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国土交通大臣がJR東海にリニアを認可してはいけない法的理由【大深度地下法:公共の利益の視点から】

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知らされていない、大深度地下法で財産権が補償されなくなること

しかもリニアの通る真上や近隣に住んでいることを、国からもJRからも知らされていないだけでなく、リニアが通るとどうなるのか、土地収用されるとはどういうことなのか、ご存じないかたも多いと思います。

たとえ、何度、JR東海が説明会や意見書を提出する機会を作ったり、公聴会が行われたとしても、当事者一人一人が、この大深度地下法で何が起きるのか知らされなければ、国民の権利は守られません。

そうした意味では、住民の要望に対し国土交通省が説明会を開催しないのも問題です。

今回、仮に、この大深度地下利用を国土交通大臣がJR東海に認めて、工事が始まったり、その後リニアが走り始めたりしたとき、仮に振動や騒音がひどくなったとします。

その場合、自分の家の下にも関わらずJRに嫌です、どいてください、補償してください、と言っても主張が認められず、我慢させられるかもしれません。

知らない間に、憲法の保障する財産権が無くなったり、著しく侵害される可能性のある、憲法違反が疑われる法律です。

 手続きの簡略化で、さっさと進むリニア中央新幹線事業

このリニアについて環境アセスメントの意見を言ったのが、4年前です。仮に、これで大深度地下利用が認可され、リニア中央新幹線のトンネル着工になれば、環境アセスメントから、たった4年で用地確保まで進んだことになります。非常にスピーディーだと思います。

この大深度地下法は、通常行っている憲法の保障する財産権の侵害にあたる重大な法手続きを省略して、工事を早めるために、土地の上下に及ぶ財産権のうちの地下の権利をなくしたり、土地収用法の補償を事前でなく事後にするなどの「当別措置」を国土交通大臣がJR東海に講じるための法律であることがわかります。

最初から、密集した大都市でスムーズにインフラ整備することを目的に作られた法律なので、対象地域は、東京、名古屋、大阪の三大都市圏です。

目的は都市部のインフラ整備ということになりますから、この3大都市圏はさらに一極集中します。

知らされていなかった地域住民

大田区下丸子や、世田谷区奥沢小学校の大深度地下法の説明会会場で、多くの住民のみなさんが、知らされていなかったことについて訴えていたのも、この事業についてのJR東海や行政の説明不足をよくあらわしています。

意見募集締め切り2日前に、JR東海が意見募集のチラシ


大深度地下法説明会終了後に、JR東海が、計画経路上のすべての住民に意見募集の締め切り直前に意見を言えることのお知らせをポスティングしたのも、住民の声に動かされたからだと思います。やり直しすべき手続きの瑕疵を明らかにしたかたちですが、少なくともJR東海も説明不足を感じたということでしょう。いずれにしても、ポスティングは、意見締め切りの2日前。

徹底して使われない「リニア」の文字

しかも、この間、JR東海が地域にお知らせするチラシには、耳慣れない中央新幹線という正式名称が使われ、一貫して「リニア」の文字がありませんでした。JR東海は、リニアとホームページでさかんに使用していますが、住民にはリニアが通ることをよほど知らせたくないと見えます。

そうやってコッソリ手続きを済ませて、さっさと工事に取り掛かかろうとする事業者の事業は、公共の利益があるんでしょうか。無いからこっそりやるのではないかと疑いたくなってしまいます。

今も家の地下をリニア中央新幹線が通る計画があることを知らずにいる住民のかたも少なくないと思います。

大深度地下使用は認可されて初めて認められるものです。国、自治体及びJR東海は、地下の土地の使用権を収容するという重大な処分で私権を国家権力が制限するわけですから、国が、政府公報で示したように計画経路周辺の住民への丁寧な周知手続を講じ、説明をやり直すべきです。あるいは、改善できないということであれば、この程度の法の運用だということで、公共の利益とは到底言えませんから、大深度地下の使用は認めるべきではありません。

それでは、周知すればそれで認めていいかといえば、そうではありません。

「地下深くは影響が無いから公法上の使用権を設定する」としても無条件に認可できるものではありません。

大深度地下利用の認可は、土地の地下という私有財産に、社会資本整備だからと事業者の使用権を設定しながら、その対価や補償は事前には行わず、工事を始め、事業が始まってから、事後的に損失が出たら、請求を待って補償するというしくみです。私も調べて知りましたが、財産権を侵害する恐ろしいしくみです。

法の趣旨や制度の内容も知らせず、この広聴会が正常に機能するでしょうか。

 事前補償が事後補償!何かあっても保障されない?大深度地下法

 仮に、振動で家屋にひびが入るなどの影響が出た場合、これを補償させるには、被害を受けたものが、JR東海に請求しなければなりません。因果関係の立証責任を個々人に負わせるなら、あまりにもその負担も大きく、そもそも、家屋調査など事前に行っていなければ、立証もできず、補償されない可能性が高く問題です。JR東海は、地域住民に対し、事後補償について伝え、地権者の家屋調査はじめとした調査の希望を聞くなど、事前に行うべきことをすべきです。

不動産取引の重要事項になっていないリニアの大深度地下利用

同じ大深度地下利用でも、外環道における大深度地下利用は、不動産取引の重要事項説明の対象だそうですが、今回のリニアの大深度地下利用は不動産取引における重要事項説明に入らないそうです。

 事前補償されませんので、土地を売ろうとしたら売れない、売れたと思ったら、リニアを理由に契約破棄された、周辺より安くしか売れなかった、などの影響が出た場合、請求して補償されるでしょうか。

 説明会でJR東海は、地価は影響が無いので「下がらない」、と下がらないという説明をしています。

地価に対する考え方が事業者と住民とで大きく違うため、土地取引における不動産価値の下落も、立証しづらいのではないかと心配です。

・国も一番心配といっている地下水の問題で、心配な洗足池の水

また、2000年の政府広報が、大深度地下利用で、最も注意しなければならないと指摘しているのが、地下水の問題です。水脈を絶ったりする心配もあるからです。

 特に、大田区東雪谷の非常口の近くには、地域一帯に降った雨を大地で受け水をたたえている洗足池があります。非常口工事の掘削によっては、帯水層を突き抜け穴をあけることになって、水が抜けてしまうのではないかと心配しています。

JR東海は、湧水が北から流れ込んでいるため南にある非常口は、洗足池の水に影響しないと説明していましたが、非常口掘削によって帯水層から水が抜ける心配についての説明は行われませんでした。

2000年の政府の広報は、トンネル掘削工事に使う密閉式シールドマシンは、地下水に影響を与えずに掘り進むことができると説明しています。しかし、地下深い地下鉄のトンネルなどに湧水が流れ込み、ポンプアップしていることは、周知の事実で、JR東海も地元には、リニアトンネル内に流れ込んだ地下水を下水に流す計画であると説明しています。密閉式シールドマシンでもトンネル外壁は密閉できないということです。

仮に、リニア工事後に洗足池の水が減ったとしても、それをJR東海に補償させるには請求し、因果関係を立証しなければなりません。

因果関係が立証されたところで、洗足池の水はもとに戻らず、水道水を入れたり、池の底をコンクリートで固めたりしなければならないかもしれないのです。

洗足池には、つみを頂点にしたカワセミ・キビタキ・オオルリ・など豊かな動植物の生態系が密接にかかわりあって成立しています。大深度に連なる非常口とトンネル工事でこの自然をこわすならどこに、公共の利益があるのでしょうか。

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