記事

TVニュースだけではなくてオンラインニュースも「NHK」が支配していくのか

2/2

公共放送の信頼性を武器にTVニュースの視聴率で圧勝し、オンラインでも優位に

 TVニュースでNHKが圧勝していることは疑いの余地がない。ビデオリサーチ社の視聴率(6月11日(月)〜6月17日(日)でも、関東地区の報道部門の視聴率ランキングのトップ10は、テレビ朝日の報道ステーションを除いてすべてがNHKブランドであった。NHKニュースおはよう日本・首都圏やNHKニュース7が常連で、約11%〜約15%の世帯視聴率を得ている。

 伝統メディアでは、NHK以外の民放ブランドもプリントの新聞ブランドよりも多くの人に接触されている。ビデオリサーチのデータを見ても、コメント中心の民放のニュース番組の人気は高く、教育・教養・実用【関東地区】部門で、TBSのサンデーモーニング、日本テレビの真相報道バンキシャ!、テレビ朝日の羽鳥慎一モーニングショーといった番組は10%台の視聴率を得ていたりする。バラエティーなども含む全番組のランキング(例えば「放送研究と調査」)でもニュース番組が数多く上位に食い込んでおり、TVニュースの人気は根強い。

 TVニュースが人気が高いのは、なんやかんや言われながらも、信頼されているということか。ロイターの調査でニュースブランドの信頼度ランキングを国別に発表していたが、日本で最も信頼度の高いニュースブランドはNHKとなっており、テレビ局ブランドも上位にランクされている。新聞系は日経と地方紙は高かったが、全国版一般紙の新聞ブランド、特にリベラル系はあまり信頼されていない。

 NHKは2~3年前までは、前会長の「政府が右というを左といえぬ」発言もあって、信頼性が揺らいだ時期が続いた。だが最近は、優れたドキュメンタリーを連発し、NHKコンテンツの信頼感がぐんと高まっている。図3と図4のように、オーディエンスのNHKブランドに接する頻度が上昇しているのもそのせいであろう。

 予算や人材が潤沢な公共放送だからできる技かもしれない。ヨーロッパの主要国でも、英国のBBCのように公共放送のニュースが大きな役割を果たしてきた。英、独、イタリア、オランダ、スウェーデンなどでは、伝統メディアで人気トップのニュースブランドは、公共放送ブランドとなっている。でも公共のメディアブランドが、伝統メディアだけではなくて新しいオンラインメディアまでも支配する国となると少ない。自由なオンラインメディアでは、公共ブランドが劣勢に立たされれても不思議でない。たとえば ドイツでは、伝統メディアは公共のARDがトップであるが、オンラインメディアでは雑誌ブランドのSpiegelなどが優位に展開している。

 でも英国のBBCは、伝統メディアだけではなくてオンラインメディアでも圧倒的に優位に立っている。視聴料を払っている国民から信頼を得るために、絶えず政権から距離を置き独立性を堅持しようと努めている。同じように日本のNHKも、今年のロイターの調査結果によると、伝統メディア(TVニュース)だけではなくてオンラインメディアも支配する勢いを見せている。政治報道に偏りが見られるとの批判もあるが、日本人は権威を信頼する傾向が強いとロイターに言われるように、オンラインニュースもNHKに支配されていくのか。 

 NHKとしても、 若者のTV離れ伴い、若者のTVニュース離れ対策も打たなければならない。NHKの目玉のNHKニュース7の視聴率(2017年)は、50代男性が8%、50代男性が14%、70歳以上男性が33%と高齢者に支持されているものの、10代~30代男性の視聴率が1%〜2%に落ち込んでいる。NHKも若年層にはオンラインで攻めるほかはないのだ。

オンラインニュース利用がTVニュース利用を下回る

 モバイル化、ソーシャル化が加速するに伴いオンラインニュース利用が増え続け、一方で、TV離れに伴いTVニュース利用が減っている。グローバルに共通のトレンドと思っていたのだが・・・。ところが国によっては、必ずしもそうではなさそう。 

 どうも日本ではTVニュースの利用が相対的に多そうだ。ロイターの調査でも、先週接したニュースのソースがどのメディアであったかを問うたところ、65%の回答者がTVメディアと答え、59%のオンラインメディアを上回った(複数回答)。

