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今、あらためて、インターネットの自由と匿名性について思うこと

 海の向こうではSOPAやPIPAへの抗議のためにWikipediaがブラックアウトをしたり、Twitterが各国の法律に従って検閲を行うこともあり得るという方針を発表し、その方針に抗議するために「#TwitterBlackout」というハッシュタグを使って、逆にユーザーがブラックアウトするという行動に出たり、インターネットの自由は今すこし曲がり角に来ているように思います。

 今回のTwitter社の発表については、今、全世界でサービスを提供しようとするならば仕方がないと思う部分もあって、メリット、デメリットを最悪のケースまで考えてどちらをとるかという問題なのだろうと思います。アメリカの有識者の論議で言えば、どちらかと言えば、「Twitter社は現在の残念な実態を教えてくれているのだと思う」と述べ、Twitter社の発表に一定の理解を示した電子フロンティア財団のシンディー・コーン氏の意見に近いです。(参照:Twitter「検閲」は批判されるべきか - WIRED.jp

 これにはアラブの春で果たした役割も関係しているのでしょう。また、スマートフォンや低価格のネットブックなどの登場で低価格なインターネットデバイスが多くの人々に行き渡った、あるいは、今後行き渡るだろうということも関係あるのだろうと思います。そうして見た場合、とりわけTwitterは、統治する側から見ると、民衆を支援する非常に力強いツールとして見えることも関係しているのだろうと思います。

 為政者にとっては、もしかすると実名性のFacebookよりも、ある一定レベルで匿名性を担保するTwitterにより脅威を感じているのかもしれないな。そんなことを、昨晩、Twitterでつぶやきながら考えたりしました。

 大雑把な言い方になりますが、欧米や日本などの民主主義社会の成熟期に入っている国にいると、とかく匿名であることのデメリットが喧伝されがちですが、でも、民主主義はある意味で匿名性の獲得が命題だったりするんじゃないかと思います。選挙制度がまさにそうです。

 また、身近な例では、たとえばラジオ番組のお便り紹介。多くのお便りはペンネームですよね。あのラジオ番組の自由さは、よほどのことがない限り公には実名が公表されることがないということが担保しています。もし、ラジオ番組で「お便りをお待ちしています。その場合は本名でお願いします」とアナウンスしたら、匿名性を利用して悪いことをしようだなんて思っていなくても、ほとんどの人がお便りを送らないのではないでしょうか。

 いやいや、インターネットにおいては、本質的には匿名性はないんだ、という意見もあるでしょう。でも、それはラジオ番組でも同じことです。単に、リスナーがラジオ局を信頼しているだけのことです。また、完全匿名だけが匿名性ではなく、匿名性にもグラデーションがあると思うんですね。IPを調べれば特定できると言っても、特定するという一手間があります。じゃまくさいというのは、それだけで力です。それに、普通につぶやいていれば、少なくとも実名はわからないという状態をずっと続けることができますし。

 実名性のFacebookは自由を求める運動家にとっては力強いツールになりますが、これは一般の人にとっては、じつは足枷になるでしょう。その運動を支持し、拡散させていくためには、むしろある一定限度で匿名性が維持できるTwitterのほうが都合がよいのではないでしょうか。それに、長文を必要としない敷居の低さもあるし、拡散力は段違いですし。このTwitterの持つ、いろんな意味で手軽であるという性格は、為政者にとっては相当な脅威なのでしょう。もしかすると、現実に自国にある政治団体やFacebookやブログで行われる主張よりも、Twitterというソーシャルメディア自体に対する潜在的な恐怖は、ずっと上なのかもしれません。

 また、これは余談ではありますが、このことを逆に考えると、民主主義の成立要件のひとつである匿名性の獲得がある程度のレベルで実現されている成熟社会では、セミクローズドのFacebookの中だけでなく、オープンな公空間としてのインターネットにおいて、実名でいかにものが言えるかが自由のひとつの指標になるという段階に入っているのかもしれません。もちろん、それだけではないとは思うし、欧米的な市民とか個人とか、その考え方がはたして普遍であるかということも検証もしなければならないでしょうけど。

 そんな視点で、日本という国でインターネットを利用し、そこで発信する、一インターネットユーザーとして、海の向こうの動向を眺めています。

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