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「豚になっても生き抜け」 西野 朗の22年 (ワールドカップ グループリーグ 第三戦 日本0-1ポーランド)

ワールドカップ グループリーグ 第三戦
日本0-1ポーランド

グループリーグの最終戦、これで1勝1敗1分だが、同時に試合をしていたセネガル-コロンビア戦が74分になって0-1で、コロンビアがリードした。

この時点で、勝ち点はコロンビアがグループリーグの勝ちぬけ、日本はセネガルと勝ち点と得失点差では並ぶが、もうひとつのグループリーグの勝ち抜けの条件である「フェアプレイポイント」(反則数によって与えられるポイント。今大会より導入)ではリードしていた。紙一重もいいところの僅差だが、勝ち抜けは見えていた。

ここで日本は三枚目のカードを切って長谷部投入。徹底的にボール回しに入った。ポーランドもその意図を察して攻めてこない。このまま行ってセネガルがもう一点入れなければ、日本は勝ち抜けるし、ポーランドは敗退が決まっているとしてもワールドカップでの1勝を母国にもちかえれる。そして延々と10分以上ボール回しを続けた。大ブーイングの中を。

予選突破に喜び勇んで、しばらく祝杯をあげてから、インターネットを見てみると、この試合を批難する人がいる。そうだろう、確かにこの試合の最後の10分超のボール回しは世界中で日本だけに利益がある時間稼ぎである。

しかし私は最後の10分、このボールがゆっくりと点々と転がされていく光景を、セネガル戦の戦況を横目に同時に見ながら、ひたすら嬉しくてしかたがなかった。

ついに日本もこんな「リアリズム」をやれるようになったか、と。

2002年の日韓ワールドカップ、イタリア対メキシコ戦をまざまざと思いだす。この試合、同点になった後半途中から、両チームともに延々とボール回しを始めた。どちらも攻めてこない。両チーム、引き分けならばグループリーグ突破が確定するからだ。それを見ながら、サッカー強豪国とはこういう「リアリズム」を臆面もなくスタジアムの満員の観客と全世界のサッカーファンの目の前で行うのかと感嘆した。そして、それから16年、日本がこれをやることになった。いや、やれるようになった。

そして、西野監督のギャンブルはすべて当たった。

西野監督はグループリーグ突破の可能性と次戦のために、メンバーを6人温存した。ここがまずは大きなギャンブルである。二手三手先を読んだものだ。

さらに、0-1になって、コロンビア戦の戦況リアルタイムでベンチ裏で見ているスタッフから戦況報告聞きながら、勝ち点・イエローカードを計算して、最後に三枚目の交代に守備的な長谷部投入というバクチ打った。これが最大のギャンブル。セネガルが点を取ればそれでおしまいなわけである。

そしてそのギャンブルに完全勝利した。完璧である。

指導者としての西野 朗を長いこと見てきた。今から22年前、1996年アトランタオリンピック。ブラジルに勝つという大金星を守備的な戦い方で成し遂げたあと、当時の主力メンバーの中田英寿が守備的な方針に逆らおうとすると、西野は中田を次戦で外した。結果としてこの時の日本代表は次戦を負ける。それから長いJリーグの監督となり、その勝利数は日本人監督として歴代1位。

今回のハリルホジッチ解任から、西野が監督となる経緯については様々な意見がある。しかし、次に日本人が代表監督になるとしたら西野というのは規定路線だったと思う。そして中田を外して敗北したあの時から22年、西野は再びギャンブルに出た。そして今度はそのギャンブルに負けることはなかった。これだけ完璧な勝負打てたなら、私はもう称賛するしかない。

はじめてワールドカップに出て、なすすべもなく予選敗退してから20年。こんな光景を見ることが出来るというのは感慨無量で、弱小国の「豚になっても生き抜け」というしたたかさと強さを、日本代表に見た。これを批判するのはたやすいが、この試合によってサッカーにおけるリアリズムを学んだならば、これは大きな進歩だろう。そして私はこれを支持する。

このあとの決勝トーナメントが楽しみで仕方ない。

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