 図5にここ数年の推移を示しているが、目に付くのがオンラインでニュースに接する利用者比率が2013年の85%から今年の59%と下降線を辿っていることだ。この背景については、「日本人のニュースメディア接触、先進国の中で際立つ特異性、ロイター調査が浮き彫りに」で述べたが、スマホ・ソーシャル全盛時代を迎える前まで、日本のオンラインメディアはパソコン主体のヤフーポータルが完全制覇していたことが響いている。スマホ化、ソーシャル化が加速するに伴い、パソコン中心のオンラインメディアの利用比率が下がっていった(利用時間は必ずしも減っていない)。

[画像をブログで見る]

図5 日本人回答者が先週、どのメディアを介してニュース・ソースに接したか?(複数回答)。TVメディアが65%と最も多く、オンラインメディアを上回った。

 日本以外の大半の国では、オンラインでニュースソースに接する人の割合が約80%〜90%の高レベルに維持させている。ここ数年、ソーシャルメディアを介してニュースソースに接する人が急増しているからだ。ソーシャルメディアを飛躍台にしてニュースパブリッシャーが育っていく環境が、海外ではかなり整備されてきたといえる。

 一方で日本は、ソーシャルメディアを介してニュースソースに接する人の割合が21%と、今年のロイター調査の対象国37か国の中でもずば抜けて低かった。その結果としてオンラインでニュースソースに接する人も最も低い59%となっている。低いのに、オンラインによるニュースソースの接し方が特異で、アグリゲーターの利用が極端に多いことだ。Yahoo! Newsやスマートニュース、グノシーなどのアグリゲーターを介してニュースソースに接している人が40%と、今年もロイターの調査でトップを独走している。海外のユーザーのようにコミュニティーを通してニュースに接するよりも、お勧めのニュースを受動的に接するほうを好むということか。

 この日本のニュースアグリゲーターの特徴はユーザーの高齢化が顕著なことだ。Yahoo! Newsは言うまでもなく、スマートニュースは50代以上が5割以上を占め(20代以下は11.9%)、グノシーのニュースパスは50代以上が45%(20代以下は9%)となっている。選ばれるニュースも、本来の報道モノよりも、エンターテイメント性の高い情報ものが増えている。アグリゲーターでニュースっぽいコンテンツを楽しむ一方で、真っ当なニュースを受動的だがNHKブランドで抑えておく。高齢者が多数派の日本では、オンラインでもNHKに頼っていくという流れになるのか。

◇参考Reuters Institute Digital News Report 2018(Reuters Institute)・テレビ・ラジオの視聴の現況〜2017年6月全国個人視聴率調査から〜、放送研究と調査、Sep.2017

あわせて読みたい

「NHK」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    時代遅れの感が否めないほど低画質なサブチャンネル放送 NHKの五輪中継に苦言

    諌山裕

    07月31日 15:52

  2. 2

    どうして日本から敢えて海外移住するのか?

    内藤忍

    07月31日 11:03

  3. 3

    感染者4000人超に マスコミは五輪報道からコロナによる医療崩壊報道に切り替えるべき

    早川忠孝

    07月31日 17:57

  4. 4

    緊急事態宣言下で爆発している今の状況での延長なんて反感しか産まない ただ政府だけに責任押しつけるな 

    中村ゆきつぐ

    07月31日 08:58

  5. 5

    無法地帯になってきた空港と選手村 感染爆発が止まらないのも道理

    田中龍作

    07月31日 08:43

  6. 6

    歌舞伎×ジャズピアノ、タップダンスにイマジン…五輪開会式はなぜ変化球で攻めたのか

    毒蝮三太夫

    07月31日 08:05

  7. 7

    ゆうちょ銀行 東証の新区分プライム市場に不合格 上場株式は量よりも質の時代へ

    川北英隆

    07月31日 09:49

  8. 8

    「"おじさん構文"でも大丈夫」部下とのLINEが苦手な人がやるべき"シンプルな解決策"

    PRESIDENT Online

    07月31日 09:40

  9. 9

    全国の新規感染者が1万2000人超、4日連続で過去最多

    ABEMA TIMES

    07月31日 20:13

  10. 10

    「彼らを誇りに思う」アイリスオーヤマ会長が感激した"クビ覚悟"という社員の行動

    PRESIDENT Online

    07月31日 14:54

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。