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流れゆく時と一瞬の歓喜と。

始まってすぐの頃は、一試合一試合をダイジェストでじっくり振り返れるくらいの余裕があるのに、2カード目に入ったあたりから急に試合消化のペースが速くなったような気がして、あっという間にグループリーグ最後のカードを迎えてしまう、というのが、ワールドカップあるある、である。

そして今回も例外ではなく、日曜日の夜に歓喜に湧いたのもつかの間、いつの間にか既に5つのグループが最後のカードを終えた。

今は、過去2大会で繰り返されたのと同じ悲劇を、まさか堅実一途なドイツが味わうのか(しかも、よりによって韓国に2点差も付けられて負ける、という展開で・・・)、という衝撃からさめきれていない状況だったりするのだが、これもまた勝負の世界。

そして、明日にはビッグサプライズから始まったグループHの戦いにも一つの区切りがつく、という状況にある。

なので、もう古新聞的ネタになりつつあるが、日曜日のセネガル戦をちょっとだけ振り返ってみることにしたい。

日本代表にとってのセネガル戦は、残された2対2、という結果だけではなく、内容的にも見せ場の多い良い試合だったと思う。

ひとたび攻撃に転じれば、空いたスペースをきれいにボールが抜けていき、敵陣の危険なエリアで度々チャンスを演出した。

気合いだけが空回りして、選手たちの足が地に付いていなかったように見えた4年前に比べると、今大会のフィールド上の選手たちの落ち着きぶり、場馴れ感は半端なく、さすが歴戦のベテランたちを揃えただけはある、というのが素直な感想。そして、少なくともこの日の試合では、そんな円熟味と両刃の関係にある気だるさをカメラ越しに感じることもほとんどなかった。

フィールドを縦横無尽に走り回る長友選手の運動量は、8年前との比較でも決して引けを取らないレベルだったし、潰れ役の岡崎、美味しいところを持っていく、という本田圭佑選手の持ち味も、2度目の同点に追いついたシーンでは存分に発揮された。

乾貴士選手と香川選手が織りなす美しいコンビネーションも、彼らが揃って日本にいた10年一昔前のそれと何ら変わりはないレベルのように見えたし、蹴る者が成熟した分、行きかうボールもより輝いて見えた。

個人的には、今大会、日本で一番輝いているのは、このチームでは若い方に入る柴崎岳選手だと思っているし、DFでは昌子源選手の安定感と思い切りの良さが、日本代表の攻撃力を底上げしているのは間違いない。

だから、決して今の日本代表が"ベテランだけ”のチームだとは決して思わないのだけれど、2度リードを許してもなお、即座にチームのバランスを立て直して、見事に取り返してみせたのは、やはり高い経験値の賜物。

特に決定機を散々外した時間帯の直後に、ムサ・ワゲ選手に電光石火のゴールを叩きこまれたシーンなどは、それまでならズルズルと言っても不思議ではないところだったのだが、その直後の選手交代から6分で見事に巻き返して追いついたのだから、そこにはやっぱり“違い”があるし、“アトランタの呪縛”からチームを解き放った、という点でも、本田選手のあのゴールは、日本サッカー史に残る稀代のベストゴールだったと自分は思っている*1ると思うほど自分は楽観的な人間ではない。

いかにこれまで結果を出せていないチームだからといって、コロンビアとの試合の前半のように、死ぬ気の迫力を前面に出して、束になってかかってこられてしまうと、体格が一回り違う日本代表陣が対応することは決して容易ではないと思う。

ただ、多くの選手たちにとって、最後の挑戦となるこの大会で、1分1秒でも“らしい”試合ぶりを見せてくれることを、自分は信じてやまないのである・・・。


*1:そしてわずか3本の枠内シュートのうち2点をスコアに結びつけた、というのも、これまで散々決定力不足に泣かされてきた日本にはない、珍しいパターンだったように思う。

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