のメリットではなく、事業を進めることで経済利益をえる企業、それも株主のメリットではないでしょうか。

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