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進次郎氏らの国会改革はちょっと軽くないか?

小泉進次郎代議士を中心とする国会改革の動きが注目を集めています。自民党の若手有志が提言を発表し、超党派の議連が結成され、永田町は一大ブームに沸いています。泉健太代議士ら十年前から国会改革に取り組んできた方から、「進次郎人気にあやかりたい」だけの人まで、猫も杓子も「国会改革」を唱える様相です。

(関連記事は宮崎タケシのブログをご覧ください https://ameblo.jp/miyazaki-takeshi-gunma/ )

 一方、立憲民主党の枝野幸男代表が同党議員の参加を禁止した、公明党の井上義久幹事長が苦言を呈した、などの報道もあります。有志の勉強会に目くじらを立てるのも大人げない気がしますが、これも存在感の大きい進次郎氏を警戒してのことでしょう。

 超党派で国会改革をやろうという心意気は、素直に評価されるべき。若手中心の取り組みに水を差すのも野暮というもの。ただ、中身が「党首討論の夜間開催」「不祥事専門の調査委員会」「閣僚の国会出席の緩和」等々となると、「あれれ?」と拍子抜けしてしまいます。ちょっと、軽くないっすか?

 次代のホープがやっていることに、私のような浪人中の軽輩が口を出すのは気が引けますが、まあ初当選だけは同期。国会における汚れ仕事や下働きはもっぱら私ら雑兵の役目なので、いささか「トゲの多い門松をくぐってきた」(by田中角栄)のも事実です。その故をもって、私の考えを申し上げます。

 そもそも、「スキャンダル追及ばかりが目立つ」(予算委員会だけの話ですが)とか、「強行採決や、審議拒否や、乱闘は見苦しい」とか、「直前まで日程が決まらず、質問通告が前日深夜になるのは変だ」とかは、だれでも一度は感じる話です。「やめよう」だけなら床屋談義。本当に考えるべきは「そんな変なことが、なぜ長年続いてきたのか」です。

 国会の役割とは何でしょう?現在、国会が果たしている最大の機能は「政府提出法案を何本成立させるか」を決めることです。そして、政府提出法案を廃案にする方法はたった一つ。「時間切れ」しかありません。だから、法案を成立させたい与党と、審議未了で廃案にしたい野党が、ひたすらスケジュール闘争を繰り返すことになります。

 法案の重要度に応じて、審議時間には一定の相場感があります。与党はひたすら審議時間だけを積み上げようとします。野党は理由を見つけては審議拒否に入り、審議時間の消化を防ごうとします。野党が納得するまで審議時間を積み上げれば円満採決、そこまで時間をかけたくなければ強行採決になります。

 野党が法案に強く反対でも、採決そのものは円満ということは良くあります。加計問題が焦点になっていた国家戦略特区法改正案の審議では、私が野党側の法案担当(衆議院)でした。その時は審議拒否も強行採決もありませんでした。与党が強行採決に後ろ向きで「もう一日審議して採決を来週に延ばすなら応じる」という私たちの要求を呑んだからです。

審議拒否すれば野党の人気は下がります。強行採決して乱闘になれば、内閣や与党の支持率は下がります。互いに乱発できない中で、右目でスケジュール、左目で支持率をにらみながら、審議拒否や強行採決のタイミングをうかがう。それが、国会における与野党攻防の基本形です。

スキャンダル追及が目立つのも「不祥事を抱えていては強行採決しにくい」「不祥事が理由なら審議拒否に理解が得やすい」という背景があります。追及は法案の成立本数に直結する有効な国会戦術です。与党が「スキャンダルばかりで政策議論がない」と批判するとき、本音では「スキャンダルがなければ強行採決できるのになあ」と考えているのです。

(※注記 ただし、森友・加計問題については若干違う事情があります。これらは総理と夫人のスキャンダルなので、総理本人しか答弁できないことが多く、総理が出席する予算委員会で取り上げるほかないという特殊ケースですから)

 「法案を何本成立させるか」という国会最大の機能と深く結びついている以上、小手先の方法では解決できません。本気で変えるなら「時間切れより有効に、法案を廃案にできる仕組み」を導入する必要があります。それは議員の「造反」解禁です。与党議員が反対に回ることも、野党議員が賛成に回ることもある。そうなれば審議拒否もなくなり、法案修正も常態化します。

 大臣がつじつまの合わない答弁を続けたら、身内からの造反につながり、廃案になりかねない。そうなれば、国会審議にもかなりの緊張感が生まれます。実際、多くの欧米諸国では、一定の条件のもと造反が認められています。

 これは現在の「与党による事前審査制」を廃止することと表裏一体です。与党が事前審査してOKを出したら、与党議員は造反できません。また、与党内で法案の内容をガチガチに固めたら、野党との修正協議は困難です。事前審査をなくせば、造反も修正協議もより柔軟に行えることになります。

 しかし、現実的には相当難しいことです。進次郎氏は以前、「今のままの国会を続けても、与野党どちらにも得はない」と言っていましたが、そんなことはありません。いまの仕組みは、与党にとって圧倒的に得なのです。なぜなら、「野党議員を政策決定に一切絡ませない」ことができるからです。

 野党には「法案を廃案にする」力はあっても「法案の内容を変える」力はありません。反対に与党議員は、政府の役職にいなくても事前審査制を通じて政策決定に介入できます。そのため、自分たちの都合で政策を動かしたい業界団体などが手っ取り早く頼るのは、与党議員になります。大臣や官僚はガードが堅いですから。事前審査制こそ、業界から与党に集まる「票とカネ」の源泉です。

 「造反あり、法案修正あり」となれば、与党ほどではないにせよ、野党議員にも政策に対する一定の影響力が生じます。団体側も与党議員にばかり頼る必要はなくなります。「そんなことになるくらいなら、スキャンダル追及や審議拒否をやってくれた方がよっぽどマシだ!」と考える先生方も多いのではないでしょうか?

 いまの国会があまり「美しくない」のは事実にせよ、「政府提出法案を何本成立させるかを決める」という国会の機能は低下させられません。夜間党首討論だのスキャンダル調査委員会だのは小手先の話で、本丸は「事前審査制の廃止」と、それによる「造反の解禁」「法案修正の常態化」です。

 なお、最後に二つ指摘をしておきします。一つ目は過去の国会改革案について。今回の改革の方向性は、馬淵澄夫氏や河野太郎氏らによる08年の提言や、当時の与党・民主党による11年の提案と似通っています。しかし、08年や11年は「ねじれ国会」の中で国政の停滞をどう防ぐかがテーマでした。「安倍一強」による国会の形骸化が問題になっている現在とは、正反対の状況です。なので、あまり参考にしない方が良いのでは。

 二点目は、事前審査制にメスを入れた過去の事例について。09年に鳩山政権が発足した際、当時の小沢一郎民主党幹事長は「政策決定の一元化」に踏み切りました。与党による事前審査を廃止し、部会にあたる政策会議を政府主催にする画期的な取り組みでした。が、造反は容認しなかったので、ただ政府外議員の発言力をなくすだけに終わりました。その不満の高まりが、鳩山政権崩壊の一因となりました。

以上、ご参考までに。

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